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23話 王都

 王都の前での戦闘は魔物勢が優勢だった。

 圧倒的に数が違う。

 三倍はいるな。

 魔物は人型でゴブリンとかオークだろう。見た目的に。

 魔物の中には、ボロボロだけど武器持ってる奴がいるな。


 俺達の四台の魔馬車は戦闘に巻き込まれないように、岩陰に王都から離れた位置に止まった。

 戦闘中だと、守護獣の力が効きにくいそうなので、ここで戦闘が終わるのを待つそうだ。


 このままだと、兵士達が負けるな。

 王都には、守護獣の力があるので、入りはしないとの話しだったが。

 まあ、魔物戦だし助けるか。

 俺達のパーティーを見ると、皆行く気満々だ。

 まあ、俺も行く気だったけどね……


「サエ様なら、きっと助けると思いまして」


 セア……まあね。


「ここで見捨てるサエじゃないでしょ?」

「サエ様、ボクも手伝う」


 セアもラズも剣を抜いていた。

 ヤムも元のサイズに戻っていた。


「じゃあ、ちょっと行きますか!」


 俺が皆にそう言って突撃する。


「え?ちょっとお前ら、今行けば死ぬぞ!」


 何か聞こえたが、気にしない。

 皆で魔物勢の中に突っ込んだ。

 やらないで後悔するより、殺って後悔しろって言うし。

 セアとラズが前衛。ヤムが遊撃。俺は『風刃』で魔物を減らしつつ皆のカバーをする。

 『風塵』は兵士が多いので、巻き込まれそうだし、もぐらは道がボコボコになる。

 あれ?ひょっとして俺の得意技は使えない?


 新技をそのうち考えようかな……

 なんて無駄な事を考えつつ、ヤムに飛びかかった魔物をドッグナイフを頭に投げて吹き飛ばした。


「オオオオオ!」


 魔物を倒していると、でかいオークが叫びながら現れた。

 普通のオークの倍はあり、筋肉とかが凄い。

 名付けるならエリートオーク。略してエリオク。

 エリオクの腕一振りで兵士達が紙のように吹き飛ばされる。


「こんなの今戦ってる魔物の中にいたっけ?」


「魔物は人を殺すと進化することがあるよ」


 俺が疑問を呟くと、魔王が答えた。

 俺が魔物を殺してレベルアップするように、魔物も人を殺してレベルアップするのか?

 ということは、死傷者がいるという事か。

 なるべく、死人が出ないように動いたんだけどな。


「セア、あのでかい奴を殺すから、周りの人避難させて」


「はい、分かりました」


 セアに頼み、エリオクの周りから人をどける。

 これくらい離れていれば多分平気かな?

 初めての魔法だから、加減が全然分からないけど。


 いつの間にかエリオクの周りにはエリオクを守るように魔物が集まっていた。

 ちょうどいい、いけ『風神』!


 ゴオオオオオ!


 グシャ!


 ビチャ!


 竜巻が終わると辺り一面が赤くなり、残りは飛び散った魔物の肉片しか残ていなかった。

 説明すると竜巻というミキサーが魔物を巻き込んで、上から血と肉片を撒き散らした。

 残ったのは、竜巻で広範囲に飛んだ魔物の血と肉片。

 文字通り、血の雨が降った。

 ……殺って後悔した。


「まさに、魔王の所業だね」


 魔王が楽しそうに話す。うん、流石に今回はやり過ぎだな。


 兵士達も引いてる。皆さん真っ赤ですよ。

 ちなみにセアとラズはどこにも一滴の血も着いていなかった。

 というか、セアがキラキラした目で俺を見てる?

 ヤムは自分の身体をブルリと震わすと元通り綺麗になった。

 俺は風の魔法で壁を作ったので平気だった。

 咄嗟でやったが名付けて『風壁』かな?

 なんていうか、ごめん。

 

「ウワアーー!」


 魔馬車の近くから悲鳴が!

 魔馬車には守護獣がいたから魔物は来ないはずだが?

 俺達は急いで、魔馬車が居る岩陰に向かう。



 そこでは、糸目が手に大きな爪を装備して守護獣をその爪で攻撃していた。

 守護獣が糸目の攻撃を受けて倒れる。

 凄い出血だ。急いで治療しないと命に関わるだろう。

 だが……


「なんで?」


 なんで糸目が手に爪を装備してる?

 なんで糸目が守護獣に攻撃する?

 皆が混乱している。


「サエ!早くアイツに攻撃しないと!」


 魔王に言われて見ると、糸目は2匹目に攻撃しようとしていた。

 これ以上やらせない!


「とりあえず、吹っ飛べ!」


 『風壁』を守護獣を攻撃しようとする糸目に放つ。

 糸目が守護獣に攻撃を加える手前で、急に後ろへ飛んだ。

 なっ?見えないはずの風を避けた!


「チッもう時間か、赤を殺った奴に興味があったんだがな」


 糸目はそう言うと足元から地面に沈んでいく。

 イヤイヤ、ちょっと待てよ!

 俺はもぐらを地面に刺した。

 土龍が糸目に襲いかかる。


 カンッ!


 土龍がだんだん地面に沈む糸目の顔を掠った。


「え?」

「チッ!」


 俺の声と糸目の舌打ちが重なる。

 そして、糸目は完全に地面に沈み消えた。

 マップ機能を使っても糸目の点は周囲から完全に消えていた。


「サエ様!今のは!」


「【仮面】の勇者……」


 セアとラズが言ったように、糸目の頭は【黄色の仮面】を被っていた。

 何?【仮面】は戦隊物なの?

 ひょっとして5人いる?


 とりあえず俺は倒れた守護獣に近寄り、『診察』を使って傷を診る。

 よし、まだ平気だ、助けられる!

 俺は回復魔法の『リカバー』を使い、癒やす。

 ただ、血がな……出来るかな?

 回復魔法で『増血』を使う。

 うん、上手くいった。 

 守護獣が回復してから、王都の門へと向かう。



 王都の門では、ヤムが注目されている。

 あっヤムのサイズ小さくなるように言うの忘れてた!


 門にいた兵士の1人がヤムに近づく、やっぱりこの大きさではまずいのか?


「白の守護獣様!生きていましたか!」


 え?白ってヤムの事?


 門の兵士の話しでは、狼は街道を守る神聖な獣で……ダメだ、長くて聞いていられない。

 要するに、王都では、狼は白の守護獣と呼ばれていて、とても偉い。……だと思う。


 魔馬車に乗っていた人達とは王都の門の前で別れて、俺達は領主に貰った紙を見せてすぐに通る。


「兵士が少ない気がしますけど?」


「精鋭は今は出ているので、王都に残った兵士は少ないのです。あと他の兵士は何でも黒い人が撒き散らした、魔物の血と肉片を片付けるとか」


 通る時に俺が訊くと、門の兵士が答えてくれた。

 俺のせいですね、ごめんなさい。



 門をくぐったらすぐに街があった。

 ゲームみたいな感じの城下町だ。

 門から城まで一直線に道が延びていた。


 しばらく歩いていたが、本当に視線がすごい。

 ヤムに。


「ボクこのままの姿がいい!」


 とヤムに言われて、王都では偉い守護獣だし平気かな?と魔法具の力を使わずにそのままのサイズできていたが、皆の視線とか拝んだりとか凄い。

 で、ヤムが首輪をしているので、俺への誤解の視線が痛い!

 王都の皆さん視線だけで、何も言わないのでかえって不気味だ。

 ヤムは首輪外したくないと言うし。

 とりあえず俺達は領主の依頼を優先して城を目指した。


 『風神』=風魔法

      竜巻の中に閉じ込め、風刃をたくさん発生させて切り刻む。竜巻は下から上に吹き上げるので、竜巻の上から切り刻んだものが出てくる。


 『風壁』=風魔法

      風で見えない壁を作る。自分の身長ぐらいで、固定する事も飛ばして使う事も出来る。『風刃』(壁ドンver)より威力がある。



 ▲▲▲ 蛇足


 王都、門で。


 兵士「何でも凄い風魔法だったらしい」

 サエ「へえ~」

 兵士「戦場に血の雨が降ったらしい」

 サエ「……」

 兵士「敵も味方も関係なく殺────」

 サエ「やってないよ!」

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