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『Weapon・Infinity・Online』  作者: 三日月
《Prologue》
4/19

◆4◇

次回、新章突入です。

誤字脱字、その他意見などがありましたらご報告ください。

双手太刀を選んでしまったことに、今更ながら後悔している。選べる武器はもっと他にも数十種類はあったはずなのに。なんで、双手太刀だったんだ……


「父さんたちが作ったゲームの所為で大変な目にあったな……」


俺は最初の村、『ライトビレッジ』にいた。最初の拠点であり、出発地点でもある。プレイヤーはこの場所を軸に新たな地に繰り広げていくのだ。クリアしたステージの先に新たな拠点が出現し、そこからまた新しいステージへと向かっていく、というのがこのゲームの進め方だ。


既にステージに進出しているプレイヤーも多く、俺のようにまだこの場所に残っている人はそこまで多いとはいえない。


残っている人はパーティを組んだり、ネットを見て情報を手に入れたりしようとしている。パーティを組もうとしている人は仲間が裏切らないかどうかの判断に慎重になっているため、中々ステージまで行くことができないようだ。


俺も心強い味方が欲しくて、ステージには行かないでパーティたちに声をかけていたのだが、パーティを作る上で、俺には大きな足枷ができてしまっている。


「……この武器、そんなに信用性ないのか?」


先ほどから何十回と声をかけているのだが、絶対にパーティへの参加を拒絶される。理由は簡単、「足手纏いになるだろうから」だそうだ。


人を見かけで判断するなんて、なんてヤツらだ……と思ったが、自分が同じ立場でパーティに入れてくれと言われたら、すんなりとOKを出すことはないだろう。


仕方なく、また他のパーティに当たる。


「その……すみません。俺もパーティに入れていただけないでしょうか?」


しかし返ってくる返事は気持ちの良いものではなかった。


「…無理だ無理。双手太刀なんかメンバーに入れられるか」


「な、なんでですか?」


「その武器は使い勝手が悪いそうだからな。どうせ俺らのパーティになった後、頃合を見計らって俺らを殺すつもりなんだろ? そんなヤツをパーティに入れさせるもんか」


「…………」


酷い誤解だ。俺は単純に仲間が欲しいだけなのに。

でも確かにこの人の言っていることも正しい。得体の知れないヤツをパーティに入れるのは結構リスクの高いことだと思うし、もしそれで自分たちが攻撃されたとあったらたまったもんじゃない。


パーティを作るということは、それほどリスクが高い物だということだ。


「はぁ……キツイなぁ……」


このゲームは実際に受けたダメージや疲労、さらには空腹までもがリアルに表現されるのだが、まさか序盤で受けるダメージが精神攻撃だとは全く予想してなかったぞ。


「誰か知り合いの一人や二人いればいいんだけど…………ん?」


そう思いつつ辺りを見回していると、どこかで見たことのある顔を発見した。


「おう、謙哉けんや


「えっ……? あ、もしかして直弥?」


俺が見つけたのは高校のクラスメイトでもあり、バスケ部の友人の謙哉けんやだった。俺と同じく背格好や顔は変えていないので、すぐにわかった。コイツもプレイしていたなんて……


「……あ、そうだ。ゲーム内だから実名はよそうか」


「あ、それもそうだな。えーと……紅蓮」


「なんだ、クラウン」


謙哉はクラウンという名前で通っているらしい。王冠か……確かにそういうストラップとか付けてるのよく見たことあるな。それで付けたんだろう。


「お前のその武器……双手太刀だよな?」


何か汚い物でも見るような、いや、この場合は哀れみの視線か。クラウンはそんな感じで俺の双手太刀を見てきた。……結構傷つくな。


「そうだが?」


あえて気にしてない風に言ってみる。心の中は既にズタボロだが。


「気の毒だな……」


こちらに焦点を会わせたまま苦い顔をする。そんな顔しないでくれよ。困ってるのはこっちの方なんだからさ。


「そう思うなら一緒にパーティを組んでくれよ。さっきから誰も相手にしてくれなくて」


俺は先刻からの問題を伝えた。きっとコイツなら俺とパーティを組んでくれるはず。そう思っての行動だった。しかし返ってきたのはこれまた残念なものだった。


「そうしたいのは山々だが……ご覧の通りだ」


謙哉……もとい、クラウンの後ろには3人の人がいた。既にパーティを組む約束をしてあるのだろう。武器の手入れに余念がない。


「さっきその辺で喋ってパーティを組んでも大丈夫そうな人たちを集めたんだけど……結構神経質な人が多くてさ。お前を入れることは難しい」


「そうか……」


クラウンは俺が何者かを知っているが、あの人たちは知らない。そんな場所に「新入りの双手太刀です! よろしく!」なんてフレンドリーに話しかけてみろ? 3分で仲間割れだ。

そんなことになったら、折角パーティに入れてもらえたコイツだって外されかねないし、迷惑だけはかけたくない。


「仕方がない。他を当たってみるよ」


俺はクラウンに背を向け、他のパーティを探した。チクショウ……一人ぼっちって、悲しいなぁ……


「本当にゴメンな……? あ、その代わりといったらなんだけど」


クラウンはディスプレイを出してきた。なんだ?


「……フレンド申請、しておいてくれないか?」


「ま、マジか!? 恩に着る!」


フレンド申請とはフレンド相手の現在の状況を知ることができるものだ。体力や現在位置、あまり考えたくはないが、死んでしまったらDEATHのマークが出るように。それに加えて申請しておけばいつでも相手と連絡を取ることができる。現在ぼっちの俺には嬉しい一言だ。


「それじゃ俺たちはもう行くから、紅蓮も頑張れよ!」


「おうっ」


上昇したテンションをギリギリ抑えて、俺はクラウンと別れを告げた。

アイツと会えたのは本当に良かった。このままだったら寂しさで死んでた。いや、嘘だけど。


「さて、あと何人か当たってダメだったらもう行くか……」


しかし、人生そんなに甘くはない。

結局、俺はこの後もパーティに入れてもらうことができず、最初の拠点からソロプレイをやらなければいけないことが確定してしまった。


人から外されるということが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。

俺は少し人間不信になったかもしれない。しかし、時は刻一刻と過ぎていく。このゲームでは昼夜も表現されている上に夜には強力な夜行性のモンスターが出る。時間を惜しまず先に進むのが懸命だ。


道具屋で大量に回復薬やその他の道具を買い込み、外に出る。そして俺は最初のステージ『ハジマリの森』へと足を進めていった。


「ソロプレイだけは避けたかったのに……」


愚痴を言っても仕方がない。まずはLvを上げよう。


★☆★☆★


『ハジマリの森』ではLv1でも倒せるタイプの敵が何体か居て、そいつらでLvを上げてから先に進んだ方が良いだろう。俺は先に進みつつ、探索も兼ねながら敵を数体倒していった。


Lvは上がっていないが、自分の体力が少し減ったところで、俺はふとあることに気が付いた。


「あまり無理をし過ぎると体力では大丈夫でも、疲労とかで戦いが辛くなるかもしれないな」


これはゲームだが、『PVS』はそんなことお構いなしだ。

空気感も、地面の感触も、天候も、剣を握った感じも、空腹、疲労も痛みもそして死までも忠実に再現する。だからこそ慎重になろう。ここで死んでしまったら元も子もない。


「一度回復をしに戻るか……」


ステージの大体半分まで来たところだろう。けれどまだLvも上がっていないし、武器の扱いも慣れたわけではない。一度戻って安全な場所で回復する方が堅実だ。俺は来た道をさかのぼり、村へと向かった。


しかし、人生そんなに上手くいくものではない。


「やば……!」


気が付くと、複数のモンスターに囲まれていた。きっと群れで行動するタイプだろう。パーティを組んでいる者なら、一人一殺の要領で対応できるだろうが、俺は今一人。こんな数を相手にできるわけがない。


(逃げるが勝ちだ……!)


俺はモンスターの層が薄い左端を狙って強行突破に出た。とにかく、村まで戻ってしまえばこちらのもの。最初のステージのこんなウサギやらトカゲで逃げ出すのは格好悪いが、場合が場合だ。逃げさせてもらおう。


(あと少し……!)


モンスターの攻撃をかいくぐり、もう少しで突破できる。


そう思った瞬間だった。


「―――ごはっ!?」


左のわき腹に強烈な痛みが走る。どうやらウサギの突進攻撃のようだ。当たる直後まで気が付かなかったとは、不覚だ。俺はそのまま横にあった木にたたきつけられる。ヤバい、クリーンヒットだ……!

自分の体力ゲージが一気に半分以下になる。死亡にまでは至らなかったものの、マズい、ここでやられるなんて冗談じゃないぞ!


俺は痛みをこらえ、ぶつかった木の方向に走り出した。とにかく、今はこのモンスターから逃げることが優先だ。わき目も振らずに走り出す。


走っていくとそこには茂みがあった。いまだに追ってくるモンスターを撒くには丁度いい。このまま走りこもう。


(このまま茂みの中を……!)


そして俺は茂みに足を踏み入れた。そこには―――


「んなっ!?」


落ちたら助かりそうにない切り立った崖が、大きな口をあけて俺を待っていた。



マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!! 



心の中で警鐘を鳴らす。


しかし勢いに乗った足は急なブレーキをかけても止まろうとはせず、そのまま崖の淵にまで差し掛かった。落ちる、と思ったときには、もう遅かった。


「うわぁあぁああぁぁっっ!!?」


俺はなす術もなく、崖下へと落ちていくのだった……



…………



「―――あれ? 今、変な声が聞こえなかった?」


「―――そう? モンスターの鳴き声じゃないの?」


「そうだったかな? まぁ、そうかもしれないね」


「そうそう……って、うわっ、ここ崖になってるよ!? 危なっ!」


「おー、本当だね。落ちたらどうなるんだろうね~」


「……そうだ、試してみる?」


「やめてよ。そんなことしてゲームオーバーにでもなったらどうするつもり?」


「あははっ、冗談だって。ほら、先にいこ?」


「そうだね」



…………

さてと、カッコいいスキルとか魔法を考えていこうかな……

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