86話 対決(セン前編)
「また来たか……なっテメエは!」
「おやっ?どうやらまた……おっお主は!」
二人の人物が中にいて、先に入って来たセンを確認すると、喋り掛けようとしたが、二人共、俺が入って来たのを見た瞬間に驚きへと変わったようだった。
中にいた人物、青仮面ともう一人の男。
青仮面は以前に現れた姿と同じ格好で……いや、一カ所だけ変わった場所があった。仮面の右目の部分に亀裂が入っていた。
もう一人の男は……誰だっけ?
確か、どこかで見た気もするんだが……?
思い出せないが、俺を見て驚くということは、男は俺の事を知っているのだろう。
中は結構な広さがあり、所々に何かを試すような器具が置いてある。
ここは、性能の実験場みたいだな。
この広さなら、戦闘で洞穴が崩れて生き埋め……ということにはならないだろう。……多分。
「青仮面ーー!!」
センが叫び声と共に、いきなり飛び出し一瞬で距離を詰めると、青仮面へと剣を振るう。だが────
キンッ
センの剣は男の持つ赤い大斧に止められる。
「邪魔だ!どけ!」
「またやられに来たのか?いいぜ、次は確実に殺してやる!」
男とセンは睨み合いながらそう言うとと、一旦、離れてお互い距離を取った。
すぐにロンとユミがセンに合流して、どうやら三人で斧男と戦うようだ。
「お主に付けられたこの傷の怨み、その魂で払ってもらうぞ!」
一方、青仮面は俺に殺気を放ちながらそう言うと、持っていた杖の先で床を軽くトンと叩いた。
すると、床から沢山の黒い影が出来て、その影から何かが現れる。
現れたモノは、大体が身体の殆どが継ぎ接ぎをされて、人や獣、魔物等が混ざったモノだった。だが、一部にいたモノは、最近よく出会っている魔物がいた。あれは──
「スピリット?」
セアが疑問形で呟く。
まあ、気持ちは分かる。
なぜなら、そのスピリット?はそれぞれが、獣と人が混ざったような形をしていて、普通のスピリットの三倍は大きさがある。
全身が青白く半透明で無ければ、とてもスピリットとは思わないだろう。
「フォッフォッわしの最高傑作“ケルュス”じゃ!行け!奴らを殺せ!」
青仮面はそう言うと、自分は後ろに下がる。
じゃあ、やってみるか。
と、いざ闘おうとしたら、セアに肩を叩かれて、ストップする。
ん?何かあるのか?
俺が振り向いたら……
「ここは私達が闘います。サエ様は青仮面の相手をお願いします」
と、セアが言ってくる。
結構数が多いし、敵は見たことないような魔物だけど、平気かな?
「敵を皆倒しても、青仮面がまた増やしたら面倒だよ。それにサエしか青仮面にダメージを与えられないんじゃないかな?」
魔王がもっともな理由を言う。
「あと、皆も──」
魔王に言われて皆の顔を見ると、頷きを返された。
「──サエに行って欲しいみたいだよ」
「こちらは平気です。サエ様、お任せください」
「いいから、こっちは任せていってらっしゃい、サエ」
「ボクも2人と頑張るよ!」
「……じゃあ、任せた」
頼もしい言葉ももらったし……
よし、青仮面を倒しに行くか。
俺は青仮面に向けて一直線に駆けた。
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セン視点
青仮面に向けての一撃はあの男に止められた。
あいつは【戦斧】の現在リーダーの男だ。
そして、僕から大切なモノを奪った男だ。
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男は前リーダーが居なくなり、数日後に突然現れた。そして、後継者だと言って、行方不明だった斧と遺言書を持っていた。その後、すぐにバラついていた【戦斧】を纏めていった。
パーティーを纏めてくれた事には感謝したが、そのやり方は問題だった。
男は最初に後継者を名乗り、遺言書と斧を持っている事で、【戦斧】のメンバーを取り込み内部から崩した。
次に暴力で、数で脅していき、大多数のメンバーを取り込むと、やがて少数の自分に従わない者をパーティーから追い出した。
僕ももちろん抵抗したが、男は色々と汚い手で、まともに話し合おうとはせずに、気が付くと僕はパーティー内で孤立無援になり、追い込まれていた。
そして【戦斧】を追放された。
その後、【戦斧】は以前のような感じは無く、男の良いようにされていた。
僕は追放された者で【剣】を作り、何とか対抗しようとしたが、その時には既に【戦斧】は大きくなり過ぎていて、微々たる抵抗しか出来なかった。
そして、この前の防衛戦で前日に男から勝負を持ちかけられ受けた。だが、アジトに帰ると、殆どの【剣】のメンバーが襲撃を受けた怪我で動けなかった。
男は最初からまともに勝負する気は無かったのだ。それに気付いた所で、すでに手遅れだった。
結局、僕だけで防衛戦に参加。
怒りに任せて魔物を殺して行く。
途中、他の活躍していた冒険者に悪いと思ったが、八つ当たりした。
気が立っていて、ついやってしまった。
そして、魔物侵攻の最後の方でソレは起こった。
なんと、男が持っていた斧が壊れたのだ。
この時、僕は遠くで闘っていて、見なかったので、誰がやったのかまでは分からなかったが、斧が壊れたのは遠目にも分かった。
形見の斧が壊れたのは残念に思ったが、それ以上にやったという喜びの感情の方が大きかった。
やっとあの斧は男から解放されたのだ。
男は斧が壊れると、すぐに後方に引き返した。
その日の夜遅くに、魔物を警戒して夜番をしていたら、あの男が一人で移動していた。
なんとなく気になったオレは、男をこっそり追跡する。
男は、とある外壁に出来ている小さい割れ目に手を差し込むと、ハズれた!抜け穴!
男は抜け穴を通り、首都に入った。
そして、自分の家に戻ったと思ったら、すぐに馬に乗り、急いでどこかへ向かおうとしていた。
こんな時間に一体どこへ?オレも馬を呼び、後を追いかける。
そして、男は抜け穴を通り、馬でさらに移動する。
夜中なので見つからないと思うが、一応見失わない距離を保ちながら追跡する。
やがて、男は洞穴で止まり馬を下りて中へと入ってゆく。
オレも馬を下り、洞穴へと入って行った。




