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27.2人の保護者

「かっこよかったよ、ミランダ!」


「ありがとう。

 もっと強いモンスターを倒して格好つけたかったんだけどね」


 はにかみながらもどこか物足りなさそうなミランダ。


 確かにDランクのミランダからすれば1階層のゴブリン1匹の相手など片手間で済むことなのだろう。


「それでも剣を構えるミランダの姿は纏っている空気が違うっていうか、凛々しかったよ」


「もうわかったわよ、ありがとう!」


 褒められて恥ずかしくなったのか視線を逸らすミランダ。


 はい、かわいい。


「そうだミランダ、さっきのゴブリンのことで少し気になることがあるんだけど」


「気になること?」


「さっきミランダが戦う前にゴブリンのことを鑑定してみたんだ。

 そうしたら【種族】のところがゴブリン(影)になっていたんだ。

 森で会ったゴブリンを鑑定したときはただのゴブリンとだけしか出なくて、(影)なんてなかったんだけど、何が違うかわかる?」


「…まずあなたが鑑定を使えることについて聞いてもいいかしら」


「ああ、言ってなかったっけ。

 俺鑑定のスキルも持っているんだよ。

 あっ、心配しなくてもいいよ。

 基本的に人に対して鑑定は使わないようにしているから。

 もちろんミランダにも使ったことはないよ」


 ステータス情報はいわばその人そのものである。


 その人はどんなことができて、どんなことが苦手か。


 あとどれくらいダメージを与えれば命を落とすのか。


 他人に自分の情報を見られて気分のいい人はいないだろう。


 ケントは鑑定スキルのことを隠してはいるが、もし鑑定したことがその人にばれたら決して良くは思われないだろう。


 それ以前に他人の個人情報を盗み見る罪悪感に蚤の心臓では耐えられない。


 ちなみに魔物や盗賊に鑑定を使うことにためらいはない。


 命の駆け引きをするかもしれないのだ、プライバシーなど知ったことではない。


「別にケントにならステータスを見られてもいいけど…。

 まあいいわ。

 それでゴブリンの種族の項目に(影)の文字が付いていたんだっけ。

 そんな話は聞いたことないわね。

 私自身、森のゴブリンもダンジョンのゴブリンも同じものだと思っていたし」


 なにやら童貞が勘違いしそうなことを呟いていた気がしたが気にしない。


「そっか~。

 まあ、知らなくても今まで問題なかったんだから、対した意味はないかもね。

 精々亜種とかそのくらいかな」


 現段階ではいかんせんサンプルが少なすぎる。


 これからはダンジョンにも頻繁に来るだろうし、追々考えればいいだろう。


「また気になることがあったら聞くことにするよ。

 それじゃあこのまま1階層をぶらぶらして、今日は早めに切り上げようか。

 元々お試しの予定だったし、ライオスさんがミランダの心配をしているだろうしね」


「そうね、オリヴィアさんもケントのこと気遣っているみたいだし」


 何という切り返し!


 …オリヴィアさんや、もう少し俺のこと信じてもいいと思うよ。


 攻撃できることを隠している俺が悪いんだけど。


 その後2人で交互に魔物を狩りながら1階層を徘徊した。


 隠密を未使用の状態で魔法を使って魔物を倒したのだが、ケントならそんな攻撃もできるのだろうと思われている節があり、ミランダにはあまり驚いてもらえなかった。


 格好つけようと思って氷の剣を作って、戦ったのに。


 やはり剣術スキルとかがないとだめなのか。


 ◇


 ケントたちは早めに切り上げ、帰路についた。


 ダンジョンを出たことを伝えに行ったとき、ライオスさんに睨まれはしたがお話し(物理)はされなかった。


 ひとまず様子見をしてくれるのだろう。


 強面なのに過保護で困る。


 冒険者ギルドに行くとオリヴィアさんに迎えられ、頻りに怪我はないか聞かれた。


 いつから彼女は俺の保護者になったのだろう。


 どうせ保護者になるなら、母親として授乳してくれたらうれしい。


 もちろん出なくても何の問題もない。


 その小さな膨らみからいつか命の水がにじみ出るのかと思うと、それだけでご飯3杯はいける。


 隣のミランダの視線が冷たい気がしたがきっと気のせいだろう。


 気のせいだと思いたい。


読んでいただきありがとうございます。

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