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84話 手

 ロンの話を聞いていたら、すっかり夜が明けてきて空が明るくなっていた。


「その後──」


 ロンが続きを話そうとしたが、俺は止まるように手だけで指示する。


「?、どうしたんだ?───!」


 どうやら、ロンも気付いたようだ。

 この明らかに俺達に向けられる敵意ある視線に。

 俺はスマホを操作して、マップを起動する。

 すると、俺達の周りは真っ赤に染まっていた。


「……近いな、それに囲まれてるか」


「見える限りでは、何もいないぞ!」


 ロンの言う通り、俺の視界にも敵らしい者は影も形も無い。


「サエ、今、皆も急いで館から向かってるよ」

「サエ様!ご無事ですか!」


 速!魔王の言葉が終わると同時に、セアがテントから飛び出して来て、俺に抱きついた。


「おわっ!平気…平気だから」


 セアを何とか引き剥がしながら答える。


「だから、サエなら平気って言ってるのに!」


 続けて、ラズとヤムもテントから出てきた。

 出てきた皆は、装備もちゃんと身に着けて、もう戦闘の準備は出来ているようだ。


「オレも自分のテントに行って、センに異常を知らせてくる!」


 ロンがそう言って、テントに行こうとした時──。


「キャアアー」


 そのテントから叫び声が聞こえたと思ったら、中から人が飛び出して来た。

 飛び出して来たのは、ユミとそれを抱えているセンだ。

 出てきた2人は、パッと見た感じでは、怪我などは特に無さそうだが。


「敵は地面だ!」


 センが大声で俺達に伝える。

 センが言い終わった瞬間、地面から無数の青い手が、俺達を捕らえようと伸びて来る。

 咄嗟に俺はナイフを青い手に振るが、感触が無く、すり抜けてしまった。

 まさか──


「スピリット!?」


 セアも同じことを思ったようだ。


 スピリット達の手を避ける為に、俺達は散開して各自で対応する。

 俺はとりあえず『風壁』を足場にして距離を取り、その下の地面には暗黒魔法『黒洞こくどう』を使う。

 範囲は俺が中心で円の形に直径3mぐらいで平気かな?あまり広いと味方も巻き込みそうだしな……


 暗黒魔法『黒洞』は上から見るとただの穴に見えるが、横から見ると線にしか見えない。

 この魔法は、範囲内に触れた物(魂等も含む)をどこかに飛ばす。飛ばした先がどこかは分からない。まあ、ぶっちゃけると、どこに行くか分からないワープホールみたいな感じの魔法だ。落とし穴+バシ○ーラ的な。

 このスピリット達は何故か、地面から出たがらずに手しか出して来ないので、地面からある程度離れれば平気みたいだ。

 一応、念の為に暗黒魔法で近付けなくはしたが……


 周りを見てみると、セアは剣を地面に突き刺して、それを足場にピョンピョン飛び跳ねて、手を斬り刻んでいた。

 俺の視線に気付くと、笑顔で手を振ってきた。余裕綽々だな。

 ……色々と思う事はあるが、セアは平気そうだな。


 ラズは、自分の一定の範囲内に手が入ると、高速で斬り捨てていた。

 ただ……明らかに斬撃が地面を貫いているように見えるのは、気のせいだろうか?斬撃の後の地面には、全く斬撃の跡が残ってないんだよな。

 ラズもとりあえず心配なしだな。


 ヤムは……自由だな。

 あれは、ほとんど飛行じゃ無いだろうか?風を纏って移動しているんだろうが、スピードが全く衰えず、進むのに邪魔になる手だけを爪で切り裂いている。

 あれなら、ヤムは捕まる事は無いだろう。


 さて、問題は──

 剣のパーティーは纏って動いていた。

 守護獣の馬を守りながら戦っている。

 セン以外は、スピリット達に攻撃の手段が無いのだろう、サポートに徹していた。

 攻撃出来るのはセンだけ、何とか持ちこたえているが、このままでは時間の問題だろう。


 助けたいけど、物理攻撃も風魔法も効かない相手だ。

 暗黒魔法は制御が……


「サエ、この前みたいに風魔法と暗黒魔法を混ぜたら、制御出来るんじゃないかな?」


 おお、魔王ナイス!

 それでいこう。


 今回は、範囲があまり広くないので『風刃』を使う。これに『黒雪』を混ぜる。

 全てを吸い込むような、1mほどの真っ黒な刃が出来上がる。

 名前はそのまま『黒雪刃』と言った所かな?

 それを、剣のパーティーに迫っている手に放つ。


 スパパパッ!


 『黒雪刃』の軌道上に手が綺麗に刈り取られる。何か機械を使った草刈りみたいで少し楽しい。

 フフフ……刈り尽くしてやる。



 その後、手が無くなるまでひたすらに『黒雪刃』を連射していたら、皆に軽く引かれた。なぜ?


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