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77話 剣の拠点

 女王からの頼み事とは、とある場所にとある人物と行ってほしいとの事だった。

 行って何をするのかは、来た人に訊けば分かるそうだ。

 とりあえず、明日の朝に北門へ集合する事になった。


 その後、女王は俺に約束通り、特別な品物を渡した。残りの報酬はギルドに預けてあるので、ギルドに寄れば、報酬を貰えるそうだ。

 特別な品物は古いコインで、魔力が込められている。女王にもそれの使い方は知らないそうだ。異様な魔力だが、暴発とかしないよな?

 受け取った後に、女王が小さく「助かった」と呟いたような?……実はただ、処分に困っただけとかじゃないよな?


 城での用事が済んでから、ひとまず街へ出て、適当なお店に入ると昼食を食べた。

 その後に冒険者ギルドへ向かった。そこそこの大きさな建物で冒険者ギルドと鑑定ギルドが同じ建物内にあった。


 冒険者ギルドの中には人が沢山いて、騒がしく、お祭り状態だった。

 キョロキョロ見回していると、その中に見知った顔を見つけた。ナルンだ。

 ナルンも俺達に気付いたらしく、人混みを掻き分けながら俺達に近付き、呼び掛けてきた。


「サエ様!皆さん無事でしたか?今朝に北門からも魔物が襲撃して来て、サエ様らしい人が向かったって聞いて……」


 ああ、ナルン達とは南門で別れてそれっきりだったな……

 俺は、ナルンに北門であった事をざっくり話した。


「それは……良く無事でしたね……」


「サエ様ですから!」


 ナルンの苦笑混じりの返答にセアがドヤ顔で答えた。

 うん、それは、何かおかしい気がする。俺だからって……


「なるほど」


 ええー!納得した!?

 皆の俺への認識がおかしいから!

 まあいい、とりあえずは、


「何でこんなに人が居るの?この首都では、この状態が普通?」


 人混みが凄くて歩きづらい、いつもこうなのかナルンに訊く。


「いえ、普段はもっと少ないんですけど、今日は首都の防衛の報酬を貰う冒険者が多くて今の状態です」


 なるほど、首都の防衛には沢山の冒険者が居たしな。

 急ぎじゃないから、少しその辺をぶらついてからまた来ようかな。


「今は混んでるから、報酬を貰うのはまた後にしようか?」


「それは良いですけど、どこに行きますか?」


「適当にその辺をぶらついて……」


「じゃあ、魔女さん「却下で!」


 ラズが危うく例の場所へ行くように提案しかかった。何で用事も無いのに、誰が好き好んで行くか!


「サエは、魔女が嫌いなの?」


 いや、嫌いじゃないが、あそこに行くとロクな目に遭わないからな。

 だから、とりあえず却下で。


「とりあえず外に出ようか、ここじゃゆっくり話せないし」


 という俺の提案で外に出る。

 ちなみに、ナルンはギルドに他のメンバーと来ているらしく、待ち合わせをしているので、俺達に同行はしなかった。

 本人は一緒に来たいみたいだったが……


「さて、どうしようか?」


 適当にその辺をぶらつきながら俺は皆に訊く。


 ガシッ!


 突然、目の前の子供?に両肩を掴まれた。

 顔がフードを被っていて、よくわからない。

 え?何?

 目の前の人がいきなり顔を上げて、俺に言う。


「助けて……助けて下さい」


 目の前の人は少女だった。

 やっぱり子供か。

 いや、いきなり助けてと言われても……


「とりあえず、離しなさい」


 セアが俺を掴む子供に言った。

 うん、話してくれないと何も分からないな。

 あれ?何か違うか?

 少女は俺から離れるが、ひたすら助けてと俺にお願いする。


「何を助けるんだ?」


 俺が少女に問い掛けると、少女は俺の手を取り、ついてきてと言って、俺を連れて走り出した。


「サエ様!」

「どこへ行くのかしらね?」


 少しの間呆然としていた、セアが慌てて追いかけてくる。

 だが、俺はすでに少女に連れられていて、大分距離が出来ていた。

 ラズはヤムを抱えて、既に俺に併走していて、俺に問い掛ける。いつの間に?


「分からないけど……」


「表の通りからだんだん離れていくわね」


 ラズの言うとおりで、裏道のような細い路地や綺麗とは言えない道を通って行く。

 少女は無言で俺を連れて走る。

 10分位走ると、やがて、一軒のボロ小屋に着く。

 セアがまだ追いついて来てないな。


 少女に連れられて仕方なく中に入ると、数人が怪我を負って床に寝ていた。

 少女がある一人の前で止まった。

 それは、あの剣の少年だった。

 体中がボロボロで虫の息だ。何かで押し潰された?ような感じで、恐らくは内臓も無事ではないだろう。


「助けて……助けて……何でもするから」


 少女が俺に懇願する。

 まったく俺は、医者じゃないんだけどな。

 そう思いながらも、剣の少年を回復魔法で看て、治していく。

 あれ?コイツは……


「やっと追いつきました」


 セアが息を切らしながら入ってくる。

 途中ではぐれてしまったが、無事ここにたどり着いたみたいだ。

 でも、よくここが分かったな。


「よくこの場所が分かったわね」


 ラズも同じ事を思ったようだ、疑問を口にする。


「はい、サエ様の匂いで!」


 犬か!


「冗談です。それより、そちらの方は?」


 セアが剣の少年を見る。

 いや、俺も詳しく知らないけど?

 そう思って、少女に視線を向ける。


「ここは、剣のパーティーの拠点。彼が剣のリーダー」


 少女が語り始めた。


「ここにいるリーダー以外は戦斧にやられた、私は偶々別の依頼でいなかった」


 そう言って、倒れた皆を見る少女。


「リーダーは、皆を私に任せて首都防衛の依頼に向かった」


 そこで、怪我を?……だけど、今日、城で見た時は怪我してなかったけど?


「その時は、無事に帰ってきた。でも、すぐに城へ行った。その後に帰ってきた時にこうなってた」


 城で何かあったのか?

 ずいぶんボロボロだったが……


「だから、今首都で評判の治療師のあなたに来てもらった」


 評判?治療師?……俺じゃないな、治療師じゃないし。


「黒くて、魔法で焼き印も消せると噂だった」


 うん、俺だな。

 でも、治療師じゃない!


「出来れば、他の皆も看てほしい」


 いや、それは────


「そいつは誰だ!ユミ!」


 今まで、寝ていた剣のメンバーが起きて、俺に殺気を向ける。


「嘘……なんで」


 ユミと呼ばれた少女が呟いた。

 そのメンバーには、すでに怪我は無かった。



 ──────すでにここに寝ていた全員を俺は治していた。





 『リカバリーエリア』 回復魔法

 エリア内の対象に『リカバリー』を使う。

 対象はエリア内であれば、複数指定が可能。

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