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61話 告白

 ──────目が覚めたら、目の前にセアの顔があった。

 は?なんで?


「大丈夫ですか?サエ様」


 俺の顔を心配そうに見るセア、近い!近いから!

 俺が顔を逸らすとやっと自分の顔の位置に気付いたようだ。

 顔が耳まで真っ赤になって、急いで離れる。


「あなた達キスまでしておいて、今さらじゃないの?」


 ラズはそう言うが、それはそれ、これはこれだ。

 周囲を見回すとここは宿の一室で、俺達の部屋か。

 どうやらここまで運ばれたみたいだな。


「じゃあ、私が代わりにサエ様と……」


 そう言って抱きついて来るナルン。

 ナルン?……あ!


「ナルン!お腹はもう平気?」


「はい、サエ様のおかげでこの通りです」


 ナルンがお腹を見せて、俺の手を取って当てる。

 うん、穴も塞がって綺麗なお腹だ。


「どうですか?サエ様、綺麗に治ってますか?お腹以外も体中触って────」

「そこまでです!」


 ヒュン!

 グサッ!


 俺とナルンの間に氷の剣が飛んで来て、壁に突き刺さる。


「セアさん、違いますよ。ただ、サエ様に触って確かめて欲しくて。……色々と」


 ナルンが火にガソリンをぶちまける発言をする。


「ナルンさん?」


 ほら、セアが笑顔でもの凄い暗黒オーラ出してる!

 両手に炎と氷の剣を装備してますよ?


「サエ、私ちょっと買い忘れた物があるから、ちょっと席を外すわ……お大事に」


 パタン


 ラズがさっさと退出した。

 俺も──────と思ったが、ナルンが俺の手を握り助けて欲しいと目が訴えていた。

 あれ?逃亡不可?



 ───────────しばらく経ってセアが夕飯を作る為に外へ出て鍵を使って館へと帰った。

 ラズもとっくに館へ帰ったらしい。

 ヤムは、俺が倒れた時に散々泣いて、泣き疲れたみたいで宿に着いて、すぐに館へ帰り寝てしまったらしい。

 というわけで今は宿の部屋にナルンと2人きりだ。

 ナルンから俺に大事な話があるそうだ。


「まずはサエ様ありがとうございました。私の事、それに皆の事も助けてくれて」


 ナルンが改めて俺にお礼を言う。


「いや、気にしないでいいけど、そういえばウトは?」


「ウトは……私達の部屋で寝てますよ?」


 なんで、疑問形?

 ウトに何が?


「それで、サエ様、明日は城にいる守護獣に会いに行く予定ですよね?」


 流した!ウトの件を流した!

 まあ、確かに明日行く予定だけど、守護獣は城にいるのか。


「うん、行く予定だけど?」


「私、サエ様の為に入城して守護獣に会う許可を頂きました。これが許可証です」


 そう言って、手の中に収まるぐらいの札を見せてくる。


「これがあると、全員で城に入れるの?」


「定員は許可証を持つ1人に対して同行は4人までです」


「俺、セア、ラズ、ヤムで4人か、平気だな。ありがとう」


 お礼を言って、許可証を受け取ろうと手を伸ばす。

 しかし、ナルンはその手を避ける。

 なんで?


「私も行きます!そもそも許可証を取ったのは私です!」


「いいけど、道切は?」


「平気です。多分」


 多分?いいのか多分で?


「それに、サエ様となるべく一緒にいたいです」


 真剣に俺を見つめるナルン。


「俺は────」


 いきなり俺の言葉を遮って、キスをするナルン。


「私はサエ様が好きです。愛してます。一番じゃなくてもいいです。ただ側にいられればそれでいいです。だから、サエ様のパーティーに入れて下さい」


 ナルンは俺の目を見て、一生懸命に告白した。でも、


「ゴメン、俺はまだ弱いから……ナルンを守れない」


「確かに私は皆より弱くて、サエ様に守られないと生きれないかもしれません。ですが、何でもします。何でもしますから」


「……ゴメン」


「私に魅力がないですか?私が醜いからですか?」


「ナルンは綺麗で可愛い女の子だよ。醜い事なんてない」


「じゃあ────」


「でも、また今日みたいに守れないのは嫌なんだ」


「要りません!私は死んでもいいです!だから────」


 パシッ


 ナルンの頬を叩く。

 死んでもいい?

 ふざけるな!


「じゃあ俺は死ぬために治したのか?俺はそんな事の為に治した覚えはないぞ」


 ナルンが呆けた顔で俺を見る。


「それに、今は無理でも、強くなれば……守られないようになればいい」


 俺が言うと、ナルンは顔を輝かせて言った。


「私頑張ります。頑張ってサエ様を守れるほど強くなります!」


 そう言ってナルンは勢いよく部屋を出て行った。


「ずるいね、パーティーに入れるって言わないんだ」


 訊かなかったから言わなかっただけだ。それに、強くなるまで俺が生きてると限らない。


「それは、寿命が減ったから?」


 さあ?どうだかね?

 ところでどれくらい減ったんだ?俺の寿命は?魔王。


「やっぱり気付いてたね、大体10年くらいかな」


 そうか……


 あっ!許可証!



 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 その後、館で夕飯を食べてから風呂に入り、部屋に戻って考えていると、扉からノックがしたので入室を許可する。


 部屋に入ってきたのはラズだった。自然にベッドの上、俺の横に座る。


「何かあった?」


 ラズがいきなり訊いてくる。

 俺、顔に出てたかな?


「なにも────」


 いきなりキスする。


「これは嘘ね」


 いや、キスで判るか!


「これは罰ゲームね」


 え?

 ラズが笑顔で迫って来る。

 逃げようとした瞬間にラズに抱きつかれる。

 いやーーーー!!



「うん、満足」

 ラズは大変ご満悦なようだ。

 顔中にキスとか……


「次の罰ゲームは腕よ」


 勘弁してください。


「で、何を悩んでいたの?」


「……」


「言わないと……」


「待って待って」


「じゃあ言って」


「ラズは俺の為に死ねる?」


「嫌よ」


 え?即答!


「俺、嫌われてる?」


「好きよ。婚約者じゃなくてもサエが好き、愛してるわ」


 ……そうストレートに言われると照れるな。


「じゃあ何で」


「好きだからよ、好きだから一緒にいたいし、むしろサエの為に“生きる”わ」


「そう……だよな。一緒にいたいよな」


「サエ?」


「ありがとうラズ、好きだよ」


 仲間として、やっぱりラズは大好きだな。


「!─────」


「ラズ?」


 ラズが顔中真っ赤になってる?


「今日は帰るわサエおやすみなさい」


 ラズは早口で言うと、部屋を飛び出した。あれは、反則って聞こえたような?

 まあいいか、明日はナルンも来るよな?どんな顔して会えば……


 そして、今日が終わる。


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