16話 仮面
翌朝、館で皆一緒に朝食を食べる。
今日は、野菜のスープとパンだった。
野菜が真っ赤でいかにも辛そうだったが甘かった!
え?野菜だよね?果物じゃないよね?
館から出て、宿を出る時にセアと別れ、領主館へ。
領主館ではモヤシさんが待っていた。
「昨日、代表の元へ連絡した所、代表館に来て欲しいとのことです」
「分かりました、では代表館に行きましょう」
俺はモヤシさんと護衛の騎士さんを連れて、代表館に向かった。
代表館は広いホールのような場所だった。
そこにキザ男と護衛の冒険者と騎士が大勢いた。
俺とラズが護衛に警戒されながら、キザ男の向かいまで歩いていく。
「おや?君は僕から恥ずかしがって、隠れていたんじゃないのかい?どうして、今日はここへ?今日は領主様がここに来ることになっていたのだが?」
「領主は来ないぞ!領主様の代わりの使者で俺達が来たんだ!」
キザ男はラズしか見ていないので俺が答えてやった。
「君は……ああ!行方不明者(仮)だね」
コイツ忘れてたな、しかも行方不明者(仮)ってなんだ!
「キザ……じゃない、ルベウス代表はどこに居るんだ?」
ルベウスが1区画の代表の名前だ。
「父上は体調が優れないので、大事を摂って養生しているよ。だから、用件を伺うようにと、僕が代わりに来たんだけど?」
髪を弄ったり、ポーズを取らないと喋れないのか?コイツは……
「それで、用件は何かな?」
「今日から9日程前に、お前は領主に会っていないか?」
キザ男が用件を訊いてきたので、俺も訊いてみる。
「そんな前の事は分からないよ、それに僕は1区から出ないしね」
「じゃあ、街道の狼の事も知らないか?」
知らないとキザ男が言ったので、俺は街道の狼について訊く。
領主のは、馬鹿過ぎて俺も言いづらいし。
「狼?ああ、魔物が増えたからその事かな?実に厄介な事だ。おかげで、街と王都を行き来する人が減った」
「そうか、確認するが、お前は街からは出てないんだな?あと、狼の事は知らないんだな?」
俺はキザ男が街から出ていない事、狼が死んだという事を知っているのを確認した。
「そうだね、ここ何年かは出てないよ。狼は残念だったね」
俺はギルドに狼達は全滅したと伝えた……
俺はヤムの『迷彩』を解く。
「コイツだ!匂いがコイツから出てる!」
「なっ!?狼!確かに全部殺したはず……」
ヤムが姿を現して、キザ男が動揺する。
狼に生き残りがいると知らなかったようだ。俺も伝えてないしな。
【殺した】と言ったし、黒だが、まだだめだ。
ヤムは俺の言い付け通り、キザ男には飛びかからない。
「黒日病にしてか?領主も同じようにしたのか?」
「領主?何のことだ?」
魔王から念話が来て、ニヤリとする。
俺はキザ男が100%黒だと知っている。
なぜなら……
「領主が襲われた時、犯人は赤い仮面をしていて、白い光を領主に放ったそうだ」
「赤い仮面?そんな物、僕は知らないな」
「そうかよっ!」
俺はキザ男の額にドッグナイフを投げる。
護衛達も俺の咄嗟の行動についていけない!
カツン!
ナイフは硬い物に当たり弾かれた。
「いきなり何をするんだ!」
「……【仮面】の勇者」
キザ男は怒り、ラズが呟いた。
「おい!魔法が解けて【見えて】るぞ」
俺はキザ男に教えてやった。
そう……キザ男の顔は赤い仮面に覆われていた。
仮面というかフルフェイスメットだな。顔が見えない。
「ククク……まあお前たちだけなら殺せば平気だな」
「そうとも、限らない」
俺はモヤシと騎士さんの『迷彩』を解く。
「いままで拝見させて貰いました。このことは、然るべき所に報告させて貰います」
「なぜ、お前がここに?だが皆、死ねばいいことだ!」
え?モヤシさん、何者?
赤仮面が俺達に向けて白い光を放った。
俺は魔女から買った水晶を取り出し、防壁を張り防いだ。
「ちっ!魔法防壁か!仕方ない、おまえ等も行け!」
赤仮面が言うと、冒険者の顔に白い仮面が現れた。ただ白くて顔に着いているだけで目や鼻も口もない。
騎士はこの状況に戸惑っている。
「何してる!騎士共!団長の命はいいのか?」
それを聞き、騎士が動き始める。
が、突然の乱入者に皆動きを止める。
「サエ様、お待たせ致しました。全員救出致しました」
セアが来た!
セアは入り口に運んでいたオッサン2人を置く。
セアは俺に近寄って来る。
「どうぞ、サエ様」
「お待たせ、サエ」
セアが俺にスマホを渡し、魔王が俺に念話で話す。
うん、皆揃ったな!
『団長!』
騎士達がオッサン2人に駆け寄っていった。
「形勢逆転かな?どうする?」
俺が赤仮面に尋ねる。
まあ、逃がすつもりも、許すつもりもないが。
「うるさい、お前等コイツ等をどうにかしろ!」
赤仮面が白仮面に命令する。
白仮面が無言でこちらに向かってくる!
「皆は白仮面達をよろしく、殺さないようにお願い」
「畏まりました」
「了解よ」
「分かった、サエ様!」
セア、ラズ、ヤムが応える。
「我等も手伝います!」
騎士達もやる気のようで「お願いします」と言ったら、返事をせずに突っ込んで行った。殺すなよ〜。
さて、赤仮面と戦うか。
さっきの光に気をつけて、魔法は使わないようにしよう。
魔法感染が怖いし、厄介なので、速攻で終わらす。
スマホの機能は魔法とは違うよと魔王が言ったから、平気だろう。
「お前が狼達を殺したんだな?」
「ああ、最初はキャンキャンうるさかったが、僕の呪魔法を掛けると大人しくなって」
呪魔法?知らない魔法だ。
黒日病の事か?
「僕の呪魔法でジワジワと黒くなっていきそれが「黙れ、五月蝿い!」
もう聞く気はない。仇が判ればいい。
……死ね。
俺はスクロール機能で、赤仮面の前に移動してもぐらを胸に突き刺す。
「違う!本体は仮面だ!」
人質の中にいたオッサンが叫んだ。
「もう遅い!この距離では「五月蝿い」
俺は赤仮面が放とうとした白い光を消す。
やればできるもんだな、ストレージに収納。
「なぜ!?だが仮面は勇者の力で壊れ「死ね」
闘気を使い、増えた体の力全てをナイフを突き刺すのに使う!
ぶっ壊れろ!!
「バッ馬鹿な!」
仮面にひびが入り、直後にバラバラに砕け散った。
頭の中身はなかった。首無し死体だけが残った。
周りも静かで終わったみたいだ……
……約束通り仇は殺ったよ。
▲▲▲ 蛇足
サエ「赤仮面は何が目的だったんだ?」
魔王「課外授業したかったんじゃないの?」
サエ「それ、違う仮面だから!」
魔王「バイクも無いし、ベルトもなかったよ」
サエ「それも違う!」




