或るサンタの年の瀬
キャスト
サンタ:宝生雅緒
トナカイ:菱名成実
手紙の送り主たちの声:瀬田魅月♠、川畠瑠璃加♦、倉田眞理佳♥、 菱名直実♣
(舞台上には家のリビングのセットが組まれており、窓の外には雪景色が描かれている。)
長机の真ん中あたりに座っている、赤い服に赤い帽子という、「いかにも」な格好のサンタ。
「(客席を向いて)よぉ、俺がサンタだ!
・・・えっ、サンタの癖に白髭ないのかって?
いい加減、その質問にもうんざりしてきたんだけどな・・・。
サンタといえば白髭で太ったおじいさん、なんてのは、人間の抱いてるただのイメージにすぎないんだよ!
ちなみに、衣装が赤くなったのも、太った白髭の老人のイメージが定着したのも、全部、あの『シュワッと爽やか』な飲み物の会社のCMのせいだってよく聞くけど、あれ実はガセだからな。」
「ちょっとサンタさん、さっきから壁に向かって何ブツブツ言ってるんですか!?
今は大事な、子どもたちのプレゼントに対する希望チェックの作業中ですよ!
しっかり集中してください!!」
しゃべり続けるサンタにツッコミを入れる、彼の隣でハガキらしきものを整理しているトナカイ。
「お、おぉ・・・、悪かった。
・・・ったく、受け持ちの千世帯分のチェックだけでも、骨が折れるぜ。」
どうやら、サンタ業界(?)は、分業制になっているようだ。
ちなみに、そのプレゼント代の財源は・・・。
「それにしても、また『日本サンタ協会』からの補助金が削減されるなんて・・・。」
「本当、政治家の奴らには、実状が見えてねぇよな。
あんな無理やりな『仕分け』、単なる、自分たちが仕事したっていうアリバイ作りだろ・・・。
あいつら、自分も、子どものころプレゼントもらって目ぇキラキラ輝かしてたこと、すっかり忘れてるに違いないな。
まぁ、俺のバイトで予算を補填するぐらい、子どもたちの笑顔のためなら、軽いもんだ。」
「私も、資金集めに協力したいのはやまやまなんですけど・・・。
・・・そうだ、サンタさん、聞いてくださいよ!
この前、少しでも資金を稼ごうと思って、水商売の面接受けに行ったんですけど、そこの担当者、私見て何て言ったと思います!?
『君みたいな貧相な体型の子、うちにはいらないよ。』ですよ!?
よりによって、私が一番気にしてる部分を指摘するなんて、ひどいと思いませんか?」
「・・・その担当者、まずトナカイであるところにはツッコまなかったのか・・・?」
トナカイのグチに、小声で呟くサンタ。
「・・・さて、続きだ!」
区切りをつけるかのように言うサンタは、目の前の手紙の束を取り上げる。
♠「サッカーボールをください。(5さい、おとこ、ようちえんじ)」
♣「野球のボール、お願いします。(10才、男子、小学生)」
♥「テニスボールをお願いします。
今度の大会に向けて、毎日練習してます!(14歳、女子中学生)」
「・・・やっぱり、ボールは人気だな。
さて次は・・・。」
サンタが次の手紙を見ると、
♦「もっと大きくて丈夫なサラダボールを下さい。(38歳、主婦)」
「・・・奥さん、どさくさに紛れて新しい食器をもらおうとしてもダメだから!
第一、『ボール』じゃなくて『ボウル』だし!!」
すかさずツッコむサンタ。
「やっぱり今年も、ちゃっかりプレゼントもらおうとしてる大人が多いですね。」
トナカイも言う。
「例えばこれとか・・・。」
トナカイが差し出した手紙には、
♣「『DXガッタイダー5』がどうしても手に入りません。
よろしくお願いします。(26歳・男性・会社員)」
「いい歳して、テレビに出てくるロボットのおもちゃなんて、バカみた・・・。」「おいトナカイ、そういうことは言うな。
人それぞれ、趣味が違うんだ。
そこは他人がとやかく言えるところじゃない。」
トナカイをたしなめるサンタ。
「でも・・・、俺たちの仕事は子どもの夢のためにあるんだ。
大人のみんなは、くれぐれも良識を忘れないでくれよな!!」
思いっきり客席の方を見ながら、まるでキメゼリフのように言うサンタに、
「だからなんで壁に向かって喋ってるんですか!?
しかも、若干ドヤ顔になってるし!!」
ツッコむトナカイ。
「さて、次だ次だ・・・。」
ツッコミをものともせず、ハガキを手に取るサンタ。
♥「チャーシューメン2つ、ネギラーメンメンマ抜き1つ、半チャーハン3つ 大至急 4丁目・加藤」
「・・・って、うちはラーメン屋じゃねぇ!
つーか、ラーメン頼むのにハガキはおかしいだろ!!
『大至急』ならなおさらな!!!」
ツッコみながら、また一枚の手紙を手にするサンタ。
♦「サンタさんへ。
次回の『選挙』では、少しでもいい順位になれますように。
サンタさんも、応援してくださいね♥(19歳・女性アイドル)」
「サンタじゃ順位のプレゼントはできないけど、微笑ましい願いだな。
・・・来年分の諸経費を見直せば、50票ぐらいはなんとかなりそうだな・・・。」「サンタさん!
それはダメですよ!!」
「冗談だよ!
もし応援するとしても、俺のポケットマネーでやるって・・・。
さて次は・・・。」
また手紙を手に取るサンタ。
♣「サンタさんへ。
次回の選挙こそは返り咲けますように・・・。
サンタさんも、清き一票よろしくお願いしますね♥(58歳・男性・元国会議員)」
「・・・ふざけんじゃねぇー!
こんなまねしてる暇あったら、やるべきことちゃんとやれバカヤロー!!」
サンタは、手紙をビリビリに破りながら叫ぶ。
「サンタさん、気持ちは分かりますけど、まず落ち着いて・・・。」
トナカイが必死になだめる。
「・・・おぅ、取り乱して悪かった。」
謝るサンタに、
「そうだ、こんなのも来てましたよ。」
と言いながらトナカイが持ってきたのは、短冊がついた笹だった。
「しかもリクエストが・・・。」
♠「春物のワンピースを下さい。(21歳・女子大生)」
「もはや季節感ムチャクチャですよ!!」
「・・・もう、いちいちツッコんでるのも面倒くさい。
ちゃっちゃと済ませちまおうぜ。」
心底疲れきった様子で呟くサンタ。
そのまま席に着いたサンタとトナカイは、黙々と手紙をチェックするのだった・・・。
(一旦暗転し、再び明るくなると、机の上の手紙がきれいに積まれている。)
「あ~、なんとか終わったな。」
座ったまま伸びをするサンタ。
「やはり、子どもたち一人一人、欲しいものっていろいろあるんですね。
・・・でも、子どもたちの望むもので、『あれ』が一番多かったのは少しびっくりしましたね。」
と言いながら、トナカイが目の前に置かれた一束の手紙を持ち上げる。
♠+♦+♥+♣「自分たちが安心して暮らせる『未来』を下さい。」
「俺たちは、自分のためだけじゃなく、これからやってくる世代のためにも、何が出来るのか、何をすべきなのか考えなきゃいけないよな。
・・・まぁ、まず俺たちがしなきゃいけないのは、今度のクリスマスを無事に成功させることかな?」
しみじみと呟くサンタ。
「そうと決まれば、早く準備しなきゃ!」
立ち上がるトナカイ。
「なぁトナカイ・・・。」
呼び止めるサンタの方にトナカイが振り向く。
「来年はいい年になればいいな・・・、いや、いい年に『しよう』ぜ!」
「・・・はいっ!!」
サンタとトナカイは互いに頷きあうのだった・・・。
今日はクリスマスイブ。
サンタを信じている人も、信じていた人も、一度耳を澄ましてみよう。
ほら、鈴の音が聞こえてくるはず・・・。
そして、呟いてみよう、「メリークリスマス」と。
世界がその言葉に包まれたとき、我々は、明るい「明日」へと一歩踏み出せるのかもしれない・・・。




