時は過ぎて
「それじゃあ次回の『心霊スポット☆巡礼ツアー2015』については以上で良いかな?」
小田切さんは全員が頷くのを確認する。
「じゃあ今日はここまで。みんなお疲れ様!」
小田切さんの号令でみんなは帰り支度を始める。
「ねえ、榊君。帰りに甘いもの食べに行こうよ」
「ゴメン、今日はちょっと……」
相沢さんの誘いを榊はやんわり断る。
「そっか……。じゃあ大人しく帰って、レポートでもしようかな」
「また今度行こう」
「絶対だよ」
榊は相沢さんに笑いかけると席を立つ。そして須藤さんの所へ行く。
「副会長、あの……占いをお願いしても良いですか?」
「今まで通り須藤で良いわよ。じゃあ座って」
須藤さんはチラリと辺りを見回す。それに小田切さんは気付いた。
「さぁ、用事がない人はさっさと帰ろう」
何も言わずに人払いしてくれた小田切さんに榊は頭を下げる。小田切さんも榊にニッコリ笑いかけると教室を出ていった。
「さすがオカ研の新会長ね。気が利くじゃない。それで何を占って欲しいの?」
「それが、何て言えば良いのか……」
須藤さんは何も言わずにタロットを切り始める。
「……その、自分でもどうしたいのか、何が引っ掛かっているのか分からないんです。すいません」
「そういう人も少なくないわ。気にしないで」
須藤さんはタロットを並べながら言った。榊は少し緊張した面持ちでそれを見守った。
「……図書室」
「えっ? 図書室ですか?」
「そう。行ってみたら?」
「……あの、今からですか?」
「そう。今から」
「はぁ……ありがとうございます」
須藤さんの言っている事は良く分からなかったが、榊は取り敢えず従ってみようと席を立った。
「分かってるとは思うけど、占いは絶対じゃないからね」
「はい、分かってます。自分もオカ研ですから。本当にありがとうございました」
榊はもう一度お礼を言った。須藤さんはそんな榊に笑顔で答え、タロットを片付け始める。
榊は鞄を持って部室を出ると、真っ直ぐ図書室へと向かった。占いの意味は分からないが、須藤さんを疑う必要はない。
須藤さんがそんな事を聞いたら、また『占いは絶対じゃない』って言うんだろうな。それでも僕は須藤さんを、占いをではなく須藤さんを信じる。
試験時期を過ぎた図書室は人が少ない。取り敢えず来てみたがどうして良いか分からない。
ブラブラと図書館の中を歩いていると、榊は見覚えのある顔を見付けた。
オカルト研究会・元会長、園田さんだ。