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21話 盗難?

 馬車の旅2日目の朝、皆で朝食を食べ終えたときに唐突に魔王が俺に言った。


「そういえば、サエ、昨日の夜中にいきなり人が入って来て、何かを探していったよ」


 はあ?何で?ということは、テントに夜中に人がいなかったのがバレてる?

 夜中のテントに侵入して、何かを探していたなんて嫌な予感しかしない。


 なるべく早めに外に出て、とりあえず様子見をしよう。

 俺は魔王に聞いた、昨日の夜中にあったことを皆に伝えた。


「せっかく建てた私達のテントに、サエ様の許しなく入るなんて、許せないですね!」


 セア、微妙に問題点が違ってるような……


「そうね、私とサエの愛の巣に……」


 ラズはアウトだ!何だ愛の巣って……

 セアから剣が飛んで行ったぞ!

 ラズが頭を逸らして避けた!

 壁に氷の剣刺さってますよ。


「残念、手元が滑りました」


「セア?確実に頭狙ったわよね?」


 互いに笑い合う、何か目に火花が……


「とりあえず皆で外の様子を見に行こう」


 俺はそう言って皆を館の外に連れ出した。

 外なら剣も飛ばないだろう。多分。


「何だ?」


 俺はつい口から疑問が出てしまった。

 俺がテントから顔を出したら、テントの外は慌ただしく大混乱だったからだ。

 皆が色々なテントを走り廻っていた。


「そちらのテントは平気でしたか?」


 いつの間にか近くにいた糸目が訊いてくる。


「何かあったんですか?」


「実は、商人が盗難に遭ったらしくて、その商人が他の皆のテントを確認して回っています」


 盗難か、まあ俺達には関係ないか。


 詳しく聞くと、派手で色々なアクセサリーを着けた、いかにも成金で恰幅のいい商人が、雇った冒険者を連れて他のテントを見ているらしい。

 被害報告を見るわけじゃなくて、容疑を晴らす為に他人のテントを見て回っているそうだ。

 盗まれたのはソイツだけで他の人は被害に遭っていない。なので、テントを見て回っているらしい。

 

 そして、俺達がテントの中で話していると、その商人が俺達の所に来た。


「私の商品である壺型の魔法具が盗まれた!これからこのテントを調べるから、お前らはテントから出ろ!」


「壺型の魔法具ってどんな物ですか?」


 恰幅のいい商人の態度に少しイラッとしつつ、疑問に思ったことを訊く。

 セアいや、ラズからも殺気を感じる。


「お前らに話す義務はない!いいからさっさっと出ろ」


「なら、俺らも見せる義務はないと思うけど?」


 ムカついた!別に見せた所で何もないが、ムカついたのでつい言葉が出た。

 なんで俺がいちいちコイツに協力しないと駄目なんだ?

 他人のテントなんだから、せめてお願いしますくらいは言ってもいいと思う。


「はあ?たかが冒険者如きが何言ってるんだ?おい、コイツ等を叩きだせ!」


 この商人、今こっちを見た目で判断した!?

 まあ、冒険者だけどさ。

 叩き出せ?俺達を?もう、キレた。


「セア、テントを解体して!」


「はい?分かりました」


 セアが疑問なのだろう。返事が疑問形だ。

 だが、作業に入り一分掛からずバラバラに分解する。

 デブ達がその光景を唖然として見ていた。

 セアは俺の指示でパーツ毎に並べていった。


 だってねえ……このデブをテントに入れたくなかったし。


「これで、見えるだろう?調べるならどうぞ調べてくれ」


 俺はデブ達にそう言って、部品を見せる。

 テントは解体されてバラバラに並んでいた。

 周りから皆にひと目で調べる様子は見える。


「チッもういい」


 デブはヤムを見て舌打ちしながら、去っていった。

 何でヤム?


「ええと、サエ様?何故テントを解体したのでしょうか?」

「私にもちょっと理由が分からなかったわ」

 

 セアとラズが言ったので、説明しよう。


「では、我が説明しよう」


 魔王がするのかよ!


「簡単に言えば、ヤムを盗るのが狙いだね」


 ザックリ言った!

 え?そうなの?


「すいません、分からないです」


 セアが言った。

 ですよねー。俺も。


「まず、他のテントをわざと調べて、全員を調べていると思わせるんだ」


 へえ〜そうなんだ。

 いちいち手間がかかる事するんだな。


「そして、サエ達のテントを調べる」


 他のテントも調べているからと断りづらくするわけだ。


「調べると中から何かを発見する」


 発見?何で?


「中には何も無いわよ」


 ラズが疑問を挟む。

 確かに、俺達の物は何も置いてないはずだが……

 基本的にストレージ使ってるし。

 あとは個人で装備している。


「調べる奴が発見するはずだよ。証拠はそいつが持っていて、調べてる最中にあったって言うんだね」


 魔王が答える。

 それって自作自演ってやつだな。


「でも、私達が居ると発見出来ないですよね……ああだから」


 セアが何か気付いたようだが。


「だから、アイツはサエ達を外に出したがったんだね」


「でも、小さい物なら私達が持ってると思われない?」


 なるほど、確かに。

 魔王が答えて、ラズが更に疑問を言う。


「だからサエは盗まれた物を訊いたんだよ、まあ、答えなかったけどね」


 え?


「じゃあ「でも、今まで調べられた人達は体を調べてないで、テントだけを調べた」


 ラズの言葉を遮り、魔王が話した。

 そうだったな、デブ達は確かに人を調べずにテントのみを調べて回っていた!


「だから多分、体に隠せないくらい大きなものだね。まあ、盗難物をあの商人が選ぶなら壊れやすくて価値がありそうな物がいいね」


「何で、壊れやすい物がいいんですか?」


 セアが魔王に訊く。


「それは、壊れたなら盗難と弁償の両方の罪で請求出来るからだね。壊れたら替わりの物を要求するだろうしね」


「そうか、事前に壊れた状態で見つかって、商品の替わりにヤムを……って作戦か!」


 ようやく分かって来た。

 まあ、初めからヤムをやるつもりは無いけど!

 ヤムは物じゃないし俺の仲間だ!


「それを、サエはテントをバラバラにして見せたから、周りからはまる見えで隠す場所もないって見せたんだね」


 結果、デブ達は何も出来なかったと。

 大体、最初からおかしい、魔物が出るこんな街道の真ん中で、明日まで馬車で同行するのに、今盗難なんてして誰が得するんだよ!

 さて、あの商人はどうやって解決するのかな?


「どうやら、犯人を見つけたみたいだね」


 糸目の視線の先を見ると、赤髪の少年がデブに蹴られていた。10歳くらいかな?

 あの少年は、デブの弟子らしい。

 隣にいた糸目が教えてくれた。


「このグズが!商品に手を出して!」


 デブが騒ぐ。

 どう考えても、場を納めるための身代わりだ。

 そもそも、街道は魔物が出て危ないので、自分の師匠の物を盗って逃げようなど思わないだろう。


「終わったなら、早く用意して出ませんか?」


 俺が声を掛けて、デブの用意を急かす。

 見ていて非常に気分が悪い。


「チッほら、グズ!早くテントを畳んで、荷物を運べ」


 何このデブ?

 疑っておいて謝りもせずにいきなり俺に舌打ち?

 まあいい、今は放置しておこう。

 それより、少年だ。

 俺は少年に近付き肩を軽く叩く。


「平気?どこか痛いところは?」


 俺は少年に声を掛けた。


「いえ、いつもの事ですから」

「何してるんだ!グズ!」


 俺が少年に話し掛けてからすぐに、デブが騒ぐ。


「すいません、行かなきゃ」


「いや、俺も引き留めてごめん」


 軽く言葉を交わし、少年は自分達のテントに向かう。


「サエ様は、誰にでも優しいですよね?」


 セアがいきなりそんな事を言う。

 まさか魔法使ったのが見えた?


「サエ、我にもバレバレだよ」


 そんな!目立たないように『消毒』と『自己回復』を使っただけなのに。


「俺は優しくないよ」


「魔王様だから?」


 ラズ……だから、俺は魔王じゃないし。

 それに魔王は関係ないんじゃ……


「サエ様は、優しいとボクは思うよ」


 くっヤムまでそんなことを言い出した。

 優しくないよ、だって……


 優しかったら、この世界には多分来なかったはずだから……



 皆の用意が終わり、馬車は出発した。

 馬車の中で俺は商人達にあのデブの事を訊く。


 四番目の馬車はデブの個人的な持ち物で、弟子1人と護衛3人が乗っている。

 デブは王都にある、大きな店の息子で、王都の店では美術品や魔法具を主に取り扱っているらしい。

 裏では他の物を取り扱っているようだが……

 デブは支店の下見の帰りで、このままだと、自分は親に支店に飛ばされると焦っているようだ。

 どうやら王都に何かあるらしく、王都を離れるのが嫌だそうだ。

 以上が今日1日で訊いた、デブの話だ。


 しかし、馬車の旅は退屈だ。

 魔物出ないし、景色が馬車の中から見えないんだよな。

 まあ、明日までの辛抱だな。


 消毒=回復魔法。

    傷口から体内に毒が侵入しないようにする。

 自己回復=回復魔法。

      自分の体の治癒力を一定時間上げる。


 ▲▲▲ 蛇足


 セア「まったくあの商人もサエ様を犯人扱いして!」

 サエ「まあまあ、セア落ち着いて」

 ラズ「壺1つにうるさかったわね」

 糸目「そうそう、あんな安い壺、しかも偽魔法具だったしね」

 魔王「え?」

 サエ「そうですよね、まったく──────」

 その後も会話が続く。

 魔王「ひょっとして誰も気付いてないの?」

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