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ある少女の追想 ~後編~

 回想多めな回だから過去の話読み直してみると文法ひでえなwww今も変わらない様な物だけどwww

 開始前に予想していた範囲が見事的中した授業が終わり、担当のリーゴン先生が教室を後にする。

 私は教科書を麻袋にしまい込み、窓際へと向かう。

 向かいの屋上を覗き見るが、そこからフォルト君の姿を見つけることは出来なかった。

 ふとその時、教室の外からフォルト君の声がした。

 黒板横の扉の方を覗くと、廊下でリーゴン先生に平謝りしている彼があった。

「すいません、休み時間を屋上で過ごしていたら授業に出られませんでした」

「屋上でって……あそこには転移装置ワープホールがあるじゃないか」

「行きの時は使えたんですが、帰りではどういう訳か使えませんでした」

「故障ねぇ……」

「言い訳だと疑われるのも仕方無い事だと思います。でも決してリーゴン先生の授業をサボろうとしたわけではないという事を主張する為に、敢えて言わせていただきます」

「分かった分かった。後でメンテナンスに不備が無かったか調べるよ。今度からは遅れない様にな」

「ありがとうございます」

「それと今日の授業だが、教科書63ページのスライムの環境適応性をやったからな。いつもよりも深く入った内容だから大変かもしれんが、一応目を通しといてくれ。次の授業はそこの小テストからやるからな」

 そもそも誰が授業に出ていないかをそこまで気にしないリーゴン先生は、フォルト君に顔を上げさせて去って行く。

 悪いことをしてしまったと猛省しているフォルト君は、軽く項垂れながら教室に入ってきた。

 さて、リーゴン先生は許している様だが、私はそうはいかない。

 フォルト君の遅刻は二十分前に膨らんでいた私の期待を、空気を張らせた風船に針を刺すように急激に萎ませたのである。私怨も入っているが、どうも納得行かなかった。

 装置の故障という事情があったからといって、簡単な注意だけで済まして良いものなのか。リーゴン先生の対応は、生徒の指導として正しいものなのか。

 ここは私が先生の代わりにお灸を据えるべきなのだろう。それが学級長としての役割の一つ、同級の仲間の失態を窘めることだ。

 フォルト君が横を通り過ぎようとした時に、私は言い放った。

「やはり遅刻しましたか。転移装置ワープホールの使用には自信があると自負しておりましたが、そのような様では目も向けられませんね。自分の発言にも責任を取れないのに、魔王になれるとはとても思いません」

 少々言い過ぎだった様な気もするが、これも彼の事を思っての発言である。

 フォルト君は意気消沈しながらも筆記用具を纏めて教室を出た。

 次の授業の剣術が行われる格技場に着くのが一秒も遅れないようにしようという努力が見て取れて、私は学級長としての達成感を覚えていた。

 しかしいつまでもここで立っている暇は無い。次の授業は剣術であり、準備をするために格技場に向かわなければならないのだ。

 授業に遅れたクラスメートを注意したばかりだというのに、次の授業を遅れていては私の学級長の面子が立たない。

 途中の転移装置の故障もあるので、早めに行った方が良いのだろう。

 休憩時間は四十分とまだ有り余っているが、私は格技場へと向かった。


「ではこれより、今日の鍛練を開始するっ!」

 ガアク先生の掛け声と共に剣術の授業が始まってしばらく経った。

 準備運動は既に完了しており、今は今日の授業でのパートナーを決める時間である。

 この学年の“基準者”である私は、己の実力を測るためにとパートナーを頼まれることが多い。

 しかし私はそれを全て断っている。そもそも私には剣術を指導する才は持ち合わせていないため、頼まれたところでどうしようもないのだ。

 その為剣術での彼らの力量判断はジョー君に委ねている。剣術の“超越生”は彼だけであるためお誂え向きなはずだ。

 となれば、私も自由に相手を選ぶことが出来る。

 私はいつものように、誰とも組めずに狼狽しているフォルト君に近付いた。

「フォルト君、もしかしなくても、今回も溢れたんですか?」

「あっ……そ、そうなんだ。みんなに先を越されちゃってね」

「次期魔王がそんなに消極的でどうするんですか」

「は、ははは……」

 呆れる私にフォルト君は愛想笑いを浮かべる。当たり前の事を言われているのだから無理もない。

 フォルト君は極度の人見知りだ。転入当初は話し掛けてくる生徒達にビクビクと挙動不審になっており、親同士の仲もあり前々から面識のあったはずであるジョー君やニクス君とまともに話すのもままならなかった。

 今は普通に会話をこなしているが、それの殆どは相手から声を掛けられた時のみ応対しているだけである。自分から話し掛けるのはまだ苦手なようで、故に剣術のパートナーを作るのは困難を要している。

 私が剣術の指導をジョー君に完全に委託したのは、フォルト君とペアを作り彼のコミュニケーション力を鍛えようと画策しているからなのだ。

「全く……仕方ありませんね、今回も相手をしてあげますよ」

「い、いや良いよ! 他のところに入れてもらうから!」

「フォルト君、あなたの記憶力はニワトリ並みですか? 女子の専攻者数も奇数なので、そうすると一人余ってしまうんですよ」

「それくらい覚えているよ! 僕が言いたいのは手を煩わせたくないって事だよ!」

 フォルト君はそう言って私とペアを組むことを拒むことが良くある。相手を自由に選ばず敢えて自分と組もうとする私への彼なりの心配りなのだろう。

 ……少なくとも、親同士の複雑な関係故にフォルト君が私から離れたいからではないことを祈りたい。

「良いですかフォルト君? 二時間しかない授業の中、二人一組で練習しても時間がギリギリになるのです。そこにあなたが入ったら、他二人の練習時間がもっと短くなってしまうじゃないですか」

「そ、それは……そうだけど……」

「あなたは王位継承と共に学校ここを離れるから分からないでしょうが、普通の生徒は選択科目の一つでも単位を落とすと落第になるんです。その事も分かっているのですか?」

「…………」

「そうだそうだ」

「エリスさんの言う通りよ」

 沈黙するフォルト君に周囲からの野次が飛ぶ。その声に私は僅かに眉をひそめた。

 彼を説得するのに協力してくれるのは嬉しいのだが、その為に彼を責め立てるのはやめてほしい。

 私も蔑んだ様な口調でフォルト君に諭すことがあるが、これは彼を立派な魔王として育ってもらう為の方便である。必要以上には言わないし、必要以上に辛辣な態度を取るわけでもないのだ。

 尤もな話、今日の様にかなり苛ついていてその原則を破ることは稀にあるのだが。

「全く……今は少し抜けた所のある現魔王様も、学生の頃には一人前の社交性と協調性を身に付けていたと聞かされております。そこまで言わなくても、寧ろ誰でも出来る事であるはずなのに、それが出来ないフォルト君に魔王という役職は荷が重いのではありませんか?」

「…………」

「もう若くもないですし、魔王様も身を引かれて新しい魔王が誕生するまで間もないでしょう。勇者が来る来ない関係無しに、それがこの世界の終わりなのでしょうが――」

「……オイ」

「はい、なんですかフォルトく……っ!?」

 周りからの言い様に項垂れていたフォルト君が顔を上げ、私は静かに驚愕した。

 穏やかだったフォルト君の表情にあの尖った眼が再び現れ、怒りが積まれた目線で私を睨んでいたのだ。

 同時に、私の首筋へと彼の贋造の剣が襲い掛かる。

 私は少し動揺して反応がワンテンポ遅れたが、すかさず剣を取り出してこれを弾き返そうとする。

 しかしいつもの様に突き飛ばす事が出来ない。彼の力が普段よりも強くなり、私の剣を同じ程の力で押し返しているのだ。

「さっきから黙っていれば、人を中傷すること何個も何個もほざきやがって……」

「フォルト……君……?」

「テメーの言いたいことは分かったよ。要はつべこべ言わずにさっさとテメーとペアを組めってことだろ?」

 そう言うとフォルト君は目一杯私を押し飛ばし、尻餅をつく私に模造刀の切っ先を向ける。

「上等じゃねーか! 地方校の見栄っ張りな芋女吸血鬼が、テメーの気取った人生終了にしてやらあ!」

 格技場一杯に響かせて、フォルト君は高らかに私に宣戦布告する。

 周りを見渡すると誰もがこちらを眺め呆然としている。今は書類を取りに行っているガアク先生も、この場にいたのなら同じ反応をしていたのだろう。

 それ程今のフォルト君の行動はイレギュラーなものだった。私に汚い言葉を浴びせて、眉間に皺を寄せて激昂する姿など、普段の彼からは想像出来ないのだ。

 私も立ち上がるのを忘れる程驚いていた。しかしそれと同時に、彼を変えた存在は何かという私の中で渦巻いていた疑問に核心的な仮説が浮かび上がって来た。

 それは何故今まで思い付かなかったのだろうと自問自答する程単純なものである。余りに単純過ぎて、柔軟な発想を出来なかった自分に対する自嘲的な笑いが漏れてしまった。

 しかし今はそれを纏める時ではない。今はまず決闘相手に返事を送ろう。

「私の身勝手な要求に応えて頂きありがとうございます、フォルト君」

「お、おう」

「まさかあなたがその様な口調になるとは思ってもいませんでした。それでこそ魔王の血を引く者です」

 彼の言動を称賛するのはこれまでだ。にこやかだった表情を引き締めてフォルト君を睨む。

 確かに口調は魔王として相応しかったが、叫んだ侮蔑は間違いだらけで褒められたものではなかった。私は見栄を張った生き方をしている訳ではないし、この学校は魔界の中心となる地域に在るため地方校とは言えない。

 それらはまだ良い。どうしても許せなかったのは、私の人生――私の家族の人生を気取っていると貶したことだ。

 アリシア家の事情を知っているフォルト君がそんな心無いことを言うはずがないが、誰の口から発せられた言葉であろうとその侮蔑を許すことだけは出来なかった。

「ただ、私を芋女と言ったこと……後悔しないで下さいね?」

「…………おう」

 そういえば彼はそうとも言っていたなと思い出しながら忠告する。フォルト君の返事からは焦りが滲み出ていたが知ったことではない。

 いつもは少し手加減して練習に付き合っていたが、今日は全力でやらせてもらう。少し大人気ない気もするが、言葉による中傷に物理的な攻撃を当てても構わないだろう。

 そう考えながら、私はガアク先生が格技場に戻ってくるのを待っていた。



 脳内での回想を終えて、私はあの時付けた結論を纏め直す。

 フォルト君の周囲で動いていた見えない“何か”は、ゴーストやインビジブルマンの様な実体の不確かな魔物ではない。

 私はフォルト君の中に生まれたもう一つの人格がその“何か”の正体であり、フォルト君に助言を与え、時に交代しては行動を起こしている人物なのではないかと考えているのだ。

 フォルト君が週を跨いで突然数学が得意になったのは彼がその人格と相談して問題を解いたから。フォルト君が休憩時間に屋上で一人言をしていたのはその人格と会話をしていたから。フォルト君が突然私に刃を向けて宣戦布告をしたのは、その人格が私の物言いに殺意を覚えたから。

 あの日起きた騒動には、全てその人格が関係していたと考えることが出来た。そして私はその人格――私は“彼”と呼んでいる――を観察することにした。

 観察と言っても“彼”のいるフォルト君と以前のフォルト君との言動の違いを見付けて記録するという単純なものである。

 一つしかなかったはずのフォルト君の人格に“彼”が出現したことは余りにも突然であり、何かの兆候ではないのかと私は予想していた。

 その予想は見事に的中し、“彼”と遭遇した日の夜に魔王様がマリア先生の襲撃を受けるという事態に陥り、その数日後には何の前触れも無く勇者達が魔界に攻めて来た。

 マリア先生の襲撃については私にも負い目があるためこれらの出来事が連発したのは偶然だったとも言えるが、それにしては良く出来過ぎているのではないだろうか。

 勇者の進撃を阻止してから約一週間後には貧血で休んだ私を見舞うためにこの屋敷にフォルト君が赴き、更にその数日後である今日はおかしな状態になっていたカルマ君の様子を見るため死霊の谷まで向かった。

 この三週間という短期間の内に起きた大小様々な四つの騒動全てに、フォルト君は当事者や当事者の息子という形で関係していたのだ。

 二度ある事は三度ある、再三再四などと言うように、フォルト君の周りでまた何かが起こる可能性はある。次の日には“境界クロス”から人間の軍勢が召喚されることもあり得なくもない。

 先の勇者との戦いで戦力は大幅に削られているため、魔王城の結界もかなり弱くなっている。戦力の回復もまだ終わっていないというのに攻め込まれては魔界の存亡も危ういだろう。

 流石にそれは杞憂だが、近いうちにまた異変が起こるのは確実だ。

 私にその異変を止めることは出来ないが、“彼”の行動を読み取ることで何かが分かるのかもしれない。

 そのために私はフォルト君の小さな変化も見逃さないように観察しているのだ。


 インクが乾いたのを確かめてから羊皮紙をまた引き出しにしまい明日の予習でもしようかと考えていると、突然ドアがノックされた。

「おーいエリス、起きてる?」

「起きてますよ」

 父が三日月樹クレセントの葉を採り終えて家に帰って来たらしい。私が返事をすると父が部屋に入って来る。

「フェロモン抑制剤が無くなっていたけど、僕の部屋から持って行ったの?」

「そこの机の上に置いてありますよ。調合に使うんですか?」

「いや使わないけど、どこにあるのかなって。後で戻してくれれば何でも良いんだけどね」

「では今すぐ起きに行きますよ」

「いやいや、僕が持って行くよ。体調悪くしてるんだから無理に動かないで」

 私に動かせないようにと父は自分で瓶を拾った。

「しかしアレだね、この薬を服用したってことは、今日は何か興奮状態になるようなことでもあったのかい? 確かクラスメートのお見舞いに行くと言っていたけど」

「お見舞いに行った仲間にはフォルト君もいましたから」

「あー、サリバンちゃん遺伝のフェロモンなら短時間でそうなってもしょうがないね」

 私に事情を聞いてああなるほどと父が納得する。

 魔王様を射止めたサリバン様のフェロモンは強力な物であり、どうやらフォルト君にもそれが受け継がれているらしい。

 遺伝の性質上フォルト君にサリバン様と同じ力のフェロモンが備わっているとは考えにくいが、エマさんがあそこまで興奮していた辺りそれなりの力は持っているのだろう。

「この薬だけじゃ完全にフェロモンを除去するのは難しいから、やっぱり夕飯が出来るまで寝てた方が良いよ」

「それまでどれくらいかかりますか?」

三日月樹クレセントの葉を粉末状にしてから取り掛かろうと考えているから大体三、四時間かな」

「……普段と余り変わりませんね。分かりました」

「じゃあお休み~」

 父が部屋から出て行き、私はベッドには向かわず教科書を取り出した。

「さて、明日の予習でもしましょうか……」



 斜陽も地平線に沈む夕暮れ時。一人の少女を入れて高速で飛ぶ水色の光線が、薄紫の空を切り裂いた。

 少女は目的地を見付けると光線の高度を落とし、下界に女神が降臨するかの如く“死霊の谷”の土地に緩やかに降り立った。

 目の前にあるのは崩れかけた古城。数時間前に後にしたばかりのデュラハンの住み処。

 不安定になった呼吸を更に荒らげ、上気した顔を紅に染め、少女は門の中へと駆け出した。

「やあエマちゃん。()()()()()()()()()()()()()

 少女が辿り着くよりも早く城の玄関の扉が開かれる。奥へと続く闇の前で、自らの首を上に投げては弄ぶデュラハンが少女を迎えた。

「あ……あにょカルマ君、実はその……頼みてゃい事があってぇ……」

「頼みたい事? どうしたのそんなに興奮しちゃって」

「カルマ君にょお見舞いから帰ってきゃら……そにょ……何だか身体があちゅくて……カリュマ君が恋しくなってしみゃってぇ……」

 ワンピースの胸元を手で握り今にも爆発してしまいそうな興奮を堪えるエマ。

 カルマはそんなエマを介抱するべく、首を小脇に抱えながら彼女の歩みを手伝い応接間へと向かう。

「大丈夫エマちゃん? 応接間まで歩ける?」

「いぃ、一応何とか……エリシュさんは疲りぇていりゅだけって言ってたのでしゅが……何でゃかそれでゃけじゃにゃい気がして……」

「淫魔のフェロモンにやられたみたいだ。休息を取ればすぐに楽になれるはずだよ」

 応接間に入るとカルマはロングソファーにエマを横たわらせる。

 乱れた呼吸と赤く染まった頬、物欲しそうに目を瞑った顔のエマは、普段の持つことが無いであろう艶かしさを彼女に与えていた。

 しかしそんなあられもない姿を見せつける彼女に見向きもせずに、カルマは別の方を向いて何かを呟いていた。

「ジョー・サラマンドラはサラマンダーの竜戦士、ニクス・ブレイブアローはリリパット、エリス・アリシアは吸血鬼とフェロモンを発しない。となればこのフェロモンはやはりフォルト・ハイクローヴの力か……」

「か……カルミャきゅん……?」

「……ああいや、何でもないよ」

「こんにゃ迷惑をかけてしみゃってごめんにゃさい……」

「いやいや良いんだよ。僕はエマちゃんの彼氏なんだから、困った時に助けるのは当然でしょ?」

「……っ、ありがてょうごじゃいます……」

 愛しい彼の言葉に、エマは自然と感謝を述べながら笑顔を零した。

 しかしカルマの次の一言で、この笑顔は瞬時に固まる事こととなる。

「それにしても無茶な事をするんだね。()()()()()()()()()、学級長に諭されて一度家に帰って、暫く経ってからまだ興奮状態が治ってないのにここまで来るなんて」

「えっ……?」

 自分が学級長に一度“死霊の谷”まで行くのを説得されたことを言っていないのにも関わらず、彼は何故知っているのか。

 それだけではない。自分が自らの意思とは別で動いていたとカルマは示唆する。それはつまりどういうことなのか。

 フェロモンが体内に残っているのにも関わらず、エマは綺麗に呂律を回して聞き返そうとした。

「自分の意思ではないって……カルマ君、それはどういう――」

「おっと口が滑ってしまったよ。忘れさせる為にここは少し眠ってもらおうかな」

「へっ……?」

 呆気に取られるエマの顔に向けてカルマが手の平を向ける。

 卵白色の光球が手の平から打ち出され、エマの額を透過した。

「かっ……カルマ君……何……を………………」

 一瞬の内に何が起きたのかも分からないままエマは微睡んで行く。

 寝息を立て始めたエマを見下ろしながら、カルマは不敵に微笑んだ。

「さてと……フォルト・ハイクローヴは淫魔の力を持っているのか……あまり良い情報ではないが、今回の調査はここまでとしようかな」

 そう一人ごちるとカルマは首を胴体の上へと装着する。

 首が有るべき場所に納まったと同時にその眼は閉じられ、ソファーで眠るエマと折り重なる体で身体が倒れた。

 そのカルマの背中から、生物が脱皮する時の様に何かが抜け出して来る。

 人魂の様な形のその何かは、まるで逃げる様にネックレス家を去っていった。 

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