第5話
というわけで今のこの状況にいたっている訳なのだ。
「人の家だとも思わずガツガツ食いやがって…」
俺は小声でいったがやつには聞こえていたようだ。
「…何よ文句でもある?」
かなりムカツクのである。
非常である。不当である。
理不尽である。不純利である。
不本意である………………
俺の頭の中はそんな言葉達でパラダイスであった。
「まぁまぁ、いいじゃない…」
睨み合う奴と俺に弱々しく止めに入る母さんだが。
むしろこんなやつと喧嘩するほうが面倒だとわかっていた俺はふんっと言って飯をたいらげた。
飯も食い終わり、俺一人の優雅なひとときの始まり…なのだが。
只今、俺の部屋には奴がいるのだ。
「ねぇ、この続きまだ?」
そいつは俺のベットを占領し、さらに漫画まで押収してそんなことをぼやいているのだ。
「ねぇってばー」
横で何か言っているが。
まぁ無視だ。
なぜなら俺は今、戦場にいるのだから。
黒鉛という物質が白い薄い板にぶつけられ、それが線となって現れる。
戦況はまさに冷戦状態だ。
「ねぇ〜 聞いてる?」
俺は口うるさい兵士に怒鳴りつける上官のように言った。
「うるさい!勉強中だ!」
そうなのである。
テストが近いのである。
むしろ受験生なのである。
勉強して当然なのだ。
それを邪魔するこいつがいけないのだ。
しかし、その瞬間冷たい空気が流れた。
「無駄よ… 明日から大変なことになるわ。勉強なんてやる暇なくなるんだから…」
「・・・」
なんて言うか、その意味ありげな一言に俺は恐怖感を覚えた。
「ど、どういうことだよ?」
俺は込み上げる恐怖感をなんとか押さえ付け聞いた。
「魔女達が降りてくるのよ…そして戦いが始まるの。」
彼女の表情を見るだけで鈍感な俺でもそれを理解できた。
「・・・」
俺は声も出なかった。
寒かった。
恐ろしかった。
「だからね!今日は楽しく過ごすの!」
そいつはこんなに恐ろしい状況にも笑って見せた。
こいつだって怖いのだろう。
なのにこんなに笑ってられるなんて、俺は自分が情けなくてしかたなかった。
「そうだな」
俺はゆっくりと微笑んだ。