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薄板は天然の馬鹿が運ぶ

 朝礼と一限の授業が終わり、魔物達が学校中に散らばる休み時間。

 結局俺はあの後白状し、カルマ達も呼んで学級長に別の板についてのレクチャーを受ける事になった。

 関わるのは嫌だが、俺も正直この板の正体は気になっていた。

 今となっては関与する事間違いなしだが、もうこうなったらヤケである。地獄の果てまで付き合ってやろう。

「それでは学級長、僕達が持つこの板について知る範囲で教えてくれますか?」

 朝のメンバー四人が集まったところで、カルマが代表して学級長に説明を要求する。

 場所は朝と同じく教室の後ろで説明会は行われる。学級長は誰もいない屋上で話したかった様だが、一刻でも早く真相を知りたいと切に願うカルマとニクスに押し負けここで説明することになったのだ。

「分かりました。ではまずフォルト君とカルマ君は板を私に見せて下さい」

 言われるがままに板を渡し、学級長は食い入る様にそれを見つめる。

 二枚の板の両面を全て見終え、納得した表情を浮かべて学級長は俺達に板を返した。

「なるほど……やはり私が見た物と同じですね」

「学級長も前に見たことがあるのか?」

「ええ。とはいえ手にしたりはしておらず、遠目から見ただけですが」

「でもそれって見間違いの可能性もあるんじゃ……」

「だから今、その時見た物体がその板と同じ様な物であることを確認したのですよフォルト君」

「それで、その板はどこで見かけたんだ?」

「私はこれまでに二枚その板を見つけました。まず一枚目は、私の父の部屋にあります」

 板の在処を聞いた途端に固まる四人。ニクスに至っては口をあんぐり開けていた。

「えっと、学級長のお父さんって確か……」

「十年ぐらい前に謀反を起こした魔王軍参謀――アルベルト・アリシアじゃねーか!」

「お、おいニクス、そんなこと学級長の前で言ったら駄目だろ……」

「別に気にしませんよジョー君。私は過去の父の蛮行と向き合っているので」

「いや向き合うって……」

「そっそれでエリスさん、もう一枚はどこにあるのっ!?」

 重くなりかけた空気を修正するため慌てて会話に入る。

 そうですね、と学級長は軽いジト目を俺に向けるが、すぐに戻し説明を再開した。

「二枚目はここ、メーティス学園の職員室にあります」

「職員室に?」

「恐らくマリア先生の所有物だと思われます。二枚目の板はマリア先生の机の上に置いてありましたので」

「マリア先生がなんで持ってるんだよ」

「それは私にも分かりません」

「とにかく、マリア先生が持っているんだったら頼めば貰えるんじゃないかな?」

「よし、そうと決まれば職員室に行こうぜ!」

「待ってください」

 足早に教室を出ようとしたニクスが振り向く。

「何だよ学級長?」

「朝礼でマリア先生が言ったように、今日のこの時間は職員会議があるため職員室には入れないよう妨害する魔法がかけられています」

「取りに行くのは次の休み時間が良いって事だな。頼んだぞニクス」

「え、俺一人で行くのか? 今日は剣術無いだろ」

「確かにそうだが、三限に飛行術があるからな」

「残念ですが、私も同じく飛行術を専攻しているので行けません」

 飛行術の授業はメーティス学園の敷地外で行われている。剣術担当でもあるガアク先生(あんな筋肉質な身体で飛べるとは信じられない)の後に続いて空を舞い、空中での戦い方や上空からの情報の見方などを学ぶらしい。

 結構楽しそうなのでやりたかったが、翼を持たない悪魔であるルシファーの遺伝のため専攻しなかったらしい。そこはサキュバスの遺伝子が勝ってほしかったところだ。

「ええ……じゃあカルマは?」

「僕は状態異常の授業があるから、早めに教室に行っていないと駄目なんだ」

 状態異常の担当は誰だか知らないが、とても時間に厳しい人が教鞭を振るっているという。

 それだけならまだ良いのだが、この授業を行う時だけどんなに早く教室に入っても必ずドアのトラップが作動してしまう。トラップは電流を流す普段のとは違い、ドアを通過した者に様々な状態異常をかけるという特別なものだ。

 「いついかなる場合でも冷静に」が担任のモットーらしく、授業が始まるまでに状態異常を解除出来ていて初めて出席扱いになると言う。

 これが結構厄介で、かかった状態異常によっては欠席ギリギリになることもあるらしい。毒とかステータス低下ならまだ自分だけでも解除出来るが、麻痺や睡眠、混乱に石化など自分一人ではどうにもならない状態に陥ると誰かに解除してもらうしかない。

 しかもこの世界の状態異常の解除には時間がかかる。早めに何人かが教室に入って自分達の状態異常を解除し、後から来た者のサポートをする必要があるため、カルマは早く動かなければならないのだ。

「マジかよ……フォルト、お前は大丈夫だろ!?」

「僕も筆記術があるよ」

「なら一緒に来れるだろ!? 使う教室もここなんだし!」

「そうだけど、しばらくはマリア先生と近くで向き合いたくなくて」

「それを言ったら俺も向き合いたくないっての……」

 そう叫んだニクスは力無く項垂れる。よっぽど一人では行きたくないらしい。

「マリア先生ってさあ、結構根に持つタイプなんだよ……気にしてないって言っている事こそ頭ン中でずっと考えてるんだ……」

「ねえジョーくん、ニクス君はマリア先生と何かあったの?」

「アイツというか、さっき言ったアイツの姉であるセレネさんとの間でだがな」

「と言うと?」

「何ヵ月か前にマリア先生がニクスの家に来て、セレネさんと話す機会があったんだ。ちなみに内容は二人と愛人関係にあった魔王様の事だ」

「まさかだけど、それが修羅場に発展したとか……?」

 ジョーは黙って頷く。なるほど、そこから親父の浮気が露呈したんだな。

 睨み付けた物全てを石に変えるマリア先生と、正確なショットを遠くからでも成功させるセレネさんの戦い。

 催し物としてなら大金を叩いてでも見てみたいが、同じフィールドに立たされたんじゃ堪ったもんじゃない。そりゃニクスもトラウマ作るわな。

「分かった分かった、僕も行くよ」

「本当か!?」

「ニクス一人じゃ大変そうだしね」

「ありがとよフォルト!」

 満面の笑みで俺の手を握るニクス。まあ今朝一緒に登校してくれた礼があるしな。

「そういえばニクス君は三時限目に何があるのですか?」

「え? 俺もカルマと同じ状態異常の授業だけど」

「…………え?」

 聞き出した学級長と俺とジョーが固まる。そして同時に振り向く先は何の事かとキョトンとしている眼鏡デュラハン。

「ああ、そういやニクス君も状態異常は専攻しているんだった。結構人気のある授業だから参加人数も三クラス分くらいいてうろ覚えで」

 ワンテンポ遅れて思い出したかの様に言い出しカルマは手を叩く。やっぱカルマは天然と言うかネジが抜けてるわ。

 いやそれより問題なのは、それを今の今まで言わずに話を進めてくれたこの天然の馬鹿である。

「ねえエリスさん、前言撤回して良いかな?」

「珍しくフォルト君と意見が合いますね。私もそう思っていました」

「奇遇だが俺もだ。という訳でニクス、やっぱ一人で行ってこい」

「ええええええええ!?」

 いやホント、マリア先生としっかり向き合って来い。板はついでで良いから。

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