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真夜中の出来事

「会長の部屋はいつも綺麗に片付いてるね」


 榊の後ろから小田切さんが顔を出す。


「えぇ? いつもこんなに綺麗なんですか。私の部屋とは大違い」


 相沢さんは口に手を当てて驚いた。


「そう。よく会長の家で飲み会を開くんだけどいつも綺麗なんだ」

「そんな事無いわよ。みんなが来るから片付けたの。いつもなら脱いだ物とかその辺に散らかってるのよ」


 それを聞いて榊の妄想は今にも爆発しそうだ。


 大学から帰ってくる会長。そしておもむろに服を脱ぎだす。玄関から寝室まで一枚一枚服を脱いでは床に落としていく。そしてとうとう下着に手をかける。


 誰も会長が裸族だとは言っていない。だがそこは年頃の男の子、致し方ない。


「下村くんありがと。操作方法はバッチリだわ。今夜は楽しみね」

「よし、それじゃあ男性諸君。我々も寝る支度をしようじゃないか」


 小田切さんの掛け声で榊はやっと妄想から抜け出せた。今日は眠れないと思っていたが、榊は会長に起こされるまでグッスリ眠っていた。





「みんな、起きて! やったわ、ビックリよ!」


 会長が勢い良く客間の扉を開けて入ってきた。

 榊は驚いて起き上がった。小田切さんも起きたが下村さんはまだ寝ている。それにしても酷い寝相だ。


「もしかして、本当に何か起きたのかい?」


 小田切さんは立ち上がりながら簡単に身だしなみを整える。榊も寝癖がないか触ってみる。大丈夫そうだ。


「そうなのよ。みんな早く来て」


 会長は興奮気味に話すと寝室へまたかけていった。あまりに突然過ぎて、榊には状況が分からない。


「さあ、下村君起きて。何かが起きたらしいよ。ほらっ」

「あの、何があったんでしょうか?」

「僕に聞かれても分からないよ。でもあの会長の喜び様は何かしらの怪奇現象が起きたんだろうね。是非確かめに行こう」


 榊はドキドキした。昨夜話していた事が本当に起きたのだろうか。


「下村君も起きたね。あぁ寝癖が……。いや、取り敢えず行こう」


 榊と小田切さんの後に凄い寝癖の下村さんも続く。榊達が寝室に着くと相沢さんがベッドへ腰かけており、会長はその顔を覗き込んでいる。須藤さんはその横に立ち、心配そうに二人を見つめていた。


「どう? 気分は。何か覚えてる?」


 会長は優しく尋ねる。相沢さんは状況が分かっていないようでキョトンとしている。


「覚えてはいないようね。でも大丈夫よ。バッチリ撮ってあるんだから!」


 会長はビシッとビデオカメラを指差す。会長の顔はとても生き生きとしている。


 下村さんは既に三脚からビデオカメラを取り外し始めていた。凄い寝癖で表情もぼうっとして、どこを見ているか分からない。それでも下村さんの手は滑らかに作業を進めている。


「テレビお借りしまああぁす」


 下村さんはアクビ混じりに言うと寝室を出ていった。みんながそれに続く。


 下村さんはカバンの中からケーブルを取り出してテレビの後ろでゴソゴソし始めた。榊達はそれをドキドキしながら見守った。


「あれ? 会長のテレビにはHDMI端子無いんですか?」

「えっと、ご免なさい。良く分からないわ」

「画質が全然違うんだけどなぁ。まぁ良いか」


 下村さんはまたカバンから別のケーブルを取り出して作業を再開した。榊でも見た事がある赤、白、黄の三色のケーブル。あるんだったら最初から出そうよ。今画質は問題じゃないでしょうが。


 榊達は今か今かと作業が終わるのを待っている。相沢さんはまたうつらうつらし始めていた。


「これで接続完了です」


 再びテレビの裏から出てきた下村さんは幾分シャキッとしていたが、寝癖はそのままだ。そのギャップが滑稽で、榊の期待感は下がる。だって下村さんからの現実感が半端ない。これから超常現象を見ようという雰囲気じゃないだろ。


「後は再生するだけですが、良いですか?」


 下村さんは勿体ぶって一同を見回す。


「お願いするわ」


 会長は言った。その目はプレゼントを開ける前のように輝いている。榊にはその表情が眩しく映った。だがビデオの中身を思うと、ちょっと不安だ。万が一本当に何かが映っていたら……。

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