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12話 ピンク

 ───────なぜ、こうなった?

 北門は門が閉じて人でごった返している。

 俺達は物陰に隠れ、様子を伺う。


「隠れながら進むのって、新鮮で面白いですよね」


 面白くない!誰のせいでこんなどこかの蛇みたいな事をしてると!ダンボール無いんだぞ!

 俺は【薄いピンクの髪をした少女】に抗議の目を向けた。



 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 この街は上空で全体を観ると、丸く円の形になっている。

 東西南北に門があり、道が延びて十字の中心に領主館、その周りに領主館で働く人が住んでいる。

 周りは6つの区画に分かれている。北、北東、南東、南、南西、北西だ。それぞれ6人の代表が治めている。

 北から北西まで時計回りに1〜6区画と呼ばれる。本当は区画毎に名前があるが、皆数字で呼ぶ。

 区画に壁は無いが、雰囲気が格区画毎に違った。

 俺達は最初にこの街へ来たときは南門から入り、4区画に来た。輪御亭も同じ区画だ。ギルドは3区画だが、それは今はいい。


 

 で、朝に輪御亭を出て、北門から出るために領主館の近くを通り過ぎた。

 北門に行くために1区画に入り、直ぐに揉めている集団が在った。厳つい男達を周りに侍らせた男が1人の少女と言い争いをしている。

 男はキザなイケメンで……男なんかずっと見たくない。自分と比べてなんかないよ。本当に。


 その少女に見覚えがあった。あの南門で争っていた少女だ。なんか、会う度に争ってないか?

 と、気付かれたようだ、会話をぶった切り、少女がこちらに寄って来る。近づいて目の前で立ち止まり、両手が肩を通り過ぎ頭へって、え?


 ────そのまま、俺と彼女の唇が重なる。


「「なっ!?」」

「やるね、サエ!」


 セアが驚いて固まる。俺も固まる。

 魔王はスルー。

 柔らかかったな。何か甘い感じが……


「この通り、私には婚約者がいますので、お引き取りください!」


 キザ男に向かって、少女が言い放つ。


「フッそんな事を言っても無駄さ!キミは僕から逃げられないよ」


 キザ男はまったく聞く耳を持たない。


「サエ、あいつを【見て】」


「あいつってキザ男?まあいいけど。うわっ何コイツ!」


「そこの男は僕を見て失礼だな。まあ、君はこれから行方不明だ」


 勝手に予定を決めるな!


 周りの男達が襲って来る。

 とりあえずもぐらを地面に刺す。

 龍が3匹現れて男達を次々に呑み込む。咄嗟だったから狙いが甘く、何人かは残った。キスのショックが残ってるな。


「なっ!龍!」


 キザ男が驚いている。他の男達も龍に驚いて立ち尽くす。

 よし、今のうちに逃げよう!


「セア、とりあえず逃げよう!」

「サエ様の……が、サエ様の……」


 いかん。セアが壊れた。

 セアを再起動するのに仕方なく、仕方なくだからね!

 セアの唇を奪う。恥ずかしい!


「え?サエ様?私が?何で?」

「あら?私にはしてくれないの?」


 セアが戻ったな!ピンクはうるさい!コイツは頭の中も外もピンクだ!


「とりあえず、走ってセア!」


「はい、分かりました」

「了解よ」


 うん、セアはいい返事だ!状況解ってないだろうなあ……

 ピンクは付いて来る気満々だ!もういいや、勝手にして。



 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 ─────────で、北門を目指していたが、今は潜伏中。

 さっきから、セアが殺気を出している。対して、ピンクは無邪気に笑ってる。

 とりあえず、静かな所で昼飯にするかな。


「一回、館に行こうか?」


 セアに訊いてみる。


「でもサエ様、アレが……」

「館?」


 セアは他人を館に入れたくないようだ。が、


「一回コイツとも話さないとな」


「それは……分かりました」

「婚約者にコイツは非道いですよ、魔王様!」


 だから俺は魔王じゃない!

 とにかく、俺はスマホに『隠蔽』魔法を使い、人に見えないようにして館を起動した。



「何ここ?どこですか?」


「俺のマイホーム!とりあえずこっちへ」


 セアはすぐ調理の為に、キッチンへ消えた。

 俺はピンクを食堂へ連れて行った。


「で、どういうつもりだ?」


「何がです?」


 ピンクはとぼけた。


「婚約者?」


「それは、そのままの意味ですよ。私は魔王と結婚するんです」


 ガタンッ!!


 今、キッチンから凄い音が!セアは平気か?


「セアは心配ないよ、サエ」


 と、魔王から念話が来た。


「俺は魔王じゃないし、それにキミは──「ラズ」


「え?」


「キミじゃないわよ、ラズと呼んで」


 ラズが名前らしい。


「とにかく、俺はサエで魔王じゃない!」


 体は魔王だけど。


「いいえ、違いますアナタは魔王ですよサエ!」


「でも、魔王はもう別に居るぞ?」


 黒いスマホのな!


「それは……まあいいです。いずれ分かる事ですもの、【婚約者】もね」


 何か意味深だな。


「あと、ラズと言い合ってた奴、知り合いか?」


「知らない、と言いたいですけどね。アレは女の敵で害虫よ!」


 ラズの話しによると、あのキザ男は1区画の代表の息子で、1区画でやりたい放題している。

 気に入った女性は誘拐され、行方不明になり、今も見つからない。その女性の恋人は殺されるか冤罪で捕まる。

 1区画のみで行うので、証拠も証言もキザ男に潰される。代表はまともな男だが、外にあまり出ずに息子の言葉を信じているらしい。

 1区画の騎士はキザ男に逆らわない、何か弱味でもあるようだ。

 騎士は区画毎に代表が管理している。

 キザ男の周りは人数の多いCランクのファミリーを護衛で雇っている。


 と言うのがラズが1区画に入る前に得た情報である。

 ……そんな情報あるなら1区画に入るなよ!


「だって、サエに早く会いたかったんだもの!」


 いや、こころを読むな!


「だいたい、俺達が今日は1区画を通るか解らないだろ」


「あら?解りますわよ?だって私は……愛の力ですね!」


 ごまかした!明らかにごまかした!


 ガシャンッ!!


 セアが料理を持ってきた。テーブルに乱暴に置く。


 はあ……第2ラウンドかな?


 ▲▲▲ 蛇足


 魔王「平気、セア?」

 セア「平気ですよ、ちょっと間違えて、鍋を斬っただけですよ」

 魔王「じゃあ、サエにそう言うよ」

 セア「またハンバーグ、作り直ししないとダメですね」

 魔王「セアならすぐだよ」

 セア「鍋から……」

 魔王「あれ?ハンバーグって鍋?」

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