91話 対決(サエ編)
────【青仮面】。
女王からの依頼は、青仮面、奴の殺害か捕縛だ。
やはり、女王は青仮面と何かあるのだろう……まあ、無理に詮索はしないけど。
それはそれとして奴には、個人的に借りがあった。
俺の目の前で仲間を傷つけようとした事だ。
とりあえずは、それを清算して貰う。
青仮面を破壊するのか捕縛するのかはその後に決めよう。……捕縛ってどうやってやればいいのかな?などと考えていたら、青仮面からの声で思考が中断させられる。
「おぬし、ワシの研究の成果を──」
「そういう無駄は要らないから」
そういう無駄に長くなりそうな話しは要らないし。
青仮面の研究などに興味もない。
「──ワシの研究が無駄じゃと!」
自分勝手で犠牲だけの研究なんて無駄じゃないか。
「はは……はーはっはっは」
青仮面が突然笑いだした。
狂ったか?
ていうか、笑い方フォフォじゃなかったっけ?
「ははは……殺す!」
青仮面から怒りのオーラみたいなものを感じた。
これは、完全にキレてるな。
「青仮面?」
「殺す、殺す、殺、殺……」
うん、会話はもう無理だな。
元々、会話は無理だったと思うけど。
「喰らえ『喰光』」
青仮面の杖から放たれる黒い光線。
「──『黒丸』」
咄嗟に暗黒魔法『黒丸』を発動させる。
青仮面と俺の対角線上に黒い球体が現れて、青仮面の放った光線とぶつかる。
そして、俺の魔法と青仮面の魔法とが互いに喰らい合い、共に消滅する。
「ワシの魔法を相殺したじゃと!クッ次は──」
「させるか」
俺は青仮面に魔法を放つ。
黒く尖った小さく針のような外見を持つ魔法だ。
それを、五本同時に密集させる。
「そんな弱そうな魔法なぞ、以前より力を増したワシの魔法『縄癖』を突破できまい」
「外見だけで判断すると──」
暗黒魔法『黒針』、消滅の力を針の形に凝縮した魔法、威力は……
バキッ!
「──痛い目に遭う」
「なにぃ!?」
非常に強力。
俺の『黒針』は青仮面の防御魔法を貫通して、青仮面が持つ杖を破壊した。
「さて、『風刃』」
「クッ」
慌てて頭を逸らして避ける青仮面。
だが、風の刃は青仮面に掠り、僅かに削れていた。
「やっぱり障壁の魔法が完全に消えてるな。青仮面、お前は魔法を使う時は杖が要るんじゃないか?」
「……」
俺が見た限りでは、青仮面が魔法を使う時は必ず杖を通して発動させていた。
だから、杖が使用不能になると青仮面の魔法発動には不都合があると思ったが、どうやら正解だったようだ。
これで、個人的な借りも返せたかな。
今なら、捕縛も出来るな。
さっさと──
「まだじゃ──まだ終わっておらん」
青仮面の身体に魔力が集まっていく。
嫌な予感が──
「杖が無くても、ワシは魔力を集めて爆発位なら出来るわ!貴様等も纏めて一緒に爆発してやる!」
つまり自爆か!
俺がどうやって逃げるか考えていると、壁や天井、床から青白い身体が現れる。
こんな時に──!!
現れたスピリットに魔法を使おうとするが──
「待ってサエ!彼等には敵意が無いみたいだ」
魔王が止めた。
確かに敵意は無いようだが、だったら何故このタイミングで?
「彼等は青仮面の犠牲者で、サエが杖を壊したから自由になれた。だって」
魔王、スピリットの言葉が分かるのか!
「まあ、我は魔王だしね」
はいはい。
というか、スピリットには意識があったのか、知らずとはいえ今まで沢山殺してしまった。少し、罪悪感が……。
スピリット達は、現れると次々に青仮面へと向かって行った。
やがて青仮面の姿が見えなくなるほどに集まる。一体何を考えて──
「スピリット達が爆発しないように青仮面の魔力を抑えるから、その間にサエには魔法で自分達ごと青仮面を消滅させてくれ。だって」
「えっそれは……」
スピリット(魔王)の言葉に躊躇う。
散々スピリットを倒してきたが、それは意識がないと思ったからで、自分の意識があるのに、また消滅(死なせる)させるなんて……
「サエ!スピリットは自意識を長く保てないんだ。数年もしたら無意識に人を襲う魔物になるよ。だから彼等の為にも……やるんだ!」
「……ああ、分かった」
魔法を使う。
暗黒魔法『黒風雪』。
指定した範囲の全てを消滅させる黒い吹雪が舞う。
──ありがとう。
俺の耳に聞こえないはずの声が聞こえた気がした。
「五月蝿い!俺はあんた達に何もできなかった!助けられなかった!だから『ありがとう』なんて言うな!」
「──サエ」
吹雪の後には、全てが消滅して何も無い空間だけが残った。




