表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/102

7話 花畑

 枯れかかっていたトレントに、雪のように白い花が満開に咲いていた。

 季節とか無視で咲いたけど平気か?


 周りは皆、花に魅入っている。

 セアに見せたかったのもあったからな、存分に見てほしい。

 トレントが感動して涙を流している。いや、黄色の涙だからあれは樹液だな。


「これでしばらくは枯れる事ないと思います」


 俺はそう言ってあげた。千年くらいは平気かな?


「ありがとうございます。おかげでまた、花を咲かせる事ができました。良ければ、あなた様のお名前を、訊いてもよろしいですか?」


「サエと言います」


 慌てて自己紹介。


「では、サエ様が困った時は、この老樹もきっと力になります。何でも言ってください」


「それでは約束通り、フェルの事をお願いします」


 元々はそのつもりだったので、これでいいだろ。


「ええ、歓迎しますよ」


「やったあーーーー!!」


 フェルが嬉しそうに、飛び回っている。


 あれ?トレントの涙、じゃない樹液のとこで今光ったような?


 やっぱり!そこには、金のクワガタに似た虫がいた。大きさは20cm程でクワガタのハサミが上下にあった。


「その虫は貴重だから、捕まえておいて損はないよ」


 魔王の忠告。

 貴重な虫?なんかあったような?それに生き物はストレージに入らないし。


「その黒い葉っぱに包んでから、操作してみなよ」


 魔王の指示通りに動いてみる。大きな手のひらみたいな形の葉っぱで、クワガタを包む、カメラで写してと。

 えっ?ストレージに入った!葉っぱごと無い。


「それは特殊な草で暗黒草って言って、包むと仮死状態にするんだよ。葉じゃないよ」


 不気味な草だな。なんか人体にも悪そうだ。


「包みきれる大きさじゃないと、仮死にはならないけどね。粉にして人体にも使えるよ。人によっては幻覚や混乱状態になるから、なるべく素手で触れるのは止めたほうがいいよ」

「遅いよ!」


 平気だよな、実は今の見ている光景が幻覚じゃないよな?魔王と話していると、フェルが訊いてきた。


「サエ達は今夜どうする?夜の森は魔物が多くて、とても抜けられないよ?」


 俺達なら森を抜けるだけなら、平気だとは思うが、そろそろ休みたいし、お腹も空いたので夕飯も欲しい。


「しょうがないなあ、私の家に来てもいいよ」


 どうしようか?とセアに相談しようとしたら、フェルから招待された。


「じゃあ、お願い!」


 異空間に住むと魔王は言っていたが、どんな所なのか?非常に興味があった。

 あっ!セアに相談せずに勝手に決めたけど、良かったのかな?

 セアを見ると、笑顔で頷いてくれた。良いらしい。


「引っ越しはどうやるの?」


「木の許可が要るだけだよ、後は木の中に入るだけ」


 そういってフェルはトレントに入る。

 入った!俺も入れるのか?


「サエって変な所でビビるね」


 ためらっているとスマホがトレントに入った。うるさい、こういう入り口が無いのは不慣れなんだ。あの有名な映画の魔法使いも柱に入る時はこんな気持ちだったかな?


「サエ様、私と入りますか?」


「いや、平気だよ。セアは気にせず先に入って」


 見栄を張る。ちょっと惜しいことしたかな、でも男のプライドが。


「では、お先に」


 そういってセアも入って行った。

 平気だよな?俺だけ異空間にばらまかれたりしないよな?覚悟を決めていくか!


 お邪魔します。

 俺はトレントの中にある、フェルの家に入った。



▲▲▲▲▲▲▲▲▲




 ───────────花畑だった。


 今は夜だったはずなのに、空は雲一つない青空が広がっている。周りは広大でトレントの木に咲いていた花が辺り一面に咲き乱れていた。


「私の家にようこそ。歓迎するよ。まずは、食事をどうぞ」


 花畑の中に果実や木の実などが目の前に現れる。これを食べろと、そういうことだろう。


「はい、いただきます」

「いただきます」


 さすがにセアも人の家でテーブルセットは出さないようだ。シートは欲しいかつたな。

 花畑の上に座り、食べている。魔王は今回は食べないようだ。


 俺もりんごに似た果実を食べる。うん、まんまりんごだ。他にも似た食べ物は在り、味も似ていた。

 当然違うのもあり、紫のグレープフルーツは驚いた!色はグレープ。形はグレープフルーツ。味はキウイ。不思議!


 食事も終わり、スマホを見てみる。レベルが3上がって14だ。スキルの取得に振り分ける。

 MPが減ってる残り75%か、MPは睡眠で回復する。


 フェルに異空間の事を聞いてみる。

 異空間は、内装と広さは住む木次第で変わる。

 出るときは、出たいと思うだけで良いらしい。入るのは、木かフェアリーの許可が必要。

 異空間の中では木と繋がっていて、木の実や果実が貰えるらしい。フェアリー同士は異空間を繋いで会える。


 話していたら眠くなってきた、今日は色々あったからな。

 でも花畑で寝るなんて、いくら何でもそこまで子供じゃ─────────。



▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 寝てた。それはもうガッツリと。

 まだ、眠いな。良い枕使っている。柔らかくて、暖かくて……あれ?枕?枕なんて使ってたか?

 目を開ける。セアの顔がすぐ近くにあった。えっ?アレ?ナンデ?


「おはようございます。サエ様」


「おはようセア、えっ?どういう状況?」


「私がサエ様を膝枕させてもらっていますね」


 バッ!と飛び起きる。何、そのリア充みたいな行為!爆発しろ!あっ俺か。まだ、頭が働いてないな。


「あぁまだ良かったのに……」


 セアが名残惜しそうに言う。いや無理!俺が無理!そんな甘い空気作れん。


「ヘタレたなー」

「ヘタレたねー」


「うるさい、魔王と妖精!ていうか君らずいぶん仲良いな!」


「そりゃあねえ〜」

「ねえ〜」


 本当に仲良いな。思考が2人共、幼いからか?


「「サエをからかうと楽しいし」」


 こいつらは本当に……


「我、親だから寂しいよ」

「私の家でこれ以上をやられるのは……」


 やらないよ何も!


「私もこれ以上はちょっと……」


 だから、やらないよ!


「「「冗談だよ(ですよ)」」」


 もう、誰も信じられない!



「とりあえず今日は街に行ってみませんか?」


「でも、街って簡単に入れるの?」


 朝食を摂り、今日の予定の確認。昨日のペースなら昼前には着くだろうとのことだ。


「普通は手続きが有り、審査などで時間が掛かりますが、お金と紹介があれば直ぐに入れるそうです」


 金も紹介も無いな、俺まだこの世界に来て2日目だよ。


「2人分の入場料と紹介状は例のアレから脅……譲ってくれましたよ」


 うん。セア脅したんだ、だから彼等は怖がってたんだ。まあ、おかげで街に入れるし、いいか。彼ら……なんだっけ?森去り?ああ!狩りだ!森狩り!


「じゃあ、とりあえず行ってみよう」


 フェルとトレントに別れを告げ、森を出る。その際、細い枝を貰う。

 木に挿せば、どんな木でもフェルの異空間に繋がるらしい。


 セアが道をカゴ男から聞いているので、道案内をしてもらう。途中に何体かの魔物に遭うが全て蹴散らす。


 街が見えて来た。外壁が高く堅そうで端から端まで大分ある。中はよく見えないが喧騒がここまで聞こえてくる。外壁の中央にあった門に近づいていく。


 初めての街にオラ、ワクワクしてきた。


 サエ レベル14

 取得スキル

 魔系 幻惑魔法 マスター ★★★使用 

 対象が周囲の認識から変わる魔法。

 魔系 水魔法 マスター ★★★使用

 水を創り、操る魔法。

 体系 魔力自然回復 ★使用

 魔力を微回復し続ける。

 体系 状態異常耐性 ★使用

 状態異常に懸かりにくくなる。

 スマホ系 バイブ機能 ★使用

 体に触れている物に振動を与える。


 ▲▲▲ 蛇足


 サエ「金のクワガタか、こっちの世界も面白い昆虫がいるね」

 魔王「あ、サエ!気をつけないと」

 サエ「うん何?……痛!」

 魔王「足で刺してくるよ」

 サエ「遅いよ!もう刺されて手が血まみれだよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ