12話 ピンク
───────なぜ、こうなった?
北門は門が閉じて人でごった返している。
俺達は物陰に隠れ、様子を伺う。
「隠れながら進むのって、新鮮で面白いですよね」
面白くない!誰のせいでこんなどこかの蛇みたいな事をしてると!ダンボール無いんだぞ!
俺は【薄いピンクの髪をした少女】に抗議の目を向けた。
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この街は上空で全体を観ると、丸く円の形になっている。
東西南北に門があり、道が延びて十字の中心に領主館、その周りに領主館で働く人が住んでいる。
周りは6つの区画に分かれている。北、北東、南東、南、南西、北西だ。それぞれ6人の代表が治めている。
北から北西まで時計回りに1〜6区画と呼ばれる。本当は区画毎に名前があるが、皆数字で呼ぶ。
区画に壁は無いが、雰囲気が格区画毎に違った。
俺達は最初にこの街へ来たときは南門から入り、4区画に来た。輪御亭も同じ区画だ。ギルドは3区画だが、それは今はいい。
で、朝に輪御亭を出て、北門から出るために領主館の近くを通り過ぎた。
北門に行くために1区画に入り、直ぐに揉めている集団が在った。厳つい男達を周りに侍らせた男が1人の少女と言い争いをしている。
男はキザなイケメンで……男なんかずっと見たくない。自分と比べてなんかないよ。本当に。
その少女に見覚えがあった。あの南門で争っていた少女だ。なんか、会う度に争ってないか?
と、気付かれたようだ、会話をぶった切り、少女がこちらに寄って来る。近づいて目の前で立ち止まり、両手が肩を通り過ぎ頭へって、え?
────そのまま、俺と彼女の唇が重なる。
「「なっ!?」」
「やるね、サエ!」
セアが驚いて固まる。俺も固まる。
魔王はスルー。
柔らかかったな。何か甘い感じが……
「この通り、私には婚約者がいますので、お引き取りください!」
キザ男に向かって、少女が言い放つ。
「フッそんな事を言っても無駄さ!キミは僕から逃げられないよ」
キザ男はまったく聞く耳を持たない。
「サエ、あいつを【見て】」
「あいつってキザ男?まあいいけど。うわっ何コイツ!」
「そこの男は僕を見て失礼だな。まあ、君はこれから行方不明だ」
勝手に予定を決めるな!
周りの男達が襲って来る。
とりあえずもぐらを地面に刺す。
龍が3匹現れて男達を次々に呑み込む。咄嗟だったから狙いが甘く、何人かは残った。キスのショックが残ってるな。
「なっ!龍!」
キザ男が驚いている。他の男達も龍に驚いて立ち尽くす。
よし、今のうちに逃げよう!
「セア、とりあえず逃げよう!」
「サエ様の……が、サエ様の……」
いかん。セアが壊れた。
セアを再起動するのに仕方なく、仕方なくだからね!
セアの唇を奪う。恥ずかしい!
「え?サエ様?私が?何で?」
「あら?私にはしてくれないの?」
セアが戻ったな!ピンクはうるさい!コイツは頭の中も外もピンクだ!
「とりあえず、走ってセア!」
「はい、分かりました」
「了解よ」
うん、セアはいい返事だ!状況解ってないだろうなあ……
ピンクは付いて来る気満々だ!もういいや、勝手にして。
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─────────で、北門を目指していたが、今は潜伏中。
さっきから、セアが殺気を出している。対して、ピンクは無邪気に笑ってる。
とりあえず、静かな所で昼飯にするかな。
「一回、館に行こうか?」
セアに訊いてみる。
「でもサエ様、アレが……」
「館?」
セアは他人を館に入れたくないようだ。が、
「一回コイツとも話さないとな」
「それは……分かりました」
「婚約者にコイツは非道いですよ、魔王様!」
だから俺は魔王じゃない!
とにかく、俺はスマホに『隠蔽』魔法を使い、人に見えないようにして館を起動した。
「何ここ?どこですか?」
「俺のマイホーム!とりあえずこっちへ」
セアはすぐ調理の為に、キッチンへ消えた。
俺はピンクを食堂へ連れて行った。
「で、どういうつもりだ?」
「何がです?」
ピンクは惚けた。
「婚約者?」
「それは、そのままの意味ですよ。私は魔王と結婚するんです」
ガタンッ!!
今、キッチンから凄い音が!セアは平気か?
「セアは心配ないよ、サエ」
と、魔王から念話が来た。
「俺は魔王じゃないし、それにキミは──「ラズ」
「え?」
「キミじゃないわよ、ラズと呼んで」
ラズが名前らしい。
「とにかく、俺はサエで魔王じゃない!」
体は魔王だけど。
「いいえ、違いますアナタは魔王ですよサエ!」
「でも、魔王はもう別に居るぞ?」
黒いスマホのな!
「それは……まあいいです。いずれ分かる事ですもの、【婚約者】もね」
何か意味深だな。
「あと、ラズと言い合ってた奴、知り合いか?」
「知らない、と言いたいですけどね。アレは女の敵で害虫よ!」
ラズの話しによると、あのキザ男は1区画の代表の息子で、1区画でやりたい放題している。
気に入った女性は誘拐され、行方不明になり、今も見つからない。その女性の恋人は殺されるか冤罪で捕まる。
1区画のみで行うので、証拠も証言もキザ男に潰される。代表はまともな男だが、外にあまり出ずに息子の言葉を信じているらしい。
1区画の騎士はキザ男に逆らわない、何か弱味でもあるようだ。
騎士は区画毎に代表が管理している。
キザ男の周りは人数の多いCランクのファミリーを護衛で雇っている。
と言うのがラズが1区画に入る前に得た情報である。
……そんな情報あるなら1区画に入るなよ!
「だって、サエに早く会いたかったんだもの!」
いや、こころを読むな!
「だいたい、俺達が今日は1区画を通るか解らないだろ」
「あら?解りますわよ?だって私は……愛の力ですね!」
ごまかした!明らかにごまかした!
ガシャンッ!!
セアが料理を持ってきた。テーブルに乱暴に置く。
はあ……第2ラウンドかな?
▲▲▲ 蛇足
魔王「平気、セア?」
セア「平気ですよ、ちょっと間違えて、鍋を斬っただけですよ」
魔王「じゃあ、サエにそう言うよ」
セア「またハンバーグ、作り直ししないとダメですね」
魔王「セアならすぐだよ」
セア「鍋から……」
魔王「あれ?ハンバーグって鍋?」




