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中編
龍造寺博信は精神医学の専門家として大学で教鞭を振るう一方で、精神科医としても有名である。
白田の精神鑑定をした専門家の一人で、駿介も何度か彼の元を訪れたことがある。
「川口君じゃないか。その後調子はどうかね?」
「お陰様で。
……今日は先生の意見を聞きたくて参りました」
「ふむ?」
龍造寺に被害者の写真を見せる。
龍造寺は被害者の十字架の傷に注目した。
「これは、恐らく独占欲の現れだろうね」
「独占欲?」
「これは自分のものだという独占の証だろう。犯人は執着心が強い人物だと言える」
「……成程。もう一つ聞いても良いですか?事件があった日、何をしていたのか」
「……アリバイならば無いよ。部屋で一人で論文を書いていたからね」
その時、ドアが開く音がして一人の男性が入ってくる。龍造寺の助手の鍋島だ。
「先生。診察のお時間です」
「ああ。分かった。済まないがこれで失礼するよ」
「……分かりました。今回はこれで失礼します。何かありましたらこちらの番号へ」
駿介は携帯番号が書かれたメモを差し出し、その場を後にした。