63話 女王
俺の目の前には、煌びやかな白いドレスに身を包んだ少女がいた。
昨日の貧乏くさい麻の服みたいなのは何だったんだよ!騙したのか!と言いたくなる。
が、昨日、ただの少女と思い色々無礼な振る舞いをしたのは事実。
やっぱり有罪だよな?せめて軽い刑だといいな。
俺が捕まると思ってビクビクしていると、女王が口を開いた。
「昨日は助かった。礼を言う。だが、守護獣に会わせる事は出来ない!」
「何でですか?許可は取りました!」
女王の言葉にナルンが抗議する。
「確かに許可は出したが、明日守護獣は出産する。だから、出産が終わるまでは誰も守護獣には会えぬ」
「「「「出産!」」」」
俺達は驚く、守護獣が出産って……
何もこのタイミングに……
ヤムはそんなに驚いて無い様だけど。
「そこで、冒険者ギルドにも依頼を出したが、首都の防衛をしてほしい」
守護獣は出産するのに体力などを大分消耗して、その間は守護の力が使えないそうだ。
なので、首都を自分達で魔物から守る必要がある。
「魔物除けの魔法具は使えないんですか?」
「あれは、出産に影響を与えるのじゃ、それに量も首都全体もないし、時間も長くはもたん」
魔法具は守護獣に影響を与え、体が生長している個体には軽微だが、胎児などは強く影響を受けるようだ。
「本来はつがいが守護を代わるのじゃが、色々あって今はおらんのじゃ」
その代わりを俺達にやれと、どうしようかな?
「ちなみにサエ、セア、ラズはすでに依頼を受けたことになっとる」
「「「な?」」」
「何で勝手に!」
「先にサエ様の許可を取るのが、当たり前じゃないですか!」
「そうよ!明日は私がデートする番で……」
いや、ラズは何か違う。
「お主達の力は強大じゃ、なので力を貸してほしい。報酬は金と今回の出産が終われば守護獣に優先的に会わせよう、それと、特別な品物を渡そう。勝手に依頼を受けたのは、すまんかったがお主達なら受けてくれると思ったんじゃ」
はあー、まあしょうがないか。
「分かった、受けます」
「サエ様?」
「サエ?」
「ただし、明日だけですし、首都には被害は出ないようにしますが、周辺は滅茶苦茶になるかもしれません」
もぐらや風神を使った後は非道いからな。
「う……うむ、分かった」
「セアとラズもいい?」
「サエ様の決めた事なら」
「私のデート……」
うん、デートなぞ知らん。
「では、サエ達は南門を頼む」
「北門は?」
「安心せよ、兵士達が守ってくれる」
兵士か……
まあ、兵士の規模も実力も分からないけど、俺達の戦いを見た女王が平気だと思うなら平気だろう。
「じゃあ、明日は南門へ行けば?」
「そうじゃな、他にも冒険者がいるかもしれんが頼む」
他の冒険者か……そういえば道切は来るのかな?
まあ、なるべく他の冒険者が死なないように立ち回るか。
今日は謁見の時間が限られているのでこれで終わりとなった。
帰りも兵士に案内されて城を出る。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲
そうして俺達は帰ろうとしたが、ちょっと気になるお店を見つけたので先にナルンを帰す。
ナルンは「私も一緒に」と言っていたが、ウトを理由に帰ってもらった。
ここにナルンが入るのは、危険すぎる!死ぬぞ!
相変わらず見た目は不気味な館だ。
俺達はお店に向かった……
【薬屋 魔女の泡】へ




