二十七話 エルドリヴァイス・フォン・シュバイツァー
聖騎士団に取り囲まれながら、ルードとゲオルギウス、そしてイザヤ教団の戦士は槍や剣を構えて、聖騎士団を制止する。
「へっ……どういう風の吹き回しだ? 聖騎士団様……確かに俺はピグマの捜索の手伝いはお願いしたが……その殺気、まるでピグマを殺したいみたいな空気じゃないか」
ルードはそう正面に構える聖騎士に対してそう言葉を漏らすと。
聖騎士は苦笑を漏らしてその言葉にうなずく。
「聖騎士団として、悪魔をこの街に放っている人間は見過ごせん」
「え? 俺!? それってもしかして俺の事!? いやいやいや!?違います違います! 俺はそんなことしてませんー!?」
「……それで? 俺たちは?」
「あぁ、悪魔との戦いで不運にも巻き込まれた一般人といったところだ」
不敵に笑う聖騎士団の男。
私はその言葉に体の力が抜けていく感覚を覚える。
今この男は、私たちの口封じにやってきたといったのだ。
「神よ……おさがりを」
「嘘だよね!? 冗談だよね!」
「ピグマうるさい!」
「は、はひ!?」
ゲオルギウスは私をかばうように服のそでで聖騎士から隠す。
「……ガラクの命令か?」
「……いいや?」
「ははぁ、なるほどな……ガラクは今どうしてる?」
「あの間抜けは今頃、行方不明になったハンターを追いかけて悪魔に囲まれているはずさ……」
「そんな!? ガラク!」
「話が見えてきたな」
ルードは少し思案をし、同時に剣を抜く。
「そんな錆びた剣で何ができる? 俺たちは聖騎士団だ……大人しくしていれば……そうだな、苦しまずに死ぬことは出来るぜ?」
にやにやと口元をにやけさせながら笑う男たち……正直、どう控えめに見ても安らかに眠らせてくれるつもりは無さそうな顔である。
「やれやれ……聖騎士団も、ここまで落ちるのか……」
「なにをごちゃごちゃ……」
言っている……そう聖騎士の一人が言うよりも早く。
ルードは、騎士の男の眼前へと踏み込んだ。
「え?」
放たれるのは、刃こそついてないが、巨大な大剣を用いた破砕の一撃。
七つの大罪の力……憤怒の炎を使うことはかなわなくとも、人狼を片腕で殴り飛ばした腕力は消えることはないらしく。
「構えがなってない……鍛えなおしてやる」
大ぶりによる一閃にて、眼前の騎士五人を一斉に吹き飛ばす。
ぼぎりという何か骨のようなものが砕け散る音とと主に、吹き飛ばされた人間たちはいっせいに教会の壁やガラスに突っ込み。
「なっ!?」
その異常なまでの光景に聖騎士団は怯み、隙ができる。
「反撃開始いいいい!」
その隙を見逃すはずもなく、ゲオルギウスは教信者たちに合図を送ると。
「「「「ああああああああああああああああああああ!」」」」
怒声を上げて信者たちは怯んだ聖騎士団に切りかかる。
「怯むな!! かかれ! かかれぇ!」
怒声を放ちながら、聖騎士はいっせいに教会内になだれ込み、ルードを殺そうと剣を振り回すが。
「おぉ!」
ルードはその身の丈ほどもあるだろう大剣を、まるで小枝のように振るって敵の刃を次々にへし折っていく。
もと聖騎士団長エルディリヴァイス……伝説では元ハンターであり……その剣は人の身でありながら……竜の骨をも断ったとされる男。
一つ旋風が巻き起こるたびに、敵が一人二人と宙を舞い。
切りかかった聖騎士の剣は、ルードの剣と打ち合うだけで甲高い悲鳴を上げてその身を二つに裂かれてしまう。
「小細工なんざ必要ないな……お前ら、少したるんでるぞ」
その圧倒的な力の前に人間はなすすべもなく吹き飛ばされていき。
気が付けばその場にいた人間は全て教会のオブジェクトのようにあちらこちらに散らばっており、それ以外の聖騎士もゲオルギウスと教信者の手によってとらえられている。
なぜか火あぶりの準備をしているのは謎だが今は放っておこう。
「……そんな……我々聖騎士団が……貴様、一体」
ルードの存在に気付かずに、聖騎士団は苦痛に表情をゆがませながらもルードにそう問いかけ。
「俺は、ただのハンターだ」
ルードはそう答え、聖騎士の一人の頭を掴み問いかける。
「それで? お前ら聖騎士団は悪魔を使って何をしようとしている……場合によっちゃ」
「火あぶりです!」
「ちょ!? ちょっと待ってくれ! お、お、俺はただ命令に従っただけだ!」
「じゃあその命令を出した奴は誰だ」
「それは……がっ!? ごあがおっがあああああああ!」
不意に、男は目前で血を吐き出し、同時にそばにいた聖騎士達も皆が皆のたうち周り始める。
「これは……エルドリヴァイス!? これは一体!」
「そそおそそそそおそそそそ!? そんな馬鹿な!? なんで、私たちまで……」
「ひっ!? ひええええぇ! なんだってんだよぉ!? なんだってんだよぉこれ!? どうなってんだよなぁクソガキ!」
「こ、これって……」
皆が皆混乱をする中で、私は分かってしまう。
これが何なのかを。
「悪魔だ……」
村に唐突に現れた悪魔も……こうして現れた。
口から血をまき散らして……それがその人の体を覆いつくして……そして悪魔に……。
ぞわりと体中から血の気が引く。
「外はもう夜……どうやら最悪の夜になりそうだ」
ルードは大剣を構えて、そうつぶやく。
気が付けば、私たちはイザヤ教会の中で、無数の悪魔に囲まれていたのであった。




