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1話 魔王

 初めて投稿した作品です。

 よろしくお願いします。

 誤字や脱字が多いですが、なるべく修正しようと思います。


 大きく暗い部屋の中心には、一つの棺があった。

 部屋の中には棺のほかには何もなく、ただ黒い不気味な棺だけがあった。


 ヒュゥゥゥ


 不意に風が吹いた。この部屋には、窓も扉も外に繋がる物は一切“存在しない”のに。

 風は棺の中から吹いていた。次第に風は強くなり、やがてその音が聞こえた。


 ゴゴゴゴ……


 棺の蓋が横に少しずつスライドして開いていく音だった。

 蓋が開いて棺の中身が少しずつ見えてくる。


 棺の中には何やら禍々しく黒い物が入っていた。

 いや、ソレは黒い包帯が何重にも巻かれ、人型をしていた。

 ソレを見た人はこう言うだろう。

 “ミイラ”と。



 ソレの人の顔にあたる部分の包帯が動きだし、目の部分が開いた……

 赤だった。ただ血のような赤だけがそこにあった。

 やがて、ソレに巻いてある身体中の包帯が動き……

 しかし、身体を動かせない現状を理解したのかやがて静かになった。


 ……ただ、ソレは声には出さずに嗤っていた。



▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 その男は20代前半で、これといって目立つものがない、可も不可もない容姿であった。

 着ているスーツ姿から、普通のサラリーマンと判るくらいである。


 夜、男は光あふれる都会の大きな交差点で信号待ちをしていた。

 その男以外にも、会社帰りでたくさんの人が同じように横で横断歩道の信号が変わるのを待っていた。


 やがて、男から着信を知らせる音が流れたので、男はすぐにポケットからスマホを取り出した。

 見覚えのない番号に一瞬訝しむが、着信ボタンを押し、耳にあてる。


「……はい、どちら様ですか?」

「……」

「もしもし?聞こえてますか?」

「……」

 (イタズラ電話?)


 待てども返事が一向に無いことに苛立ち、通話を切ろうと耳からスマホを離した。

 その時、目の前が裂けた。


 いや、目の前の空間が裂けた。

 裂けた空間からは、赤い目のようなものが男を捉えた。


「えっ!ウソ!?」


 男は驚いて声を出した。

 空間が裂けた事に驚いたのか? 否。

 赤い目に驚いたのか? 否。

 では、何に驚いたか?


 男は自分から飛び出していた。

 赤信号の横断歩道を“男の意思と無関係”に。


 横断歩道に飛び出した瞬間に、クラクションを鳴らしながらトラックが突っ込んで来た。

 スピード、タイミング、その全てが男の生を否定していた。


 直撃の瞬間、男は思った。

 (痛いのはやだなぁ)


 ドンッ!!


 男は轢かれ、死の間際に思う。

(あぁ、スマホ壊れたなぁ。また変えないと……)

 

 そして、男の意識が無くなり、やがて完全に死亡した。


 赤い目はその様子を楽しそうにずっと眺めていた。



▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 ───────あれ?生きてる?

 目が覚めると、全く見覚えのない場所にいた。

 どうやら、俺は箱の中にいるらしい。

 少し外が見えた、蓋?を開ける。これ重っ!!


 上体を起こして辺りを見る。ここは室内だが、灯りもないのに何故か周りが見えた。

 俺のいる箱は棺桶みたいだな。棺桶?やっぱり俺死んだのか?火葬前?

 黒いインナーのような服装だけど、白い死に装束じゃない。頭に三角のやつも付いてない。

 誰もいないけど……

 どうなってんだ?


 部屋の中には扉も何もない。どうやって出入りするのだろう?


「起きたかい?おはよう」


 突然、どこからか少年のような少女のような不思議な声が聞こえた。


「誰だ?どこにいる?」


 声が聞こえてすぐに周囲に視線を走らせる。


「そこは驚くところ……まあいいや。ここだよ、ここ。さっきから隣にいるじゃないか」


「隣?」


 俺が声の主を探していると、すぐ

隣からまた声がした。

 言われるままに隣に視線を向けるとそこには、黒い『スマホ』があった。


 自分の使っていたのは白だったし、見たことがない機種だった。


「スマホ?」


「そう、それそれ!」


 どうやら、スマホから声が聞こえているみたいだった。

 スマホを手に取って、画面を覗いて見る。


「やあ、はじめましてかな?」


 スマホには画面一杯にデフォルメされた黒いふくろうが、首を傾げたようなポーズで喋っていた。


「……梟?」


「今はね、格好良いだろう?」


「いや、黒い身体に真っ赤な目って……不気味だと思うけど」


 ……つい、正直な感想を言ってしまった。


「そうかい?まあ、真っ赤な目は君もだけどね」


 特に気分を害した様子も無く、言葉を返してきた梟。


「俺は日本人で黒目だけど?」


「今は違うよ。ほら、これを見てごらん」


 梟はそう言うと、スマホのカメラアプリが起動し、自撮りモードに変わる。

 梟は小さくなって隅に移動する。


 そこには、見たことないほどまっ赤な目に茶色な髪の少年が映っていた。

 15才位かな?ちょっとカッコイイ顔で肌が生前より若干白い、その少年が驚いている表情をしている。


「……誰?これ。」


「誰って、君だよ。格好良いだろう?創るのにはなかなか苦労したよ」


 頬をつねってみる。

 痛い……。

 夢じゃない……

 スマホに映っている少年も頬をつねっている。

 どうやら、この少年が俺らしい。若い。


「えっ!?何で?」

「だから創ったんだってば」

「誰が?」

「我が」

「どうやって?」

「半分は我の魔力ともう半分は優しさ?」


 バファ◯ンか!この体!!

 優しさで体が出来るかー!



「いや、我の魔力と体を使って創ったから、間違いではないはず。我って、ほら、優しいから」


 いや、知るか!

 梟が画面の隅で偉そうに言った。

 カメラが勝手に終了して、また梟が画面一杯になる。


「……で、俺の元の体は?」


「君、憶えていないのかい?」


 梟はやれやれといちいちポーズをとり、告げる。

 ちょっとイラッとする。


「君、轢かれて死んだだろう。もう壊れているよ。だから、とりあえず魂だけ抜いて移したんだよ」


 やはり、死んでいたらしい。

 でも、魂を移す事って可能なのか?


「まあ、我だから出来る事だよ。殺してから魂を抜いて、この世界に移して────」「おい、ちょっと待て」


「“殺して”?」


 ビクッ!!


 画面の梟が一瞬震えた。


「殺したのはお前か!!あの時、勝手に足が動いて、おかしいと思ったら!」


「うん、ごめん。反省はしている。だが、後悔はしていない!」

「上等だ!」


 俺はスマホを全力で壁に投げつける。


「グハアッ!!」


 さらに床に落ちたスマホを全力で踏みつけ。


「ギャアッ!!」


 俺の全力の攻撃なのに、スマホには傷一つつかない。

 ハアハア、疲れる。


「気は済んだかい?ちなみにスマホは壊れないし、我に今、痛覚はないよ」


「じゃあ、さっきの悲鳴は?」


「様式美?」


 コイツ、ムカつく。

 スマホが手の中に勝手に来た。


「それに、あの世界には未練が無いだろう。きみは」


 ……コイツ、何を言ってる?


「家族はもういないし、恋人もなし。会社は近々辞めて、旅をする予定だった」

「……」

「宛のある旅でもない。……じゃあ、異世界でもいいじゃないか」

「それとこれとははな────」

「我が最高の旅を提供するよ」


 なんか、悪魔との取引みたいだな。魂を要求されたり?

 でも、面白そうだ。ちょっとワクワクする。


「最高の旅って何をしてくれるんだ?」


「いきなりの他力本願に我、驚き!」


 かなり棒読みで梟が答える。


「オイッ!!」


「冗談だよ、我が色々とサポートしてあげよう。それと、その我が創った体をあげよう」


「サポートって何を?それに、体が無いのは元々はお前のせいだろ!」


「まず、その体は我が創った体だから成長も寿命もないよ。でも、傷は付くし、壊れるけど」

「体に寿命はないけど、魂にはあるよ。個人差があるから、魂の寿命はどれくらいかはわからないけど」

「成長はとある方法で君自身が選んで成長させてね」


「まさかのスルーかよ。……まあ、いいや。で、とある方法って?」


「それは後で話すよ。とりあえず、まだ名前も聞いてないからね、君。自己紹介をしてくれるかい?」


「人に名前を聞くときは、まず自分から……まあ、いいか」


「俺の名前は佐伯さえき 幹雄みきお。22才」


「うん、よろしく。ミ「どこかのテーマパークのネズミと同じ名前で呼ぶな!」


「じゃあ、何て呼べばいい?」


「さえでいいよ」


「わかったよ、サエだね」


「で、お前の名前は?梟か?」


「我の名前は大分昔に無くなったよ。だから、今はこう名乗るのが正しいかな」


『魔王』


 ……悪魔じゃなくて魔王と取引か。



 ▲▲▲ 蛇足


 魔王「旅の資金作りに働いていたんだね」

 サエ「いや、スマホ変えたばかりで支払いが……」

 魔王「……」

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