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24話 獅子

 城は外から見ると、某テーマパークの城のような造りだった。

 城の入り口に立っていた、見張りの兵士が5人ほどいて番をしているので、王都の門と同じように紙を見せる。

 案内を呼ぶので、少し待つように言われる。


 城の中は呼ばれたメイドさんが案内してくれた。

 メイドさんについては何も言わない。メイドさんに対してセアの目が厳しい。

 どうやら、メイドとしての作法をチェックしているようだ。

 案内されて小さな部屋の一室でメイドさんが「今用意していますので少し、お待ちください」と言って退室した。

 椅子に座ってお菓子を摘まんだり、皆と雑談して過ごした。

 その後、30分程待っているとメイドさんがノックして入って来た。


「大変お待たせ致しました。こちらへどうぞ」


 そう言って、メイドさんが部屋の前まで案内してくれる。


「こちらに王様代理がいらっしゃいます」


 王様代理?

 メイドさんが部屋をノックすると中から入って良いと言う声が聞こえた。

 メイドさんに促されて室内に入る。


「ふむ、貴殿らが、アミルスよりの使者だな?」


 ここは、執務室かな?

 周りは本だらけで、あまり広くない部屋に机が1つ置いてあり、その上には書類の束が沢山ある。

 机の前にある椅子の上に女性が座っている。

 てっきり、王様代理だというから男だと思った。


 王様代理は30代前半に見えた、美人だが目元が厳しい女性だった。

 青い髪を後頭部にまとめている。

 服は紺色のスーツに近いような服で、その上にはいかにも王族です、というような派手な刺繍のマントを羽織っている。

 マントがなければ、若い女社長みたいで格好良いのにな。


「はい、領主から届け物を依頼されました」


「そうか、ご苦労」


 俺はセアから卵を受け取り、王様代理に渡す。


「うむ、確かに。今は王が不在で私が代理をしているので、ギルドには私から完了を報告しよう」


 王様代理がギルドに連絡してくれるらしい。

 てっきり、完了証明を渡して終わりかと思ったが。


「ところで、そこの狼は守護獣ではないか?」


「はい、そうですよ」


 城に連れて来たらまずかったかな?


「その狼は首輪をしているが、従わせているのか?」


「サエ様は仲間だよ」


 王様代理の質問にヤムが答えた。


「そうですか、分かりました」


 ええー!何か俺とヤムで接する態度が違くない?


「白の守護獣様には、ぜひ会って頂きたい者がいます。その者に何か問題があれば解決してもらいたいのですが……」


「ボクはいいよ、けどサエ様と一緒にだよ」


 完全にヤムと話しているな、俺と対応が違うし。

 ヤムは俺も同行を条件に了承する。


「それは……果たして相手が良いと言いますか分かりません。とりあえずは会って頂きたい、その後にまたここにお越し下さい。では、またメイドに案内させましょう」


 その後、部屋を退室して、メイドさんに兵士が2人で番をしている大きく立派な扉に皆が案内される。


 メイドがノックしてから扉に話しかける。


「獅子様、白の守護獣様をお連れしました」


 しばらく待っていると、やがて扉から若い女性の声が聞こえた。


「白の守護獣だけ入れ」


 ヤムだけ入れと声の持ち主が言った。


「仲間と一緒じゃないとヤダ!」


 ヤムが声の持ち主に逆らう。


「ならば、同行者1人の入室を認めよう」


 部屋の中から聞こえた声に従い、ヤムと俺が代表して扉に入る。

 入る時にセアとラズに凄く心配されたが……


 部屋の中は白く広い空間だった。

 庭園のようだ、部屋の中に噴水とかある。


 部屋の奥には二匹の獅子がいた。

 一匹はたてがみが立派で大きさが3mはないと思うが大きかった。その獅子は身体中にひっかき傷が沢山あり、虫の息で今にも死にそうだ。


「白の守護獣が首輪をして、人間に飼われているのか、哀れだな!」


 もう一匹の獅子は鬣が無く、大きさもヤムと同じ位で、偉そうな子獅子だ。

 子獅子はヤムをバカにしているように言った。


「サエ様はボクの仲間だ!」


「ふん、白ならばあるいはと思ったが、人間のペットとは、もう貴様に用はない、出ていけ!」


 ヤムが言い返したが、すでに子獅子は聞いていない。

 だが、俺には訊きたい事があった。


「待て、その傷ついた守護獣はお前の仲間か?」


「誰が口を開けといった、人間!」


 俺が質問をすると、子獅子は不機嫌そうにそう言った。

 だが……


「いいから答えろ!」


「私の唯一の大事な親だ!それを傷つけたのは貴様ら人間だろ!」


 俺が引かないと分かったのだろう、子獅子は答えた。


「分かった」


 そう言って、俺は傷ついた獅子に向かう。


「寄るな!人間!殺すぞ!」


「五月蝿い、黙れ」


 俺は気にせずに、獅子に近寄る。


「それ以上寄るな!本当に殺すぞ!」


「勝手にしろ、だが俺は簡単に死なないぞ、魔王だからな」


「脆弱な人間ごときが、もういい死ね」


 子獅子が俺に噛み付いて来る。


「何だ?コレは!」


 子獅子が噛みついたのを俺は『風壁』で防ぐ。


「そこで黙って見てろ!」


 俺は傷ついた獅子に『診察』を使う。

 まだ、助かるな。


「させるか!人間に!」


 子獅子が俺の『風壁』を破って、俺の右腕に噛み付く。

 血がダラダラと流れて、千切れそうな痛みを右腕が訴えるが無視する。

 俺は噛まれていない左手を傷ついた獅子に当てた。

 回復魔法『リカバリー』を使う。


「サエ様になにすんだ!」


 ヤムがまだ噛み付いている子獅子に体当たりをする。

 子獅子はヤムの体当たりを食らって吹っ飛ぶ。


「大丈夫ヤムもう終わった……か……ら」


 ドサッ!


 そのまま俺の意識は無くなる。

 しまったなあ、血を流し過ぎたかな?


 『リカバリー』=回復魔法

         『リカバー』+『増血』で回復能力が高い。使用魔力が『リカバー』の10倍。


 ▲▲▲ 蛇足


 城、サエが獅子に会っている時。


 セア「サエ達、大丈夫でしょうか?」

 ラズ「ヤムもいるし、きっと平気よ」

 セア「もう5分も経ってる!」

 ラズ「まだ5分よ」

 セア「もう5分30秒も────」

 ラズ「サエ早く戻って来て!」

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