30.スキルのある世界
すみません、遅れました。
「スキルを身につけるのってそんなに難しいの?」
「それはそうよ。
だってスキルは生まれながらに持っている才能みたいなものでしょ。
てことはあるスキルを持っていないってことは、その人にはその才能がないってこと。
それを後天的に身につけようとするんだから、相応の努力が必要になるの」
そうだったのか。
女神様が自力でスキルを身につけることができるって言っていたから、何となく簡単にできると思っていたけど、そううまくはいかないか。
「なにか攻撃できるスキルを身につけることができれば、俺のランクも上がるし、そうすればパーティーのランクも上がりやすくなるかと思ったんだけど。
スキルが無くてもコボルトくらいなら一太刀で倒せるんだし、剣を攻撃手段としてギルドに認めてもらえないかな」
「どうかしら。
たぶんだけど、コボルトを一撃で倒せたのはその氷の剣だからじゃない?」
「どういうこと?」
「その氷の剣はケントの水魔法でできているのよね?
おそらくケントがその氷の剣で攻撃するとき、水魔法のスキル分の補正がかかっていると思うの。
試しに次は私の剣で闘ってみたら」
そう言ってミランダは自分の剣を手渡してきた。
「使ってもいいの?
大切に使っているみたいだけど」
「構わないわ。
ずっと使っているから多少の愛着はあるけど、それでも武器は武器だしね。
ダンジョンでくだらない執着をしていると、いざというときに自分の身を危険にさらしかねないわ。
それに嫌いな奴に貸すならともかく、ケントに貸すのなら何の問題もないわ」
(確かに、執着しすぎてその武器がないと立ち行かなくなるようじゃダメだろうな。
それにしてもミランダの中で俺はモノをシェアするくらいは問題のないポジションにいるらしい。
ミランダの汗が浸み込んでいるのであろう柄に興味津々なのは黙っておこう)
ミランダから剣を受け取るとコボルトを探しに歩き始めた。
◇
コボルトはすぐに見つかった。
鑑定してみると先ほどのコボルトとステータス的に差異はない。
ミランダから借りた剣を構えてコボルトと向かい合う。
先の戦闘をトレースするように飛びかかってきたコボルトをかわし、背中に斬りかかった。
「うぉ」
先ほどは感じなかった抵抗感に思わず声が出た。
氷の剣で切りつけたときはコボルトの背中を切り裂くことができたが、同じように攻撃したはずなのに今回は浅い傷をつけただけだった。
やはりここは異世界だ。
魔法やスキルなんてものがあるのだから、以前の物理的な感覚と折り合いをつけておかないと痛い目に遭うかもしれない。
一端コボルトから距離をとり、再び向かい合う。
そうして切りつけること数分。
体に無数の切り傷を負ったコボルトは魔石を残して霧散した。
「ふぅ~。
確かにコボルト1体にこれだけ時間がかかるようじゃ複数の魔物に囲まれたりしたら大変だね。
護身用としてならともかく、攻撃手段とは認めてもらえないかもしれないね」
「スキルもなしに倒しちゃうんだからケントは十分すごいんだけどね」
剣を受け取りながら苦笑するミランダ。
「仕方ないか。
急いで身につけなきゃいけないわけじゃないし、何かいい案が思い浮かぶまでは表向きはミランダのサポートに徹するよ」
「そうね。
普段ダンジョンで魔物と戦うときは人目を避ければいいわけだし。
私も何かいい案がないか考えてみるわ」
そうして帰る時間まで2人で魔物を狩って、帰路についた。
◇
「やっぱり、パーティーを組むと効率がいいわね」
「そうなの?」
「1人だと戦闘中も他の魔物を常に警戒しなきゃいけないし、休憩中だって気を緩めることができないわ。
今回はケントがいてくれたから、交替で警戒することができたからその分気も休まったし、普段は避けるような集団を形成した魔物とだって戦うことができた。
それは、まあ、ケントが強いからいざって状況になっても何とかなるっていう打算もあったけど」
そう言って夕食を口へ運ぶミランダ。
2人はダンジョンを出た後、ギルドで魔石を換金して、そのまま宿に戻って夕食を摂っていた。
当たり前のように誰かとご飯を食べるって素晴らしい。
「パーティーに貢献できたのならよかったよ。
この調子で頑張っていこう」
「そうね。
ねぇ、明日少しいいかしら。
泊りがけで潜るために必要なものを買い揃えに行きたいんだけど」
「もちろんいいよ。
といってもよくわからないから、荷物持ちくらいにしかならないかもだけど」
「2人で使うものですもの。
ケントの意見も聞いておきたいわ。
それじゃあ明日はダンジョンに潜るのはお休みにして、買い物に行くってことでいいかしら」
「わかった」
(これはデートというやつなのか!?
いや、まあ、違うんだけどね。
それでも女の子と2人でお出かけとかテンション上がるね~)
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