25.ライオス
ランドンから北へ30分ほど歩いたところに、レリエスト王国に3つ存在するダンジョンの内の1つがある。
ダンジョンとは何なのか。
実のところ詳しいことは解明されていない。
ダンジョン内は濃い魔力で満たされており、その濃度は地下への階層構造をとるダンジョンの深部に行けば行くほど高くなっている。
濃い魔力が漂う場所ほどより強力な魔物が生まれる。
したがって地下へ潜るほど魔物は強力になっていくことになる。
下層の魔物ともなると並の冒険者では太刀打ちできない。
そのため数あるダンジョンの中で最下層が何階であるのか判明しているものはない。
そんなダンジョンを冒険者たちが訪れる理由は何か。
もちろん純粋な探求心で潜る者もいるであろうが、多くの者は魔物が落とす魔石、そしてダンジョン内で見つかるアイテムが目当てであろう。
ダンジョンを探索していると時々宝箱を見つけることがある。
その中には武具やポーションなどが入っていることがあるのだ。
その上、ダンジョンの下層で見つかるものほど優れた品であることが多い。
そのため冒険者たちは命の危険を冒してでも下層へ進もうとするのだ。
なぜ、ダンジョンにダンジョン内の魔物を倒すための道具が生みだされるのか。
一説ではより深部に冒険者たちを誘い込み、強力な魔物に殺させることで冒険者を捕食しているのではないかというものがある。
事実、ダンジョン内で冒険者が死んだとき、少しすると死体がダンジョンの地面にのみ込まれていくのだ。
ダンジョンも魔物の一種で経験値とするために冒険者を狩っているという考えもあるが、事実を知る者はいない。
◇
ダンジョンの入口には小屋があり、そこでは冒険者ギルドの職員がダンジョンへ潜る冒険者の名前を記録していた。
これは誰がダンジョンの中にいるかを把握することで、ダンジョン内で身動きが取れなくなった冒険者たちを救助する際などに役立っている。
「ミランダ、今日は1人じゃないのか」
ダンジョンへ入ることを伝えるために小屋へ入ると、冒険者ギルドの職員らしき男がミランダに声をかけてきた。
歳は40代後半くらいだろうか。
ケントより頭1つ大きい背丈にがっしりとした体躯、灯りの光を反射するスキンヘッドにサングラスをかけ、その下には鋭い眼光が覗いている。
有り体に言って「や」の付く家業のヒトにしか見えない。
ぶっちゃけ怖い。
「ええ、私彼とパーティーを組むことにしたの」
「初めまして、ケントといいます」
「俺はライオスだ。
…おいミランダ、こんななよなよした奴とパーティーを組んで大丈夫か。
まさかナンパされて引っかかったんじゃないだろうな。
もしそうなら止めておけ。
ダンジョンに足手まといを連れて行ってもろくなことにならないぞ。
なんなら俺からこいつに『お話し』してやってもいいぞ」
「失礼ね、そんなんじゃないわよ。
ケントとはオリヴィアさんの紹介でパーティーを組むことになったの。
ケントは水魔法と回復魔法が使えるから、サポート役としてパーティーを組むことになっているわ」
「オリヴィアの紹介なら人柄に問題はないだろうが…。
おいケント、ミランダの足を引っ張るようなことだけはするんじゃないぞ」
「はい、頑張ります」
(ライオスのおっさんミランダに対して過保護すぎだろ。
ミランダが怪我してダンジョンから出てきた日には俺が殺されかねないな。
さっきの『お話し』って絶対口での交渉じゃないよね、物理的にだよね)
ライオスからのプレッシャーを感じながらもケントたちは小屋から出てダンジョンへ向かう。
「ケント、さっきのことなんだけど、私はケントのことなよなよしているとか思ってないわよ」
「ああ、別に気にしてないよ。
ライオスさんに比べればどう見たって弱そうだし」
「私はあなたが強くて優しい人だってこと知っているからね」
「え、あぁ、うん、ありがとう」
面と向かって美人に褒められて平静でいられるほど、ケントの童貞力は低くない。
たとえお世辞であったとしても、心が乱れてしまう。
じっと見つめてくるミランダの顔を直視できなくなって、視線を逸らす。
その視線の先では大きく口を開けたダンジョンの入口が、ケントたちを向かい入れようとしていた。
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