3話 メイド セア
現在、魔王の娘であるセアは恥ずかしくなり、俯いている。可愛いな。
先ほど、魔王と間違って俺に抱きついたのが、恥ずかしかったらしい。
抱きついたのと間違ったので二重に。
まあ、魔王の体だから間違いじゃないけどな。
「とりあえず、セア。この少年が我の体の持ち主でサエだよ」
魔王がセアに俺を紹介する。無難に挨拶するか。
「魔王に殺され、部屋に監禁されている、サエです。よろしく」
「なっ!?」
「えっ!?」
魔王が焦り、セアが驚く。
「それは「魔王様?」
「はい!」
魔王がセアに追い詰められてる?
魔王は娘に弱いのか?
「人を殺したんですか?」
「はい、殺りました!」
認めた。人殺しを認めた。殺人罪で起訴だ。
「それで、どうして魔王様の体と魂が別々に?」
「それは────」
魔王が今までの出来事を話す。どうでもいいけど、俺、放置だな、空気と化してる。
「事情は分かりました。けど、殺す前に事情を話したり、魂を少しずつコピーして創ったり、魔王様なら可能だったのでは?」
「コピーはできるけど、人形みたいになるんだよね〜。それに「あなたの魂が欲しいので、殺します」なんてつまらない事、言うわけないよ」
えっ?俺は死ぬ必要なかった?話しは聞かなかっただろうけど……
「せっかくサプライズで、直前まで会わなかったしね」
「そんなサプライズはいらん」
「はあ……大体分かりました。すいません、ウチの魔王様が」
丁寧に俺に頭を下げるセア、どこかの魔王も見習ってほしい。
「イヤイヤ、君は悪くないよ」
「そうそう、セアは眠ってたしね」
「お前は反省しろ」
「いや、だからしてるよ。最初の方にも言ったよ。「反省はしてる」って」
「でも、後悔はしていない、だろ?」
「うん、まあ結果的には最善ではなくて、最高だったと思うよ。我も君もね」
はあ……この魔王様の相手は疲れる。
「あの……よろしいでしょうか?」
魔王と話しているとおずおずとセアが口を挟む。
「いいけど、なんでそんな態度?」
「2人で楽しそうでしたので、邪魔になるかと」
イヤイヤ、楽しそう?ないわ、ほんと、ないわ。
「あらためて、自己紹介いたします。魔王様に育ててもらい、お仕えしているメイドでセアと申します」
丁寧な態度だ、どこかの魔王も───。
「それで、サエ様で呼び方はよろしかったでしょうか?」
「様は要らないけどね」
魔王が勝手に返事をする。おい、魔王、お前も様は要らないと思うぞ。
「それで、これからの事はどうなさるおつもりで?」
「とりあえず、この世界の色々を見てみたいかな」
やらなきゃならない事はないから、ぶらぶらこの世界を見ていこう。
「魔王様もよろしいでしょうか?」
「うん、サエに任せるよ。我にやりたいことも特に無いしね」
「勇者や魔王様の仲間はよろしいのですか?」
「もう、千年前の事だよ。皆、もういないんじゃないかな?」
少し魔王が寂しそうだ、やはり、知人がいない世界は寂しいのだろう。
「誰かみたいに、ボッチか」
訂正。コイツムカつく。
「では、サエ様、私を一緒に連れて行ってください」
「それは、魔王からも頼まれたし、いいよ」
むしろ、来てくださいと、頼みたいほどだ。
「断ったくせに」
ボソッと魔王がつぶやく。いつの話だよ、千年前か?
「では、サエ様、私の事はセアとお呼びください。誠心誠意お仕えします、よろしくお願いいたします」
サエはメイドのセアが仲間なった。
「セアさんは「セアとお呼びください」
「いや、でもセアさ「セアで」
「……分かった、セアはどうしてここに?」
「魔王様と共に勇者達と戦闘していたのですが、私が怪我をすると、一斉に全員で私を狙い、庇った魔王様が深手を負いつつ、私を魔法で棺に。この部屋に隠されました」
勇者、結構卑劣だな。怪我した所を総攻撃、まあ、作戦としては有りかな。
「うん、大体分かったよ。話してくれてありがとう」
「では、サエ様、出発いたしますがよろしいでしょうか?」
「いいけど、セアの準備はいいの?」
武具も何も装備してないけど?武器は持っていても装備しなきゃダメだよ、メイド様。
「はい、お気遣いありがとうございます。私はこのままで、平気です。」
「ほら、セアもこう言ってるし、行くよサエ!」
どうでもいいけど、魔王さっきからふらふら浮いて移動して、結構自由だな。
これで、俺がスマホ使いたい時は手の中にいるんだよな、やっぱり便利だ魔王様。
「じゃあ、今度こそ本当に出発!」
出発を宣言すると、セアが壁に近づいて、手をかざす。一瞬、光が部屋中を巡り、人が一人通れるぐらいの穴が出来た。
「では、行きましょう」
穴から外の光が差し込んで来た、いよいよ外だ。不安もあるが、それ以上にワクワクが強い。
では、いざ異世界の旅へ!!
▲▲▲ 蛇足
セア「本当にやりたい事ないんですか?」
魔王「強いて言えば盆栽かな」
サエ「渋っ!!魔王が盆栽って!」
魔王「嘘だけど」
サエ「嘘かよ!」
セア「ぼんさい?」