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就甲冑ファイター

キャスト


就甲冑ファイター:菱名直実


男性面接官:宝生雅緒


女性面接官:倉田眞理佳


大学生A:川畠瑠璃加


大学生B:菱名成実


大学生C:瀬田魅月


支援者・タケハラの声:刈谷凶二




ここは「ライトニング商事」の会議室。

今日は、この会社に入社を希望する大学生たちの面接が行われるのだ。





「では、次のグループの皆さん、お入りください。」


長机の前に座る男性社員が声をかける。

すると、リクルートスーツを着た3人の女性が入ってきた。


「それでは、お掛け下さい。」


男性社員の言葉に、3人は椅子に腰を下ろす。


「では、右端の方から順に自己紹介を・・・。」


男性社員に促され、右端の眼鏡をかけた女性が立ち上がる。


「川畠る・・・」「待て待てーぃ!!」


ガチャガチャと音を立てながら、何故か西洋甲冑で全身を覆った男性が入ってきて、自己紹介を遮る。



「な、なんだ君は!?」


驚きを隠しきれない男性社員に、


「よくぞ聞いてくれました!」


甲冑の男は、いちいちポーズを取りながらこう言った。



「百鬼夜行うご(ガチャガチャ)職ひょ(ガチャ)に光をもた(ガチャガチャ)と自由のリク(ガチャガチャ)、人呼んで、『就(ガチャガチャガチャッ!)』!!」



「って、鎧のガチャガチャで何を言っているのか全然分からんよ!!」


すかさずツッコミを入れる男性社員に、


「せっかく一生懸命振り付け考えたのに・・・。

じゃあ、もう一回行きますから、よく聞いててくださいよ!



百鬼夜行蠢くこの就職氷河期に光をもたらす、愛と自由のリクルーター、人呼んで、『就甲冑ファイター』!!」


と、今度は振り無しで言った。


「しゅうかっちゅうファイター?」


白ける一同の中で、唯一女性社員だけが少し食い付く。


「はい、『就活』と『甲冑』をかけてみたんです。

あと、語呂的には『就活中』にも聞こえる、みたいな・・・。」


場の空気もお構いなしに、名前を説明し始める就甲冑ファイター。


「ほら、履歴書だって持ってきました!」


さらに、彼は社員たちの机の上に履歴書を置く。


「まったく・・・。



あっ、ちょっと君、名前の欄ぐらいは真面目に書きたまえ。

ここにまで『就甲冑ファイター』はないだろう!?」


男性社員の言葉に、就甲冑ファイターは、


「何をおっしゃるんですか。



先ほども申し上げました通り、私は『愛と自由のリクルーター』ですよ!?


私がこの力を手にした時、力をくれた支援者は、私にこう言いました。


(タケハラの声でナレーションが入る。)

『就甲冑ファイターの正体を知る者が現れた時、君はその力を行使する権利を失うことになる。


永遠に、ね・・・。


それが嫌だと言うのなら、自らの手で秘密を守ることだ。

この意味は分かるね?』


そういうわけで、就甲冑ファイターの正体が私であることは、誰にも知られてはならないんです!!」


と熱弁するが、


「我が社としては、本名も分からないような者を雇う訳にはいかないんだが・・・。」


という男性社員の言葉に、


「菱名直実です!!」


と、あっさり名乗ってしまう就甲冑ファイター。


それを聞いて、


「お、お兄ちゃん!?」


3人の大学生のうち真ん中の1人が立ち上がる。


「しーっ、成実、声が高いぞ!!」


就甲冑ファイターが慌てて妹に言うと、


「ごめんなさい、お兄ちゃん!!」


努めて低い声を出しながら謝る成実。


「き、君ねぇ・・・。

この場合、『声が高い』というのはそういう意味じゃないんだよ・・・。」


突っ込みを入れる男性社員。


「って言うか、『直くん』だったんだ!」


今度は、左側に座っていた女子大生が声をあげる。


それを聞いて怪訝な表情になる成実。


「ちょっと『魅月』、なんでお兄ちゃんのことそんな馴れ馴れしい呼び方してんのよ!?」


「だって、彼氏だし・・・。」


「はぁっ!?

何それ、そんなの私は聞いてないよ!!」


声を荒らげる成実。


「あれ、言ってなかったっけ?」


平然としたまま首をかしげる魅月。


「・・・で、いつからなの?」


冷静さを心がけながら尋ねる成実。


「1年の夏ぐらいに、私が成実の家に遊びに行ったことあるでしょ?

あの時直くんの顔見て、タイプだな、って思って、ソッコーでコクっちゃった!!」


嬉しそうに語る魅月に、


「よせって。

恥ずかしいだろ・・・。」


満更でもない声色の直実。


「な、何なのそれ・・・。」


その場にへたり込む成実。


「き、君たち・・・。

あくまで面接中なんだが・・・。」


おずおずと言う男性社員。


「あっ、顔と言えば・・・。

就か・・・、じゃなくて菱名くん、履歴書の顔写真は、兜を外して撮りなさい!」


履歴書を指差しながら言う男性社員。


「申し訳ありませんが・・・、それだけはできませんっ!!」


きっぱりと言い放つ直実。


「何故だ!?」


叫ぶ男性社員に、直実は、


「今、兜を取って、私の素顔が明らかになれば、プライベートの私を狙う奴らのために、家族を・・・、妹を危険に曝すことになるかもしれません!



私には、ヒーローとして就活の愛と自由を守る前に、一人の男として家族を護る責任があるんです!!」



「そ、そんな、映画みたいな突拍子もない話が・・・。」「素晴らしいっ!


『合格』だよ!!」


困惑気味の男性社員の台詞は、「ある人物」の発言によって遮られる。


それは・・・、なんと、冒頭で自己紹介を遮られてしまった、右端に座る大学生だった。


「あ、あなたは一体・・・?」


戸惑いながら直実が尋ねると、


「・・・確かに、この格好では分からないのも無理はないな。

では、これならどうかな?」


その大学生、川畠は、頭部をすっぽりと覆うような、金属製の仮面をかぶる。


「ま、まさか、あんたがタケハラさんだったのか・・・!?」


「あぁ。

君が今日この会社の面接を受けに来ると聞いて、直に君の様子を確かめたくなってね。」


タケハラの声色で話す川畠。


「まぁ、君が名前を明かしてしまった時はさすがにヒヤヒヤしたがね。


だが、その後の、『家族を護る責任』のくだりを聞いて、改めて頼みたいと思えた。

今度は、就活に成功した先輩として、これから就活に挑む者たちを導いてくれ。」


タケハラの言葉に、驚きを隠せない直実。


「そ、それはつまり、私は就甲冑ファイターを続けてもいい、ってことですか・・・!?」


大きく頷くタケハラ。


「その通りだ。

名前を明かした件は、就職したい思いの強さ故のこととして、不問にしよう。」


「や、やったぁー!!」


飛び上がって喜ぶ直実。

今度は、成実の方を向くタケハラ。


「菱名成実君、君のお兄さんの名前が明らかになってしまった以上、君にも何らかの危害が及ぶ可能性は大いに考えられる。


そこで、君も『就甲冑ファイターF』をやってみるつもりはないかな?

Fというのは、Femaleの頭文字をとったものだ。

女性らしいフォルムと軽さ、さらには頑丈さを兼ね備えた鎧を現在鋭意製作中でね。


今日は、先に完成した兜を持ってきている。

君に闘う意志があるのなら、これを取りたまえ。」


直実のものに似ているが、微妙に異なる兜を取り出すタケハラ。


「・・・私、やります。

いつまでも、お兄ちゃ・・・、じゃなくて、兄に頼ってばかりじゃいられないですから。

それに・・・、私だって兄を護れるようになりたいんです!!」


タケハラの目(というよりも、マスクの目の部分)を見つめ、キッパリと宣言する成実は、兜を受け取ると、それをかぶる。


「な、成実・・・。」


感慨深げに呟く直実に、


「直実君、結局妹さんを巻き込むことになってしまって、本当にすまない。」


と申し訳なさそうに言うタケハラ。


「いいんですよ、タケハラさん。

俺も、心のどこかで、いずれはこうなるんじゃないか、って覚悟はしてましたから。」


と言った直実の声には、どこか悟りきったような響きがあった。


その様子に、今まで置いてけぼりにされていた男性社員が口を開く。


「君たちが大いに盛り上がっているところ、大変申し訳ないんだが・・・。


菱名君、まだ君が通ると決まった訳ではないよ。


そして、川畠くん、君も一体何をやってるんだね?


それと、菱名くん、今まで顔を出していたのに、今さら兜を着けてどうなると言うんだ!?


そもそもだね、『就活の愛と平和』とは一体何なんだ!?


それはまだいいとしても、その愛と平和を、一体全体誰が脅かすと言うんだ!?」


少しずつヒートアップする男性社員。

すると、それにはおかまいなしと言った感じで、隣の女性社員が手を上げて立ち上がる。


「はい。

『課長』、・・・全員採用していいんじゃないですかね?」


鳩が豆鉄砲喰らったような表情で振り向く男性社員。


「く、『倉田くん』、君は一体何を言い出すんだ?」


あくまでマイペースさを崩さず答える倉田。


「課長、現在の不況を打破するためには、正攻法とは全く異なるアプローチが必要だ、っていつも言ってるのは、課長ですよね?


だからこそ、若者のポテンシャルを最大限引き出すことが、我が社にとっては有効だと思うんです!!


最近の若者は、『草食』って言うか、自分を出すのが苦手ってケースが多いじゃないですか。

でも、仮面は、普段隠れている自分をさらけ出す手助けをしてくれるんじゃないでしょうか?

そこで、我が『ライトニング商事』は、社員のマスク着用を奨励・・・、いや、むしろ義務づけてもいいかもしれません!!」


「倉田くん、そんなことできるわけな・・・。」


困惑気味に言う課長。

しかし、仮面を外した川畠が言う。


「あ、あの、それ、いいと思います・・・。

じ、実は、私も普段は結構シャイで、会話は苦手なんですけど・・・。」


再び仮面をかぶり、


「これを着けると、この通りすらすら話せるようになりますから!」


なぜか軽快にステップを踏みながら、タケハラの声で言う川畠。


「えぇい、踊らんでいい!!」


苛立ち交じりに吐き捨てる課長。


「じゃあ、マスク義務づけで!!」


二人の話の流れをガン無視して決めてしまう倉田。


「それじゃ、私これにしよ~っと♪」


そう言って、魅月がどこからか取り出してかぶったのは、虎の顔を象ったマスクであった。


「瀬田くん、君はどこかのプロレスラーか!?」


思わずツッコんでしまう課長。


「ほら、こうやってマスクについてのツッコミがコミュニケーションにつながることだってあるかもしれませんよ!


そして、私はこれで・・・。」


倉田も、翅を広げた蝶の形のマスクを着ける。


「倉田くん、君はどこの『女王さま』だ!?


と言うか、何なんだこのカオスな光景は!?」


自分以外の全員が顔を覆う状況に、課長は頭を抱えるのであった・・・。






(暗転後、タケハラの声で)

かくして、就甲冑ファイターたちの努力によって、ライトニング商事でも、就活の愛と平和は守られた。

凄いぞ、就甲冑ファイター!

負けるな、就甲冑ファイター!!

これからも頼むぞ、我らの就甲冑ファイター!!!








(真っ暗な中、舞台の上手にスポットライトが当たると、中華街によく売られている、ふっくらとした中国人の顔を象ったかぶりものを着けた課長の姿が浮かび上がる。)

「仮面も案外、悪くないかも・・・♥」

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