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21.目立ちたくない

 ランドンの近郊には魔物の巣くう場所が2つある。


 1つはランドンの北に存在する国内に3つあるダンジョンのうちの1つである。


 そしてもう1つが南にある森である。


 魔物を狩り、魔石を手に入れる冒険者たちはこのどちらかに行くことが多いわけだが、大半の冒険者はダンジョンに行くことを好む。


 ダンジョンは階層構造になっており、それぞれの階層によって出現する魔物も決まっている。


 そのため安全な探索ルートや次の階層への最短ルートなどが確立されている。


 一方森のほうは奥地に行くほど強大な魔物が生息しているといわれている。


 しかし、浅い場所へ魔物が出てくることもあれば、普段は見かけないような魔物に遭遇することもある。


 野営するにも警戒を怠るわけにもいかず、また天候の影響を受けることもある。


 ダンジョンに比べ森では不測の事態が起きやすいのだ。


 冒険者たちもむやみに自分の命を危険にさらすようなことはしないため、その多くが不測の事態の起きにくいダンジョンへ行くのである。


 そのため、森へ来るのは浅い場所で薬草を採取するビギナーか、森にしかいない魔物の魔石を手に入れようとする冒険者だけである。


 ケントも浅い場所では他の冒険者を見かけたことがあるが、訓練をしている少し奥に入ったところでは見かけたことはない。


 もっとも訓練中はケントもゴーレムも隠密を発動しており、大抵の者は魔物であれ冒険者であれ2人の姿を捉えることはできないが。


 ミランダを連れていつも訓練をする辺りにやってきた。


 ケントは周囲の木々や地面になるべく被害を出さないように闘うように心がけていたが、それでもへし折られた木々や抉れた地面など戦闘の傷跡をそこかしこに認めることができた。


「…ここでいったい何があったの?」


 ミランダが少しひるんだように呟いた。


 魔法を使えるようになった今だからこそなんともないが、転移前のケントなら強大な何かが暴れた後のようなこの景色を見たら多少の恐怖を覚えていたかもしれない。


「実はいつもここで戦闘の訓練をしているんだ」


「戦闘訓練?

 でもケントは攻撃系のスキルを持っていないのよね?」


「まあ見ていて」


 そういってケントは3cmの魔石を取り出した。


「それは魔石?

 なかなか立派なものね」


「そうなの?」


「ええ。

 基本的に出回っているものは1~2cm程度のものがほとんどだから。

 ダンジョンの深部に行けばより大きな魔石を持つ魔物もいるだろうけど、そこまで潜れる冒険者の絶対数が少ないから、市場にいきわたるほど出回らないのよ」


 そうなのか。


 となるとこの3cmの魔石は多少高価なものだったのか。


 次にあのニート君と会うことがあったらお礼を言っておこう。


 それにしても彼はどうやってこの魔石を手に入れたのだろう。


 ステータスを見る限りあまり強そうじゃなかったけど。


 彼も誰かから貰ったのかな。


「それで?

 その魔石が秘密に関係あるの?」


「うん、ちょっと見ていて」


 そう言っていつものようにゴーレムをイメージしながら水魔法を発動させた。


 一度話すと決めたのだ、ここはアクアではなくアイスでいこう。


 そうして魔石を核にして体を氷で構成したアイスゴーレムが姿を現した。


「えっ!まさかこれって…ゴーレム?

 魔法を極めた魔法使いが創れるって聞いたことはあるけれど…。

 それにこのゴーレム氷でできている…。

 ケントってまさか氷の魔法が使えるの?」


「一応使えるかな。

 正確には氷の魔法じゃないけれど」


「そう…。

 ということはやっぱりあの時助けてくれたのはケントだったの?」


「まあ、そういうことになるかな…って「やっぱり」?」


「そうだったのね。

 実は初めてケントと話した時からそうじゃないかって思っていたの。

 あの時の声と同じ声だったから」


「声?……あぁ、あのときか」


 ケントはミランダとエミリアを逃がす際、ミランダに対して指示を出していた。


 ミランダはあの時の声を覚えていたということだ。


(そんなことでばれる可能性があるのか~。

 以後気を付けよう)


「それでね、ケント。

 あの時は私とエミリアを助けてくれてありがとう。

 あなたが助けてくれなかったら2人ともどうなっていたかわからないわ」


「お礼は受け取っておくけど、気にしないでね。

 たまたま通りかかっただけだから」


「いえ、言葉だけじゃなくて何かお礼をしたいんだけど…。

 前衛としてあなたのことを守ることが一番の恩返しかなって思ったんだけど、よく考えればあれだけの攻撃魔法が使えるのよね。

 そういえばオリヴィアさんの話し方からして氷の魔法のことはギルドにも秘密にしているのよね。

 どうしてなの?

 というか冒険者登録をするときに鑑定石を使ったと思うんだけど、どうやってごまかしたの?」


「まず1つ。

 氷の魔法についてなんだけど、あれ実は水魔法なんだ」


「水魔法?

 どうして水魔法で氷の魔法が使えるの?」


「それはまあ、工夫したというか。

 もう少し詳しく説明することはできるんだけどその前に2つ目。

 秘密にしている理由なんだけど、ミランダも知らなかったように水魔法で氷を創れる、そしてその氷で攻撃できるってことは少なくても一般的な技術じゃないよね。

 もしそんなことができるって知られたら目立っちゃうだろうからね、それが嫌なんだ」


読んでいただきありがとうございます。

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