28話 道中
翌朝、村に行くには、東に1日の距離とあったので、今回は歩きで行くことにした。
道中にバジリスクなどの魔物が出てくるかもしれないし、馬では、魔物に追いつかれてしまう事もあるらしいので。
バジリスクは、蛇型の魔物で毒を持ち、その瞳には相手を石化させる能力を持つ、というのがラズから聞いた情報だ。
決して、敵対する者を自滅させる目を持つ忍者ではない。
俺達は王都から、しばらく村へ向かい歩いていた。
村までは、もう半分の距離で着くという所で……
ドーン!
何か重い物が転倒するような音が道の先から聞こえた。
皆で音の聞こえた場所へ急ぐ。
到着したその場には、馬車が壊れてボロボロになっていた。
「馬がやられてる。これは、毒ね!バジリスクかもしれないわ」
ラズが馬の死体を見て、そう答える。
「乗っていた人がいません、どこかに逃げたのでしょう」
セアがそう言ったので、マップ機能を使って見てみる。
いた!多分これだ!
「200m先の林の中に多分3人、魔物5匹に追われてる」
俺のマップ機能では相手が何か正確には分からないし、周りの地形も分からない。
「ボクが先に行って、魔物を足止めするよ」
俺達の中では、ヤムが一番走るのが速い。
だが、今の所、戦闘で一番弱いのもヤムだと思う。
敵が分からないのに、ヤムだけで平気だろうか?という考えが浮かぶ。
いや、ヤムも俺達の仲間だ!信じよう。
「分かったヤム、ここから真っ直ぐだ!足止めを頼んだ!」
「うん、任せて!」
そう言って、ヤムはあっという間に先に行った。
俺達が着いたとき、ヤムは魔物5匹を相手に戦っていた。
ヤムから離れたところには、男が3人、ヤムと魔物の戦いを見ていた。
魔物は2mくらいの紫色の蛇だった。あれが、バジリスクだろう。
「ヤム、私が一体倒します」
「私も一体やるわ」
セアとラズが、バジリスクをそれぞれ相手にする。
「じゃあ、俺も『風刃』!」
俺の攻撃が2体のバジリスクをそれぞれ真っ二つに両断する。
あとは、セア達で倒せるだろう。
セアはバジリスクが紫色の液体を飛ばしてきたが、炎の剣を投げつけて液体を燃やし、そのままの勢いでバジリスクにも剣が突き刺さって燃えた。
ラズはバジリスクが攻撃する前に終わっていた。バジリスクがラズの速さについて行けてない、あっという間にバジリスクの体が5分割になった。
あの速さなら、バジリスクの視界では、ラズを捉えられなかっただろう。
ヤムはバジリスクの頭を噛み砕いた!
毒とか平気なのか?バジリスクは食べられる物じゃないと思うけど。
食べたいとも思わないけどな。
「ヤム、そんな事して平気なのか?」
「あれは駄目だよ、不味い」
いや、味を訊いている訳ではないが。
「守護獣には、魔物の毒は効かないよ」
魔王が代わりに説明する。
「じゃあ、石化もしないのか?」
「それが、魔物に因る攻撃での状態異常なら、守護獣には効かないよ。もっとも、サエ達が相手したバジリスクは小さいから、石化の能力は無いけどね」
守護獣の状態異常無効は魔物専用みたいだ、人間の魔法では状態異常になるようだ。
バジリスクは小さい個体は石化能力が無く、頭に王冠のような痣がある大きな個体は石化能力を持っているらしい。
とりあえず、倒したバジリスクをストレージに収納する。
セアの倒したバジリスクは炭になっていたので、放置で。
逃げていた3人の方へ皆で行く。
「助かりました」
「もうだめかと思った」
「お嬢さん達可愛いね」
助かった3人は男で、セアとラズにお礼を言った。
おい待て、3人目!
3人目だけお礼じゃないぞ!
今、ナンパする場面じゃないだろ!しかも、俺の目の前で!
「それより、おれ達の村に魔物が襲って来て、助けて下さい!」
「お願いします」
「お嬢さん達、一緒に行かない?」
村が魔物に襲われ、王都に救助を求めに来たようだ。
その途中で魔物に襲われて逃げていたようだ。村を助けてほしいと必死で俺達に頭を下げる。3人目以外が。
「最初から、俺達はギルドの依頼で村に向かっている所だが」
俺がそう言うと、安心したように2人の表情が変わった。
「そうか!じゃあ村を頼む!」
「良かった」
「この先に静かな所が……ヘブッ!」
急いでいるようで、それだけ言うと、また王都へ向かって3人走って行った。
1人、殴られて無理矢理連れて行ったが……
魔物は平気なのかな?
村は王都からはもう半分の距離だ、少し急ぐか。
「村が襲われてるみたいだから、少し急ぐよ」
俺の言葉に皆が頷く、よし、急ごう。
▲▲▲ 蛇足
馬車が襲われた時
村人1「くそっ馬車が!」
村人2「バジリスクだ!」
村人3「落ち着け!オレが囮になるからその間に王都へ!」
村人1&2「分かった」
村人3「頼んだぞ!」
村人1&2(あいつ、女がいないとカッコいいのになぁ……)




