後編
携帯電話が鳴る。
知らない番号からだ。
「もしもし?」
「川口さんですか?鍋島です」
「ああ。龍造寺先生の助手の……どうしました?」
「龍造寺先生についてお話したいことがあります。今から会えませんか?」
「……分かりました」
鍋島はマンションに住んでいる。その部屋に通された。
「どうぞ」
鍋島が紅茶を出して来た。駿介はそれを一口飲んだ。
「それで、話というのは?」
「実は……龍造寺先生が被害者と二人きりで歩いているのを目撃してしまいまして」
「なんですって!?それは何時頃のーー」
ぐらり、と視界が揺れる。
「っ!?」
「ああ、効いてきましたか。薬」
鍋島はそう言って立ち上がると、駿介の両腕を後ろ手に縛った。駿介は体に力が入らず抵抗出来ずにいた。
「お前が…………犯人か…………」
「ええ。そうです。全部俺がやりました」
ニタリと鍋島は笑い、駿介のネクタイを外し、シャツのボタンを一つ一つ丁寧に外していく。
「俺はね川口さん。運命の相手を探してるんです。でも皆俺を拒絶する。こんなに愛しているのに」
『何で俺を見てくれないんだ。こんなにも愛しているのにーー』
鍋島と白田の言葉が頭の中で反響する。
「でも貴方なら、俺の愛を受け入れてくれますよね?」
「……お断りだ。この殺人鬼め」
「………………残念だな」
鍋島が駿介の顔を殴る。殴る。殴る。
頬が腫れ、口の中が切れ、血の味に満たされる。
「さよなら。川口さん」
鍋島がナイフを振りかざす。
駿介は目を閉じた。だが、衝撃はいつまでたってもやって来ない。
「……?」
駿介が目を開けると、そこには鍋島が倒れていた。
その傍らには、駿介の良く知った人物がいた。
「しろ……た?」
「油断したね。駿介。君は警察官にしては警戒心が無さすぎる」
「なんで…………」
刑務所にいる筈の白田が何でここに。
白田はそれには応えず、右手で駿介の目を覆い耳元で囁いた。
「今は何も考えずお眠り……」
その言葉に誘われるがまま、駿介は意識を手放したーー。
終