表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/102

14話 狼

 カンガルーは速かった。

 走っても速いが、ジャンプが半端じゃない!50m位をひとっ飛びだ。しかも、衝撃が少ない!確かに納得の値段だ!

 目的地もこちらが言う事を理解して動いてくれる。

 だが、運搬には向かないようで何かを繋いだりは出来ない。

 繋いで跳ぶと、着地した時に壊れる。それに、あまり重いと動けなくなるらしい。

 人数も1人が限界で、それ以上は跳べなくなる。また、高価で繁殖力が低いので多数は揃えられない。店も国も。


 ……以上がラズから訊いたカンガルーの事。


 そして今、俺達は館にいた。


 目的地の洞窟に最も近い街道へは夜に着いた。ここまでにかかった時間だが、6時間位だった。

 といえば、カンガルーがいかに速いか解るだろうか?

 ハッキリ言って欲しい!だが、個人ではよほどの事が無い限り所有は無理だそうだ。


 おっと、カンガルーの話じゃなかった!話を戻そう。


 俺達は夜に洞窟に向かうのは危険と言うことで、スマホを『隠蔽』で岩陰に隠した。

 カンガルーは館2の設定を草原に変えてそこに置いてきた。どうせ、洞窟まで魔物を倒しながら行くので連れていけないし。

 草原の草は「100%魔王産で体に無害。低カロリーでヘルシーだよ」と魔王が言っていたので平気だろう。多分。

 ボソッと「病みつきになるかも」と魔王が付け足したが……


 俺達は夕飯を食べて、風呂に入ったがやたらとラズが感動していた。あっ大浴場はちゃんと男女別に作ったよ。

 混浴はリラックスできない。色々と。


 寝室でまたラズが俺の部屋に入ろうとして、セアとラズの争いが勃発したが、俺の隣りの部屋を使う事で決着したようだ。

 しかし、2人は今、寝間着でいるが、セアは年相応という感じだが、ラズはすごいな、普段は鎧姿だからわからないが。

 そういえばラズの歳って聞いてないな。確実に年下だろうけどな。まあ女性に聴けないよな。


 あっそうだった!

 俺は寝る前にラズに鍵を3つ渡す。


「えっ?何で?」


「俺達は仲間だろ、婚約者様」


 軽い感じで言う。

 自分から言ったんだろう!


 ポロリ……


 え?何で?何で泣くの?

 ラズの目から涙がとめどなく溢れていた。


「ザ……ザエェェェェ!」


 ラズが涙声で俺の名前を呼び、泣いたまま俺に抱きついて来た。

 よしよし、こうしていると完全に子供だな。

 普段は凛として、大人びてるのに。


 結局、泣き止むまで頭を撫でてあげた。セアも見ていたが、何も言わなかった。


「……サエ……あの……」


「うん」


 何か言いたげだが、俺はラズの頭を撫でて、返事をする。

 別に無理に聞きたい事じゃない。


「無理しないでいいよ」


「私、サエに言ってない……言わない事あるよ?でも仲間?」


「うん、仲間だよ」


 付き合いはまだ短いが、ラズの事は嫌いではない。トラブルばかり起こすが…… 

 だいたい仲間じゃないのに、鍵は渡さない。


「婚約者?」


「それは……」

「フフっ」


 答えに詰まっていると、ラズが可愛いく笑った。

 危ない、ちょっとドキッとした。


「今はいいわ、ありがとう。サエ、セア」


「どういたしまして」

「でも、婚約者は認めませんよ」


 俺とセアがラズに応える。

 セア……でも、仲間としては認めてると……


「……サエ、まだ……でもきっと……きっといつか話すから」


 ラズの目は決意に満ちていた。最後に渡された鍵を愛しそうに撫でてからしまった。


「おやすみサエ」


「ああおやすみ」


 そのまま部屋に帰って行った。


「では、私もサエ様おやすみなさい」


「おやすみセア」


 2人共、部屋に行く。


 俺も部屋に戻り1人呟く。


「どう思う?」


「どうとは?」


 当然のように魔王から念話が来る。


「ラズの様子」


「会ったばかりでは何ともね。【魔王】に何かありそうだけどね」


「そうか、やっぱり判らないな」


 俺は旅したいだけだが、何か巻き込まれている感じがする。


「面倒なフラグが立ってる気がする」


「良かったじゃないか、【最高】だろう?」


 まあ、面白そうだな……答えないけど。


「おやすみ婚約者様」


 ……魔王


 いいや、もう寝よう、明日は戦いだろうし。



 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 翌日、昨日の事など何もなかったように明るいラズがいた。

 俺も気にしない、ただ昨日よりもラズは明るい気がする。

 気にしてんじゃん!

 まあいいや、朝食は暖かいスープとサラダだった。

 朝食をみんなで食べてその後、スマホの外へ。


 戦闘はラズとセアが剣で戦い、俺が中〜遠距離担当。

 ラズは剣が得意で神聖魔法と回復魔法が少し使えるらしい。剣の腕前はセアと同じかそれ以上、片手剣同士ならラズが勝つな!

 セアは氷と炎の剣を両手持ちが基本で、投擲したり、剣の形を変えて攻撃したりで自由に戦う。

 俺?俺は風刃を5〜6個常時展開でコツコツ仕留める。風塵やもぐらは周りを巻き込むから、今回はダメってセアが……

 クスン……見せ場が無い。


 そうして、昼前に洞窟に辿り着く。


「さすがに、魔物の量がおかしいわね」


 ラズが周りを伺いながら言う。そうか?森と同じくらいじゃないかな?


「サエ、森に守護獣はいないよ。守護獣がいて森と同じはおかしいよ」


 魔王が説明してくれる。


「サエ様洞窟の中が変です。何か黒い……?サエ様!!魔法を使わないで!」


 セアが叫び自身の剣を消した。

 俺も風刃を消す。


 洞窟の中から白いものが俺に飛びかかってくる。咄嗟に腕を振るい、白いものを払う。


「人間!お前は微かにあいつの匂いする。そこのおまえはもっと匂いする。仲間の仇!」


 狼?じゃあ守護獣か!それにしては小さい気が……狙いはラズか!俺は狼に横から飛びかかる。よし、うまく狼を巻き込んだ。

 ぐるぐると俺と狼が転がった。今だ、俺はバイブ機能で狼の脳を揺らした。


「な……に……うご………けな」


 異世界でも脳震盪はあるらしい。

 狼が倒れ、セアが手足を縄で縛る。

 今、どっから縄が?


 しばらくすると狼が暴れだした。


「殺す殺す仇殺す」


 うん、無理だな会話不能だ。

 先に洞窟を見てみるか。何か狼の言葉からするとあまり見たくないな。

 洞窟というか洞穴だな。



「これは……」

「ひどいね」


 セアとラズが呟く。予想通りに酷い光景だ。

 中はあまり広くはなく、少し暗いが、入ると外から光が届いた。

 そこには、全身が黒い狼達が10匹ほどいた。全ての狼がグッタリと倒れて息をしていない、明らかに生きてない。


 俺は外に出て狼に近寄って言う。


「何があった?」

「殺す仇殺す」

「五月蝿い!お前の気持ちは訊いてない!殺すぞ!さっさと答えろ!」


 俺が殺気を込めて狼に命令する。


「サエ?」

「サエ様?」


 セアもラズも俺の態度に戸惑っているようだが、今はどうでもいい。


 狼が渋りながら話す。


「……10日前にボクが狩りから帰ると、洞窟から白い光が見えて、急いで帰ると人間が洞窟から出て来て、ボクが洞窟に入ると、皆黒い模様を着けて起きないんだ!」


 その人間が洞窟に何かしたな!


「それで、いままで皆を魔物から守って、でも黒いのが止まらなくって!今日になって息が……」


「そうか、辛かったな」


 仲間がだんだん黒くなっていき、一匹では仲間を魔物から守るだけでも辛いだろう。

 それを、仲間が弱るのを、見ているしか出来ない、どれだけ辛かっただろう!

 俺は狼を撫でながら訊く。


「仇を取りたいか?」

「当然だ!」


「無理だな!お前は弱いし」

「無理じゃない!ボクは戦士だ!」


「じゃあお前は仲間で1番強いか?」

「それは……」


「お前の仲間は、皆やられたぞ!恐らくは1番強いのもな」


「う……うう……」


「だから、見届けろ!仲間の為に!自分の為に!俺が仇を討ってやる!」


「お前が……」


「ああ!俺は【魔王】だからな!」


「魔王?」


「そうだ!だからついてこい!強くしてやる!魔王を信じろ!」


「……分かった!ボク行くよ!」


 その後、狼の許可を取り、洞窟にセアが近くの枝を拾い、それに火をつけたのを何本か投げ入れ燃やした。

 魔法は感染するかもしれないので、セアの提案で洞窟を燃やし弔う。


「セア、ラズごめん、怒りで変なこと言った」


 頭が真っ白になって考えられなかった。


「いいえ、ちょっと恐かったけど、かっこよかったですよ」

「かっこよかったよ【魔王】様」


 グアアアーーー


 恥ずかしい。怒りで変なテンションになったんだよ!

 とりあえず街道に行くか。



 狼はヤムと言う名前らしい。人間でいう14歳で、15歳になると人化が可能になる。

 人化できる狼が街まで行っていたようだ。

 戦闘は魔物が一匹なら勝てるが二匹以上は無理な感じだ。速さを生かして常に1対1になれるようにアドバイスする。

 武器は牙や爪で魔法は守護魔法を成長すると覚えるらしい。


 俺はヤムを一匹にしたくなかった。

 どうやってもあの場に残す、という選択はしなかっただろう。


 街道に出たのが夕方だったので、今日は休む。館に入り、夕飯を皆で食べる。

 ヤムが居たからか、肉料理ばかりだった。

 その後、お風呂に入り、ヤムの体に傷が多いことに気づき、回復魔法を使う。その後毛皮を洗う。洗われるのを嫌がっていたが、無理やり洗っていたら諦めて大人しくなった。

 風呂から上がってヤムと部屋に向かうと皆が部屋の前にいた。と、ヤムは俺の向かいの部屋だ。ヤム用の出入り口も作った。

 皆におやすみと言って、部屋の中へ。

 レベルが2上がったので、スキルに割り振った。



 ヤムの仲間を殺した奴は許さない!



 サエ レベル 16 

 newスキル

 力系 投擲武器 マスター ★★★使用

 投擲武器の威力や精度が上がる。


 体系 忍び足 ★使用

 足音がしない、歩行速度が微上昇。


 体系 瞬間跳躍 ★使用

 一瞬だけ跳躍力が上がる。


 スマホ系 スクロール機能 ★使用

 一瞬で移動出来る。ただし、自分の直線上で視界内、地面が続いているのが条件。


 ▲▲▲ 蛇足


 サエ「この朝食のサラダに見覚えが……」

 セア「はい?魔王草ですが?」

 サエ「これ、カンガルーの……」

 魔王「ヘルシーだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ