間話1 セア
▲▲▲▲▲▲▲▲
私、セアは魔王様に拾われた。
魔王様が散歩中に拾われた子供、それが私だ。私はセアと名付けられ、魔王様や皆に育てられた。
私は魔王様に拾われた恩を返したくて、メイドとして働く事にした。
魔王様は「セアの本当に仕えたい人が出来たら、仕えなさい」と言ったが、私が「魔王様以外にはない」と言ったら、魔王様は困ったなと笑った。
私はメイドと同時に戦いも習った。
私には火と水の魔法の才能、それに剣が向いていると魔王様の仲間が言った。
私は嬉しくなって、言った人に師事した。
魔王様も「あれは、あーやって、こうだよ」と、教えてくれるのだが、高度過ぎて分からない。
「魔王のは適当すぎ!」と師が言っていたが。
そんな日々が続き、私が15になると、魔王様の元に手紙が届き、皆が手紙の中を見て、憤慨していた。
「あの野郎、ちょっと抗議に言ってくる」
仲間達はそう言うと私達に留守を任した。ほとんどの仲間は出発し、この場所にいるのは魔王様と私、あと2人の仲間と匿っている住民達。
仲間達が旅立ち、数日後。
いきなり、勇者を名乗る12人の人間が襲って来た、住民達を2人の仲間が逃がしている間に魔王様と私が戦い、時間を稼ぐ。
魔王様が足止めの魔法を使い、私が魔王様をサポートする。しばらく戦っていたが、激しい戦いで致命的ではないものの軽くない傷を沢山作る。
1人の勇者が私に黒い包帯を投げたので私が斬りつける。斬れない!?いきなり黒い包帯が蛇のように剣を伝い、右腕に巻き付き激痛が襲う。たまらず、私はうずくまる。
「ククク……勇者の『封印』の魔法が斬れるか!どうだ?その包帯は気に入ったか?」
勇者が私を見て、醜い顔で笑った。
12人の勇者が皆、私を標的にして襲いかかった。
グサッ!
バキッ!
ガンッ!
魔王様が私を庇い攻撃を受けた。剣や拳など色々な攻撃があり、ボロボロだ。私が受けたら確実に死んだだろう。
「何で……」
「セアは我の娘だしね。親は子を守るものでしょ?それに我は不死だから攻撃されても死なないよ。身体も魂もね。」
死なないだけで、痛みは感じるはずだ。体中が穴だらけに血塗れで、骨もあちこち折れているのだろう。動きがぎこちない。
魔王様はパチンと指を鳴らした。私のすぐ近くに棺が現れ、私をそこに入れる。
「少し待っていてね。今、それを取ってあげる」
魔王様が黒い包帯に触れると、今度は魔王様の腕に巻き付く。今まで、巻き付いていた私の腕は何かで刺されたように傷だらけの血塗れだった。
「バカじゃねえの、俺の『封印』に自分から来るなんて。俺が『封印』を付加した物は、壊れないぞ!それに黒い包帯は噛みつきながら全身に周り、最後は魔力を使えないようにするぜ」
魔王様は聞いていないのか、私に回復魔法をかけ、勇者達に背を向けている。
あれは!勇者達の後ろにその人が現れる。魔王様に助けが!
だが、気楽に近くにいた勇者に話しかけ、こちらを見て笑った。
「まだ、倒せないのか?」
えっ?なんで?魔王様の仲間じゃ?
魔王様は背後の人物に気づいていない。
「セア、しばらくお別れだ。またすぐに逢えるよ。きっとね」
魔王様が魔法を使う。
違う、魔王様、後ろにあの人が……
声には出ない。
そして、私の意識は無くなった。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲
目が覚めると、目の前に魔王様がいた。(正確には魔王様の体を持ったサエ様だったが)私は感激のあまり抱きついてしまった。
よく視れば、魔王様より若く、私と同じ位の歳の少年だった。魔王様の少年版だ、カワイイ!!
スマホに魔王様の魂が在り、鳥の姿でしゃべっている。これもカワイイなぁ。
魔王様に事情を聞く。殺されたとサエ様は言っていたが、恨みとかはないようだ。それにしても、魔王様とサエ様は仲がいいようで、親友みたいに話している。
魔王様は魂の状態で包帯が緩んだときに自分の体を一部使い、スマホに創り換え、包帯の破壊が難しいので、包帯ごと巻き込んでサエ様の体を創った。
サエ様の体には、勇者の黒い包帯が混じっている。だから、少年の体らしい。だが、包帯はれべるあっぷ?で解けていくようだ。
魔王様にはあの人の事は言っていない。私の勘違いかもしれないし、もう寿命で生きていないだろう。
サエ様は旅して、色々な場所へ行くようだ。魔王様も付いていくらしいので、私も同行を願い出る。
とりあえず、サエ様に仕えよう。魔王様の体を持つ、この人に。
次は守れるように。
後悔をしないように。
部屋を出て森に出発。ここは千年前と変わってない。サエ様を案内する。
普通の人では、今日中に森は抜け出せないだろう。サエ様に今後の予定を話す。
森の魔物は変わっておらず、数え切れない魔物の襲来。サエ様は戦いの様子が見えていないようだった。
私が弱らせた魔物をトドメだけ刺していた。最初ならこの程度だろう、魔王様の体なので私は過度に期待していたようだ。少し、期待外れだった。
あれでは、自分の身も守れない。
ある程度殲滅したので、お昼にする。サエ様と魔王様に褒められて私は嬉しかった。サエ様が弱ければ、私が守ればいいか。この時の私は自分が愚かな考えをしているとは想像もしていなかった。
食べ終えて、サエ様がスマホに何かしているようだった。片付けを終えるとサエ様が1人で戦ってみると言って、走って行ってしまった。
この森の魔物は質も量も多いのに、サエ様では、とても無理だ!また守れないのは嫌だ!私はサエ様を追いかける。
すぐにサエ様に距離を離される。アレ?こんなに脚力に差があったか?しかも、森で!森での走りには自信あったのだが、やがてサエ様の姿が見えなくなる。
しばらくは激しい戦闘音と血のにおい、獣の叫び声などが聞こえ、サエ様がいる場所はすぐに分かったが、そこに行くのに少しためらった。
もし、また守れなかったら?もうすでにやられてサエ様は……
私は意を決して踏み込むと、そこには……
サエ様の周りに魔物の死体、すべて急所に刺し傷が開いていた。木の上から数体の死体が落ちてくる。
サエ様が魔法を使った。周りに無数の風の刃が飛び回り、魔物を木を切り裂いていく。
私の元にも何本か刃が来るが、避けて行く。凄い魔法だ、すべての刃を操っている。
魔法が終わり、範囲外にいた魔物が一斉に襲いかかった。サエ様は持っていたナイフを地面に刺す。あのナイフは見覚えがあった。
魔王様のお気に入りで『もぐら』という魔法具で土を操り、敵に土を当てる嫌がらせをしているのを見たことがある。間違っても戦闘に使うものではない。
だが、刺した瞬間、地面が盛り上がり魔物に凄い速度で進んで行く。
土から何体もの龍が現れて、魔物を次々に呑み込んでいく。
あのナイフには龍を作る力はない。作るには途方もない魔力と想像力が必要だろう。
私の心配は杞憂だったようだ。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲
森を出てすぐに争いをしている一団があった。
近づくと男達とフェアリーが争っているようだ。
男達とフェアリーの会話を聞いていると男達が偶然フェアリーを捕まえて、それを仲間が助けに来たらしい。
それにしてもフェアリーも簡単に捕まらないし、魔法を使って、すぐ逃げるものだが?
と、1人の男が捕らえたフェアリーを手に姿を現す。
─────────瞬間、私の頭は怒りに染まった。
フェアリーを捕らえていた鳥かご、あれに見覚えはないが、この感じには憶えがあった。
……『封印』魔法、アレは『封印』だ。どんな『封印』を使っているかは分からないが、中にいるフェアリーの衰弱を見れば、ろくでもないものだろう。
私の中でカゴに捕まったフェアリーと黒い包帯に巻かれていく魔王様が重なった。助けなきゃ!
私が男に近づく前にサエ様が魔法を使ってカゴを切断した。私でも斬れない『封印』をサエ様は一瞬で壊した。
……サエ様が鳥かごを壊した。
魔王様でさえ、壊す事の出来ない『封印』を容易く。
私は嬉しかった。前に魔王様が言っていた、私の本当に仕えたい人が見つかった!
フェアリーがカゴから出てくる。
男がサエ様に剣を向けた。……誰に剣を向けた?
瞬間、私は男の喉に剣を向けた。
男は下がりながら、他の男達に指示を出した。
サエ様は男達を殺さずと言い、優し過ぎではと思ったが、サエ様の指示なので従う。ただし、サエ様に剣を向けた男は少し丁寧に痛めつける!ガキなんて誰に向かって──────────。
サエ様が相手する10人を決めたようだ。私はサエ様の邪魔にならないように位置調整しながら、10人と戦う。
9人はぶっ飛ばして、氷で手足を拘束、最後の1人は火も使い、火傷と凍りつかせて凍傷させた。もう、何もしないでも動けないだろうが氷で頭以外を固める。
サエ様を侮辱した報いだ!
▲▲▲ 蛇足
セア幼きある日。
魔王「セア、何読んでるの?」
セア「師匠が魔法に読書が良いってくれた本だよ」
魔王「ちょっとその本貸してくれる?」
セア「いいよ、どうぞ」
魔王「ちょっと本の事で殺……話し合って来るから本貸しておいてね」
セア「うん、分かったー!」
魔王「『メイドと秘密の関係』って何読ませてるのアイツは!」




