後編
ファイルを閉じた白田が口を開く。
「……警察は同一犯の犯行だと思ってる?どうして?」
「それは……手口が同じだし、犯人しか知りえないテディベアを添えてる。それぞれの被害者に容疑者は出たが、全員アリバイがあった」
「それは、情報を共有すれば良いだけの話だよ」
「……お前はこの事件、複数犯の犯行って言いたいのか?」
駿介の言葉に、白田は笑って首を傾げる。
「入れ替えれば良い」
「は?」
「アリバイがあるのなら、入れ替えれば良い」
「…………。交換殺人?」
暫く考えていた駿介がぽつりと呟いたキーワード。白田はゆっくりと頷いた。
「よし。なら、その線でもう一度調査をーー」
「駿介」
部屋から出ようとした駿介がその声に振り向くと、いつの間にか直ぐ目の前に白田がいた。
ゆっくりと白田の指が、駿介の唇をなぞる。その冷たい感覚に、思わず身体が震えた。
「困ったら、またおいで」
赤い瞳が駿介を見る。駿介の耳に白田の唇が触れる。
「僕は、君の為なら何でもするから」
「っ!」
弾かれたように白田から離れ、逃げるように部屋を後にする。
「何なんだ……アイツは」
駿介には分からなかった。何故白田があんなことをするのか。あんなことを言うのか。
ーー白田を逮捕したのは、自分なのに。何故?
そんな気持ちを抱えながら、駿介は捜査本部に向かう足を早めたのだった。
終