47話 国境
王都を出て西に向かう、以前に馬車を壊した場所まで来たが、馬車の荷台等もなくなっていた。
もう来て、回収したのだろうか?
ここから西の国境の砦までは2〜3時間で着くらしい。
国境の砦はギルドカードとお金があれば通れると聞いた。
お金は国が違っても使えて、魔王が説明してくれたが、よくわからなかった。
ギルドカードが身分証代わりで、ランクによって通行税が違うそうだ。
国境の砦は守護獣が守っているので安全だが、他の国境は魔物が多く出現するので、通行が困難だ。
俺達なら進めるかもしれないが、道なき道を通ってもただ迷うだけなので、なるべく街道を通る。
それに、魔物の出現頻度が桁違いらしい。
街道では散発的に魔物が現れるので、休みながら行けるが、街道を外れると常に魔物に襲われて大変だそうだ。
「そういえば、ここら辺は魔物が少ないよな?」
さっきから出て来る魔物は、多くても10匹までで森等と比べて全然少ない。
「普通の冒険者なら、これでも多い方なのよ」
ラズの言うところによると、普通は戦いを避けて、お金を払いあって守護獣を連れて行くか、粗悪品の安い魔物除けの魔法具を使って戦闘を一回か二回に抑えて、街から街を移動するそうだ。
俺達みたいにわざわざ戦いながら進むのはランクの高い冒険者か腕に自信のある強者、街を追い出された犯罪者とかだとか。
そんな雑談や魔物と戦闘をしていたら、すぐに目的の国境の砦にたどり着いた。
砦は外壁が高く、大型の魔物の襲撃でも耐えられるだろう。
砦の入口には、見慣れない兵士がいた。兵士の鎧が赤い、しかもこの砦の兵士の鎧全部が。
これから入る国の特徴?とりあえず中に入らないと。
「男女に別れて並んでください」
砦に近寄ると、兵士が列の整理をしていた。
何で男女別?
気になったので、砦に入る時に兵士に訊いてみる。
「ボディチェックが有るんですよ。だから、男性と女性に別れて別室で行います」
「ボディチェックですか?」
「以前に砦を壊そうと魔法具を持ち込んだ人がいて、大変な騒ぎになってそれ以来荷物検査とボディチェックが必須になりました」
「物騒な話ですね」
「ええ、もう100年以上前の話なので、古い慣習みたいなものですが」
「ずいぶん古い話ですね」
「まあ、魔女伝説の一つですからね」
魔女伝説……
「よくある噂話ですよ。国境の砦を越えるのが面倒で砦ごと壊そうとしたとか」
いや、砦を壊す方が面倒だろ!
「言い寄って来た男を100人以上魔法で火だるまにしたとか」
火だるまって……
「面白そうだからという理由で城に巨大なタライを落として半壊させたり」
あの人ならやるかも……
「そんな魔女がどこかでお店をやっている。というのが今の噂話ですね」
あの店かな?
兵士と別れた後、俺達も男女に別れてボディチェックを受ける。
ちなみに、獣……ヤムはやらなくてもいいそうだ。なので出口に直行だ。
荷物検査とボディチェックでは一定以上の魔力の物は持ち込めないようだ。
虫眼鏡のようなもので魔力を調べるようだ。人の魔力はどうなるんだろう?
ということは、当然スマホは……あれ?検査OK?何で?
「いや、我は魔力抑えたりできるし」
さすが魔王様だな。
紙を渡されて、兵士と同行して砦の通路を通り抜け出口へ。
紙は魔力を検知して、魔法を使うと紙が切れて、同行している兵士に捕まるらしい。
出口では、皆が待っていた。
兵士に紙を渡して別れる。
「じゃあ、行こう」
俺の言葉に皆頷く。
いざ、次の国へ。
米を手に入れるには、西にこの国を合わせて2国越えないと行けない。
この国の首都は北だが、米を手に入れる事を優先するならこのまま西だ。
このまま急ぐか色々面白い物を探して見て回るか悩む。
と、突然火の玉が目の前を通り過ぎた。
奇襲?そう思って火の玉が来た方向を見ると、小さい林のような場所から飛んで来たようだ。
林では、戦闘音が聞こえてくる。
皆を見ると視線で訊いてくる。
「行くのか?」と、当然とばかりに俺は皆に向かって頷く。
どうやら、この国にも面白い事がありそうだ。




