90話 対決(ラズ編)
セアに任されてから、私はセアの狙いと違うケルュスを確認して、それを目標にして私は駆け出した。
途中で色々と邪魔なモノは全て斬り捨てて行きながら、真っ直ぐに私が定めた目標へと向かう。
────やがて目標まで辿り着くと、そこに見えたのは、ケルュスとその下にある真っ暗な穴だった。
そして、私の武器に神聖魔法『憑依』を使って、ケルュスに攻撃を加えようとした……
その時、ケルュスの腕が槍のように変わり私に襲いかかって来た。
私はその攻撃を当たらないように、剣を振り弾いた。しかし、弾いた瞬間に続けて、ケルュスの足元の穴からも同じような攻撃が何本も迫る。
咄嗟に身体を捻りギリギリで避けると……
ドスッ!
私の後方にいる、斬って上下に真っ二つになっている異形の口から腕が伸び、私の身体は貫かれる……ように見えた。
だが、貫かれている私の身体は煙のように消えていった。
「残念……はずれよ」
ザンッ
私は、私を貫いた異形を完全に消滅するように切り刻む。
貫いた幻……私のあったかもしれない動きをする幻影は、運命の勇者の固有技で、歴代の勇者がどう呼んでいたのかは分からないけど、私は『騒幻』と呼ぶ技だ。
それを、ケルュスが攻撃した瞬間に使い、本体の私は神聖魔法『光陰』で目立たないように脱出した。
周りの敵が私の今いる位置に気付いたみたいで、周囲から一斉に私を貫こうと攻撃が来た。
でも──遅い。
すでに私は、敵の攻撃が来る前にもうその場から移動していて、ケルュスに向かっていた。
そして、ケルュスの手前で2人の私に別れた。1人はケルュスに向かって跳躍して、もう1人が穴に向かって駆ける。
けれど──突然、穴からさっきの倍位の腕が出現して、1人は空中で避ける事が出来ずに貫かれる。もう1人も避け続けていたけど、数の暴力には勝てずにやがて貫かれる。
そして────
2人共、煙のように消えた。
「どうやら、それが穴から出せる全部の腕みたいね」
私は幻影と離れた場所で、すでに穴の近くにいた。
『騒幻』を使った時、同時に『光陰』を使って私は回り込んでいたのだ。
穴から出現している腕が、急いで方向転換して私を狙うが……
「もう、遅いわよ」
私が穴に剣を突き立てた方が速かった。
バリンッ!!
穴に亀裂が走り、砕け散った。
それと同時に穴から出ていた腕が消滅する。
そして、ケルュスが私に向き直った時──
「だから、遅いわよ」
私はもうすでにケルュスを、斬っていた。
私は剣を穴に突き立てた後、剣を穴から抜く勢いそのままにケルュスも斬っていた。
さあ、残りはこの異形の群れを、この剣で斬っていけばお終いね。
神聖魔法初級『光陰』
光と陰の影響を強くする。
光を強くすると存在感が増し、陰を強くすると存在感が薄れていく。ただし、ずっと相手に注目されていると存在感は薄れない。




