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小田切達也と言い伝え

 榊と小田切さんは川沿いの道を歩いていた。川は浅く広い。道は手入れされている様子が無く、所々アスファルトがひび割れしている。


「今回も参加してくれてありがとう」

「自分もオカ研ですから」

「おっ、嬉しい事言ってくれるね。でも会長に行くか聞かれた時顔が引きつってたよ」

「えっ」


 榊は自分の顔に手をやると小田切さんは笑った。


「でも折角ならみんなで来たくてさ。そこは黙ってたよ。悪いね」

「そんな謝らないで下さい。でもそんな顔してただなんて、恥ずかしいです」

「榊君はすぐに顔に出るからね。入会した時は会長の事ばかり見てたしね」


 榊はいよいよ顔が赤くなる。


「会長はオカルトの事ばかりだからね。色々大変だと思うけど、頑張って」

「その、小田切さんは会長の事どう思ってるんですか?」

「今まで全く惹かれなかったと言うと嘘になるけど、今は信頼出来る仲間だと思ってるよ。安心したかい?」


 小田切さんは笑った。榊は何も言わずに笑い返した。僕は会長とどうなりたいんだろう。榊は自分でもハッキリしなくなっていた。上手く表現出来ないが、会長に対する好きだという感情よりも憧れの方が強いようにも思えてきた。


 榊が思い悩んでいると、小田切さんは道から外れ、川の中に手を入れる。


「結構温かいね。温泉の成分なのか、温度のせいなのか分からないけど、確かに魚とかは居そうにないね」

「言い伝えは本当なんですかね」


 小田切さんは榊を振り返ると笑った。


「榊君は言い伝えを信じるのかい?」

「うーん」


 榊は正直に言っていいものか悩んだ。


「小田切さんは信じてますか?」

「それはどうだろう。魚が居ないからそんな話が出来たのかもしれない。榊君も鬼や幽霊の話を信じてはいないだろう?」

「良く分からないです」


 幽霊ならもしかすると……。そんな考えがふと浮かんだから、榊は素直にそう言った。そんな榊を見て小田切さん笑顔は物悲しげになった。


「そうか……。色々あったからね。分かる事と分からない事をしっかり見極めないとね」


 小田切さんはまた道に戻って歩き始める。榊もその後を追う。


「まずは神様の言い伝えがあるのは分かった。川の中にも魚が居ないのが分かった。じゃあ分からない事は?」

「何ですか?」

「神様の話が本当かって事だよ」

「えっ? それはまあ、そうですね」

「後はその話が事実かどうか、確認する方法が分からないよね」

「例えばお年寄りに聞くとか、古い文献を調べるとかじゃダメなんですか?」

「それだと言い伝えがあるって事までしか確認出来ないよ。だって当時の人は勿論生きていないし、最初に文献を残した人も居ない。内容が事実かどうか確認する方法は何か思いつくかい?」


 榊は考える。全く思いつかない。


「分からないです」

「そう、でもそれで良いんだ。今回大切なのは神様の言い伝えがある事だけ。それだけ分かっていれば良いのさ」

「そんなもんですか」

「そんなもんさ。オカルトなんか答えが出ない事の方が多いんだ。だから色々行ったり、やってみたりするのさ。安易に答えを求めず、じっくり向き合わなきゃ」


 榊は小田切さんの言葉を噛み締めた。自分のオカルトに対する姿勢が少し恥ずかしかった。ただ何も考えず全て否定していただけじゃないか。

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