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2.女神アエロラ

気が付くと健斗は白い空間にいた。


360度どこを見ても白い。


他に何もないため遠近感がつかめず、ここがとても広い場所なのか、はたまたすぐそこに壁があるのかわからない。


「こんにちは、逸見健斗さん」


周囲を見渡していると、突然後ろから声をかけられた。


振り向くとそこには一人の女性が立っていた。


身長は170cmくらいだろうか。

作り物のような整った顔立ち。

腰のあたりまである緩くウェーブしたブロンドの髪。

白いワンピースのような衣装の下には豊満でありながら均整の取れた体をうかがうことができる。


(やべぇ、外人さんだよ…。めちゃくちゃ美人だし。英語苦手だしな~。どうしよう…)


などと考えつつ、そういえば日本語で話しかけられたことに気が付く。

話しかけられたからには返事をせねばなるまい。


「えっと…、すみません、お名前を伺ってもよろしいですか」


向こうはこちらのことを知っているようだが、まったく見覚えがない。

これだけ美人でしかも胸の豊かな女性なら忘れるはずないのだが思い出せない。


高校生にしてボケが始まってしまったのだろうか、恐ろしい。


「私は女神アエロラ、『エランティア』という世界の創造神をしています。今回は逸見さんの魂をお預かりすることとなりましたのでご挨拶に参りました」


…ちょっと何を言っているのかわからない。


落ち着こう。


確か部活が終わって駅に向かっていたはずだ。

電車の発車時刻までぎりぎりで走っていてそれで…


「質問してもよろしいでしょうか」


「かまいませんよ」


「もしかして私は死んでしまったのでしょうか」


「ええ、そうですね。バスにひかれて即死だったようです。苦痛を感じる暇もありませんでした」


(やっぱりそうかーーーーっ!あっ、バスだって思った後の記憶無いし、ここどう見ても病院じゃないし、にこにこしながらこっち見ている金髪のお姉さん胸でかいし、よく見ると背景光ってるしっ!後光ですか、後光が射しているんですかっ、それは!)


はぁ……はぁ……。


「それではここはいわゆる天国という場所でしょうか」


「それは少し違いますね。死後の世界という意味では合っていますが、ここは魂をある世界から別の世界へと移すための待機所です。転移する魂の持ち主の方に転移先で快適に過ごして頂けるようご案内しています。今回逸見さんの魂がエランティアへ転移する魂として選ばれましたのでエランティアの創造神としてご案内するためにこのような場を設けさせて頂きました」


(これは所謂異世界転移というやつだろうか。魂の転移とか言っているし。それにしても腰の低い女神さまだなー。女神さまからしたら俺なんて有象無象の内の一人にすぎないだろうに)


「私の魂が選ばれたということは、選ばれなかった魂はどうなるのでしょうか」


「選ばれなかった魂は逸見さんが言うところの天国に逝き、浄化されて無垢な魂として生まれ変わったのち、元の世界で新たな生を授かります」


「なるほど。転移する魂が選ばれるというのはよくあることなのですか」


「割合的にはほとんどありませんね。逸見さんが生きていた世界のほかにも無数の世界が存在するのですが、魂は基本的にそれぞれの世界の中で循環しています。しかし、同じ世界の中だけで循環していると、世界が停滞してしまい、魂自体の活力も減少してしまうのです。そこで、ときどき他の世界と魂のやり取りを行うことで世界に刺激を与えているのです。もっともあまり魂を転移させすぎるとそれぞれの世界の個性が失われてしまい、後々魂の転移による刺激を与えても効果が薄れてしまうので、加減が必要なのですが」


(交換留学みたいなものだろうか。クラスに一人留学生がくると話題の中心を独り占めできるが、クラスの半数以上が留学生だとそこに新たに留学生が来てもあまり興味を持たれないみたいな)


「私の魂が選ばれたことには何か理由があるのですか」


「いいえ、とくにはありません。もちろんあまりに穢れた魂は事前に候補から外していますが、それ以外の魂の中から無作為に選んだ結果、逸見さんの魂が選ばれたというだけです」


(まぁ、そんなもんだよな。俺の魂は他のやつとは格が違うぜ!みたいなのを期待したがそんなことあるわけないか)


「私のほかにもエランティアでしたか、そこへ転移する魂はあるのですか」


「もちろんありますが、逸見さんと同じ世界の魂が選ばれることはほとんどないでしょうし、他の世界の魂が転移するとしても当分はありませんのでエランティアで逸見さんと会うことはまずないでしょう」


(女神さまの感覚で当分ということは、おそらく何十年へたしたら何百、何千年はないってことだよな、きっと。まあ、仮に会ったとしてもとくにどうというわけでもないのだが)


「転移した後、記憶はどうなるのでしょうか」


「記憶については引き継がれるようにしますので安心していいですよ」


(記憶が引き継がれるのはありがたいな。というか引き継がれなければここでの会話やお胸も忘れちゃうから当然といえば当然だけど)


「転移したら何か使命などはあるのですか」


「特にありませんよ。魂を転移させること自体が刺激となりますので転移した後は逸見さんの思うようにお過ごしください」


(よかった。一生使命を背負いながら生きるとか重すぎる)


「ありがとうございます。魂の転移に関しては何となくですが理解できました」


「それはよかったです。それでは次にエランティアについてご説明しますね。エランティアには逸見さんのいた世界とは大きく異なるものがあります。それはステータスです。エランティアの生命体にはそれぞれステータスというものがあります。逸見さんの世界にあるゲームみたいなものですね。攻撃力とか防御力とかそういったものです。エランティアにはそういったものが明確な数値として存在します。ですから、その数値によってはヒトが岩を砕くことも可能ですので、あまり前の世界の物理法則などを意識しすぎないほうがよろしいかと思います。

そしてスキルというものがあります。それぞれの個性・能力を表すものですね。スキルによっては魔法を使うこともできるようになりますよ」


(まさにファンタジーだな。冒険者とかもいたりするのかな。どう見ても防御力薄そうなビキニアーマーを着た女冒険者とか)


「魔物とかそういった類の生物も存在するのでしょうか」


「いますよ。冒険者という職業の方たちが生活の糧とするために狩ったりしています」


(魔物いるのか、冒険者も。やっぱり冒険者になって魔物相手に魔法とか撃ってみたいな。忌避感が無ければだけれど)


「逸見さんには転移後に困らないよう何かプレゼントをしようかと思うのですが、希望はありますか」


「言葉はどうなっているのでしょう。さすがに言葉の通じない中へ放り込まれても厳しいものがあるのですが」


「確かにそうですね。ではエランティアの言葉を自動翻訳できるようにしておきましょう。もちろん読み書きも問題なくできるようになりますよ」


「それと知識ですね。右も左もわからない状態では日々の生活ですら困難かと」


「それではエランティアのヒトの3割以上の人が知っている知識を常識として与えましょう」


「そして服装です。今の服装だと非常に目立つのではないかと思います。転移した後は目立たない服装にしていただけるとありがたいです」


「でしたらエランティアの一般市民が身につけている服に転移後着替えさせていただきますね」


「あとは………」


こうしてあれこれ注文した結果


・5万ギル(エランティアのお金。日本と同じくらいの物価らしい。さすがに無一文は厳しいからね)


・転移先の指定(そこそこ大きな街から歩いて1時間くらいのところに転移してくれるようお願いした。前人未到の地や魔物の近くに転移されても生きていける気がしないし、反対に人前に転移されたら騒ぎになるからね)


・スキル各種

 回復魔法(平和な日本で生きてきたからね。けがとか病気とか怖いし)


 空間魔法(いわゆるアイテムボックスは存在しないらしいからその代用として。さすがに時間は止まらないらしいが容量は無限大。やったね)

 

  水魔法(攻撃してよし、飲んでよし。すばらしいね)


 鑑定(強い魔物や厄介そうな人に関わりたくないからね。事前にステータスが分かれば回避できるかもしれないし)


 隠蔽(対鑑定用。単純にステータスを隠すこともできるし、偽造もできるらしい。プライバシーとか緩そうだからね。個人情報筒抜けとか日本人的には怖すぎる)


 隠密(目立ちたくないし。注目される中で何かするとか恥ずか死ぬ)


……女神様、優しすぎではないだろうか。


 初めは今後の人生がかかっているため強気でお願いしていたが、何でもお願いを受け入れてくれるためだんだんお願いするのが心苦しくなってしまい、注文を終了した。


 (だって善意に付け込んでいるみたいで俺の良心が痛むんだもん!にこにこしながら美人なお姉さんが俺の欲しいものをどんどん貢いでくれるんだよ!無理無理無理、俺のガラスのハートでは耐えられない…)


 とはいえ、これだけもらえれば後は何とかなるだろう。他のスキルも自力で身につけることができるみたいだし。


 「それではこれから転移させていただきますね、転移したらステータスと念じてみてください。現在のステータスを確認できますよ」


 「わかりました。いろいろありがとうございました。頑張って生きていきたいと思います」


 「それでは逸見さん、あなたの第二の人生が良いものとなるよう祈っていますね」


 その言葉とともに意識が薄れていく…。


 (頼めばあの巨乳を触らせてくれたのだろうか…)


 そんなことを考えながら意識は暗転した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 作り物のような整った顔立 <整った顔立ちだが何か作り物めいた違和感/なんか嘘っぽい>をいいたいのならこれでいいし、 <格調の高い/品のある>といったプラスイメージなら『作り物』って言うマイナ…
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