59話 雨の後
「忌々しい奴め、今回は引くが、次に会ったらワシの実験材料にしてくれる」
そう言って、青仮面が杖で地面を叩くと、青仮面の体が徐々に地面に吸い込まれていく。
黄仮面と同じ逃げる魔法か!
させるか!
俺は『風刃』を三重に発動しようとして、失敗する。
「サエ、MPがもう『風刃』一回分しかないよ」
魔王が俺に魔法が失敗した原因を念話で教えてくれる。
『風刃』一発では、青仮面の見えない壁を突破出来ない。だが、これならどうだ────『風突』。
『風突』は『風刃』のように斬るのが目的ではなく、威力を一点に注ぎ込んで貫通力を重視した魔法だ。
俺の視界に映る青仮面はすでに後は頭だけの状態だった。
間に合え!
余裕タップリの青仮面が消える直前に『風突』が当たる!
「ギャアアアア──」
悲鳴と共に青仮面が消えた。
手応えは在ったが、死んだとは思えなかった。
そして、セア達を見ると────
▲▲▲▲▲▲▲▲▲
◆セア視点
私とラズはサエ様にあいつ、老人と戦って頂く為に、人形の相手を申し出ました。
サエ様はあの老人に強い怒りを持ったようでした。
さて、老人の相手はサエ様にお任せします。サエ様が負けるはずは無いのですが、なるべく速くに目の前の醜い人形を倒して、早めにサエ様のサポートに向かいます。
人形に私はいつも通りにまずは氷の剣を投げつけて刺し貫きます。
人形の顔の部分に穴が空きました。が、すぐに周りの肉が集まって修復されてしまいます。
効果はいまいちですね。
ならばと炎の剣を投げつけて串刺しにして焼いていきます。
人形の体の肉があちこちに動き、剣を取り出しますが、焼き落ちだ場所もあり、ダメージはありそうです。
これなら、何とかなりそうです。
私は、炎の剣で次々に刺していきました。
途中で、ナルンの魔法とウトの弓が突き刺さっていき、徐々に人形は弱っているようです。
動きも悪くなって来ました。
チラッとラズが相手しているもう一体の人形を見ると、ラズは圧倒的な剣技で、ヤムは鋭い爪で徐々に人形の肉を削いでいきます。
2人共、危なげ無く戦っていますね……
そろそろ人形の相手が終わりそうになったときに、空から黒い雨が私と人形の間に一滴降りました。
雨は地面を掘った?──いや、喰らっています。
空を見上げると広場全体に雲が広がっていて!
それを確認した瞬間、雨が大量に降って来たので、さすがにこれは避けられないと思い、自分の頭上に氷の壁を作ろうとしたその時──────
空に雨を防ぐ、広場を覆うサイズの風の壁が頭上に展開されました。
さすがはサエ様です。凄い魔法、規模も魔力も桁違いです。
ですが、雨はなおも風の壁を喰らって進もうとします。
風の壁はすぐに強化され、雨にはビクともしなくなりました。
ただ、強化される寸前に雨が一部を喰い破って降って来ていました。落下地点にはヤムが!ヤムもラズも雨に気付いてない!
この場所からでは私は何もできない!
「ヤム!」
私はヤムが気付いてくれるように祈り叫びました。
ですが、最後までヤムもラズも気付かないで、ヤムに雨が当たる瞬間!
────ナルンがヤムを突き飛ばして代わりに……
私はもう怒りで、目の前の人形に一切の手加減が出来なくなりました。
一刻も早く、ナルンの元へ行かなくては……
炎の剣を人形と同じサイズで作り、人形に突き刺します。
刺さった剣は全て人形へ移動して、人形を内側から燃やし、火柱が出来ました。
人形の最後を見ることもせず、私は急いでナルンさんに近寄ります。
側では、ウトさんが泣いていました。
まさか──────
「セア、ナルンさんは?」
同じようにラズとヤムも人形を倒したのでしょう、ラズが私に近付いてきて容態を訊きます。
見ると、やはり人形は細切れになっていました。
ですが、私も動揺して言葉が出ません。
ナルンさん?
ナルンさんの腹部には穴が……




