第4話
不覚だ。まったくもって不覚だ。
だいたい、こんなことがあっていいのだろうか…
現在、食卓には俺、妹、母さん、父さん…
そして、奴!
まぁ、いわゆる夕飯なわけだが…
どうして奴がいるのかというと。
午前11時。
そこで事態は起こった。
俺と奴が家に着いた時間である。
自宅の扉を開けようと手を延ばしたとき、俺は動きを止めた。
ふと、思ったのだ。
こいつを家に連れ込んだらいったいどうなる?と。
無論、母が家にいる。
つまりだ、勘違いされてもしかたがないわけなのだ。
困る。非常に困る。
こいつが俺の彼女だと思われるのは非常に困る。
「どうしたの?はやくしてよ!」
奴は駄々をこねる。
俺はそいつを無視し思考を廻らせる。
俺の部屋はこの扉を開けてすぐ近くの階段を上がって短い廊下を一番奥まで進んだところだ。
そこまで気付かれずにいければ…
「よし」
俺は決断した。
「靴を脱いで手に持ってくれ」
俺は奴に言う。
奴は怒るかと思ったがそんなことはなく言う通りにした。
「それで家に入ったら俺の部屋まで突っ走るぞ」
なぜか真剣もーど。
「わかったわ」
ふぅ。俺は軽く一息つく。
「行くぞ」
「うん」
そして俺はドアノブに手を当てた。
ゆえに勢いよく開けるのであった。
しかし、俺は愕然とした。
扉を開き、まさに一瞬で俺のたくらみはどこか遠くのほうに葬られたのだ。なぜなら…
扉を開けたその先には母親がいたからだ。
「か、かあさん!?」
その瞬間、俺はひっきりなしに叫んでいた。