園田美緒のオカルト
「でも、何故相沢さんだけだったんですかね? 今の話だと僕も一緒に襲われても、不思議じゃ無さそうですけど」
「多分温泉に入った順番かも。悪霊が硫黄を流して川の生物を殺したんだったら、硫黄が悪霊の力みたいなものでしょ? 温泉にはもちろんその硫黄が含まれている。だから温泉に入る事は悪霊の手の中に入るようなものだったのかも。もし榊君が相沢さんより先に温泉に入っていたら、危なかったかもね」
でも全ては推測なんだからね。園田さんは笑いながら釘を刺した。榊はそこでやっと気が付いた。あの時何があったのか。ずっと気になっていたんだ。
でもそんな事誰に聞けるだろう。もしかすると園田さんはその事に気付いてくれていたのかもしれない。でも、須藤さんに占いをお願いしたのはそれだけじゃない。でもそれはまだ榊自身ハッキリしない。
「あの、卒業したら実家に帰られるんですか?」
「そう。実家のお寺を継ぐの。榊君のお陰よ」
園田さんは笑うが、榊には何の事なのかさっぱり分からなかった。
「実は私、霊とか魂とか全然信じてなかったの。それでオカ研に入って色々追いかけていたの。でも去年まではやっぱり継ぐの辞めようかと思ってた。だって、そう言うのを信じる人に継いでもらった方が良いでしょ? 檀家の人だって多分そう思うんじゃないかな」
会長は窓の外を眺める。榊もつられて眺めてみる。今日は暖かく、何人かの生徒が通り過ぎていく。書類の束を抱えてせかせかと歩いている人、笑いながら歩いている三人組み。やけに外が明るく感じた。
「でも今年は榊君んと相沢さんのおかげで色々あって。だからちょっと頑張ってみようかなって思ったの」
榊としては複雑な気分だ。離れ離れになるのは純粋に寂しい。
「もし良かったら遊びに来て。一緒に座禅でもしましょう」
榊は可笑しかった。園田さんなら本当に座禅させそうだ。その時突然、榊はやっと自分の気持ちが見えた。
僕はオカ研に居る理由を見失っていたんだ。別にオカルトが好きじゃない。園田さんは卒業し、霊感も無くなった。それなのに居て良いのか? でも、あの園田さんでもそうだったんだ。榊は勢いよく立ち上がる。
「園田さん、頑張って下さい」
「ありがとう、榊君もね」
「はい、頑張ります!」
榊が図書室から出てくると相沢さんが居た。
「あっ、もしかして待っててくれた?」
「ううん、たまたま通りかかりました」
相沢さんは笑って敬礼をした。
「そっか……。それじゃあ甘いの食べに行く?」
「うん! 行こう行こう!」
あれ以来、何かを感じる事は無くなり、会長も居なくなる。それでもオカルト研究会を続けていこうと思う。
理由はオカルト研究会が好きだから。そしてオカルト研究会に居る人も。
時期的には「死神の受難」の後に書いた作品です。
ホラーとコメディの中間を目指しました。……中途半端とも言いますね。
おかげでジャンルを選ぶ時に悩みました。
もっとファンタジー要素を求めていた方はすみません。
それでも楽しんで頂けたなら幸いです。