昔話、その後
園田さんがオカルト研究会を引退してから榊とは会う機会が無くなってしまった。卒業後は実家のお寺を継ぐのだと噂を聞いた事がある。
窓際のテーブルで本を読んでいる園田さん。窓からの光をたっぷりと受け、とても綺麗だ。榊はドキドキしながら同じテーブルに座った。
「あら、榊君も調べもの?」
「いえ、その……会長を見かけたんで」
「そう。でも元、会長よ」
園田さんは読んでいた本に視線を戻す。
榊も自分の手元を見詰める。会長の本をめくる音だけが聞こえてくる。須藤さんの占いが言ってたのは園田さんの事だったのか。でも、このまま座ってたんじゃ占いが無駄になる。
榊が何か話さなくちゃと、意を決して会長に目を向けると会長も榊を見ていた。榊の心臓は止まりそうになった。
「そう言えば湯川温泉へ行った時の事覚えてる?」
「はい、もちろんです」
「あの時の事で小田切君と話した?」
「いえ、特に話してないです。そう言えばあの時の事は、反省会とかしませんでしたね」
「だって反省する事無いじゃない。 何が起こったのか分からないし」
「確かにそうですね。僕も相沢さんも何も覚えてなかったですからね」
榊は照れ臭そうに頭をかいた。相沢さんは温泉から部屋に戻って来たあたりから、榊は川で会長達を見つけたところから記憶がハッキリしていなかった。
「小田切君はね、曖昧な事だったり、掘り返す必要ない事は話したがらないから。だけど私の卒業祝いって事で無理矢理聞き出しちゃったの。聞きたい?」
会長はイタズラっぽく笑った。榊は期待のこもった目でうなずいた。榊自身もあの時、何かがあったのは分かっている。でもそれがなんだったのかは分からなかった。
「あの場所には元々神様が居て、追い出された山の神様が相沢さん、後に神様の資格を失った川の神様がキミ。榊君に憑いていたんじゃないかって事なの」
「僕に、神様がですか?」
「そう。始業式の時、川の神を近くに感じた山の神は相沢さんの体を使って訴え始めた。川の神様が心配だって。そして実際にあの場所へ行った時、山の神様が戻ってきたと悪霊が思って相沢さんごと殺そうとした。でも川の神様の榊君と力を合わせる事で逆に悪霊に打ち勝った。そして神様は山と川へやっと帰る事が出来ました。めでたしめでたし」
「帰れたんですか?」
「推測よ。でもあれ以来、榊君は霊感が無くなったみたいだし、相沢さんも平気そう」
榊はドキドキした。何に対してなのか分からないが、なんか心地好いドキドキだ。