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榊直幸のオカルト

 コテージの中は一段と暗く感じた。榊は会長達が寝ていた部屋へ入ると相沢さんが座り込んでいるのを見付けた。


「相沢さん大丈夫? 何かあったの?」

「ゴメンね。ちょっと立ちくらみしたみたい」


 榊が相沢さんを外へ連れて行こうとした時、開け放たれた扉の所で影が動いた。


 影はそのままジワリと部屋の中に侵入してくる。


 おかしい。廊下の窓はもっと奥の方にある。この部屋に影を作る事は出来ないはず。


 部屋の窓を見てもカーテンが閉まっている。カーテンの隙間から月が怪しく光る。こちらも影を作るようなものは何も無い。


 相沢さんは胸を押さえている手に力を込め、先ほどよりも苦しそうに見える。


 何だ、この影は……。そんな訳無いよ! 影が何で動いてるんだよ!


 榊もパニックと恐怖で動けなかった。


 影は形を成さないまま、榊達の目の前まで迫ってきている。


 いっ、嫌だ! 来るな! 誰か助けて……誰か!


 榊は意識を手放そうとした瞬間、近付く影を右の掌で叩いた。


 どうしてそうしたのか分からない。気が付けばそうしていた。叩く瞬間、自分の掌と床の間がカメラのフラッシュの様に白く光った………様に見えた。


  榊は何度か瞬いた。暗闇で強い光を見れば残像が残る。だが榊の網膜には何も残っていない。


  何が起こったの? ……そうだ、影が! ……あれ?


 榊が我にかえった時には、既に影は消えていた。目の前には薄暗い床があるだけだった。


  相沢さんの呼吸も落ち着いて来た。


「ふう、何か楽になってきたよ。えっと、何がどうなったの?」

「さあ。……何だったんだろう」


 榊は笑らいだした。恐怖から解放された安堵感からか、込み上げる笑いを抑えきれない。相沢さんもそんな榊を見て思わず笑ってしまう。二人は声をあげて笑った。


  ひとしきり笑うと榊は涙を拭いた。


「そうだ。みんな心配してるよ」

「そうだね、よっこいしょ」


 相沢さんは立ち上がると深呼吸して、ゆっくりと身体を伸ばした。


「うん! もう体も大丈夫。ところで、何でこんな時間に外で集合なのかな?」

「ああ、それね。そうだね……。うん。とりあえず行こうか」


 二人が外に出てくると会長達が駆け寄ってきた。


「大丈夫? 何があったの?」

「えーと。取り敢えず問題無くなっちゃいました」

「無くなっちゃった? ……もしかして、霊的なものも無くなっちゃったの?」

「たぶん……」

「そう。でも良かった、二人共平気そうで。それじゃあ中に戻って、撮っておいたビデオをみんなで見てみましょう」


 榊達はコテージに戻るとテレビの前に集まった。ビデオには特におかしなものは映っていなかった。もちろん榊が見えたと感じた光も。


 結局映っていたのは、相沢さんが会長と須藤さんに続いて部屋を出ようとした時、苦しそうにうずくまり、戻って来た榊が床を凝視して叩いた。ただそれだけだった。

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