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『Weapon・Infinity・Online』  作者: 三日月
《Event1》
18/19

◆18◇

なんだかんだで長くなっちゃった18話です。

さっくり読めるようにしようと考えていたのに……仕方が無いか。


誤字脱字、その他意見や感想がありましたらご報告よろしくお願いします!


それでは18話です、どうぞ!

俺は懐かしき友、クラウンとの再会を果たした。


クラウンは巨大な剣を背負い、こちらに向かってくる。その姿は装備以外は二ヶ月前と全く変わらない、俺のクラスメイト兼部活仲間だった。


「会えて良かったよ……装備以外は全然変わってないな!」


クラウンの容姿は179cmの長身で、茶髪のツンツンヘアーだ。見た感じはちょっと悪そうなヤツだが、優しくて紳士で非の打ち所が無いような、そんなヤツだ。


思わず会話が大声になるが、そんなこと知ったことではない。これまでの辛い出来事とか事情を考えたらこんなに喜ぶのは当たり前だ。


「お前こそ全然変わってないな! ……装備も」


「うげっ……!」


開口一番にそれかよ……


周りの視線が一気に鋭くなった気がする。痛い痛い痛い痛い……視線が刺さるよー! 


「にしても、よく初期装備のままでボス倒せたなー。ただの引き篭もりだと思ってたよ」


さらにクラウンから追い討ちがかかる。……俺がどんな目に遭ってたか知らないくせに……!


「シバキ倒すぞゴラ」


「あはは、ゴメンゴメン……」


クラウンは俺の暴言をサラッと受け流し、同じく噴水の縁に座る。くそっ、美形はやたらと絵になるじゃねぇか……。


そして何かを言いたそうにこちらを見る。な、なんだぁ……?


「その装備じゃ……決闘は無理そうだな」


「え? 決闘?」


聞きなれない単語に思わず聞き返してしまった。決闘? なんじゃそりゃ?


「プレイヤー同士で闘うことのできるシステムのことだよ。会ったらしようって言わなかったか?」


「言われて無いと思うけど……」


そうか、プレイヤー同士で闘うことができるのか……そもそも人と関わってなかったからそんなシステムがあること自体知らなかったぞ。というか必要なかったし。


「それをするとメリットか何かあるのか?」


「多分、勲章か何かもらえたと思うけど……他にも――――」


クラウンはわからなかったことをできるだけ丁寧に説明してくれた。


決闘とはお互いの力量を見せ合ったり、イザコザを力で解決したりするときに使うシステムである。基本的にこの戦闘によってHPが0になったとしてもゲームオーバーにはならないので、プレイヤー間ではよく使われるそうだ。


決闘中は参加プレイヤー以外からの干渉はすることができず、正々堂々互いの実力を見せ付けあうことができる。逆に参加プレイヤーからギャラリーに攻撃をしてもダメージを負わせることができないように。


対戦形式はタイム式、体力式、魔法限定式、武器限定式、死闘式などがある。


タイム式は時間内にどれだけ相手に攻撃を与えることができるかというもの。手数が多い武器の人や、Lvが相手より著しく低い人はこちらを選ぶらしい。


体力式は普通の戦闘同様にHPゲージが互いに0になるまで闘って行うものだ。こちらはLvが近い人同士が選ぶらしく、防具の防御力などもしっかりと反映される。


魔法限定、武器限定は体力式と基本ルールは変わらない。が、その名の通りその攻撃以外で相手を攻撃できないように設定されており、どちらかを主流で闘ってきた人に選ばれるようだ。


最後に死闘式。こちらを選ぶ人は絶対にいないと思うが、これは負けた場合本当にゲームオーバー扱いとなり、死ぬというものだ。


少々長い説明を嫌がりもせずにツラツラと言っていくクラウン。こうやって今までわからなかったことを教えてくれる存在がいるというのは本当に嬉しい。


本当に嬉しいけど……


「じゃあやろうよ。別にそのくらいいだろ?」


「いやー…だってなぁ」


俺が決闘を挑もうとすると、何故かこう言ってきて俺と闘うことを拒んでくるのだ。何でだよ? 


「だって……お前の装備じゃ俺には勝てないだろ?」


どこか馬鹿にしたようなクラウンの発言。……この野郎、ムカつくな。


「おいクラウン」


俺は少々キレ気味に話しかける。俺の中ではコイツに負けるなんて絶対に嫌だからな。


「んっ? なんだ?」


「明日、正午にもう一度ここに来い」


「え? なんでだよ?」


クラウンは思わず疑問符を頭の上で浮かべた。


そんなこと、決まっているだろう。


「決闘だ!!」


俺は声を大にして叫ぶ。その瞬間俺の周りが静かになっていった。視線が痛いがこの際は全く気にしないぞ。俺はこの程度でめげる男じゃないからな!


「……はぁ?」


「いや、「はぁ?」じゃなくてだな、決闘をしろ。明日、俺と、この場所で!」


俺は力を込めて言い放つ。そんな俺の姿に、クラウンは哀れみやら同情やらの視線を浮かべた後、こう言ってきた。


「……後悔すんぞ?」


余裕綽々、といった風に俺を見ながらニヤついてくる。そんな態度も今のうちだろうけどな。


「それはこっちの台詞だ、馬鹿クラウン」


こうして俺は明日、クラウンと決闘することが決まったのだった。


☆★☆★☆


俺はその後、クラウンと別れた。


なんでもパーティの人たちと作戦とかを立てるそうなので、あまり長い時間俺と喋っていると怒られるのだそうだ。


別に話してるくらい良いと思うんだけど……ケチなパーティだな


『諸君、久しぶりだな』


別れてから数分後、運営からの通信が入った。その直後一斉に他のプレイヤーがディスプレイを開いたものだから最初は物凄く驚いたが。


『どうやら参加人数は三万人弱のようだな……よくこの狭い村に収まっているな』


淡々と語っていく運営の男は噴水前を見てそう呟いた。


開発側からそんなことを言ってもいいのだろうかと少し疑問に思う。確かに俺も三万人もこの村にいることについては驚いたが。


にしても三万人か……上位入賞すら難しそうだな。


『ではあまり長話も好きでは無いので、さっさと説明に入ろう』


この瞬間、噴水前が一気にざわつく。そういえば俺はまだ本格的な説明は受けてないんだっけ。でもこの様子を見ると、どうやら皆同じ境遇のようだ。


他のプレイヤーも俺と同様にイベントのことを深く知っている人はいないのだろう。だからこんなにざわついているのか。さてさて、初めて行われるイベントは、なんだろなー…………っと。


俺も含めて他のプレイヤーたちは期待に胸を膨らませていた。一体、どんな内容なんだろう……?


『今回のイベント内容は……“かくれんぼ”だ』


その瞬間、俺も周りも愕然とした。


か、かくれんぼ……? かくれんぼって、あの小学生のときに公園でやる定番のあれか? それがイベントの内容……って、えぇぇぇぇ!?


辺りではブーイングの嵐だ。そりゃそうだ。初めて行われるイベントの内容が“かくれんぼ”って、どうよ? 誰が喜んで参加するって言うんだよ。俺たちは小学生じゃないんだぞー!


『まぁまぁ落ち着きたまえ。ここはVR空間よろしくほぼ異世界だぞ? そんなとても心振るわせられる空間で、普通の“かくれんぼ”をやるとでも思ってるのかい?』


その一言でヒートアップする噴水前が一瞬で静かになる。


そ、そうか……別に「紅蓮君みーっけ!」みたいなのをプレイヤー同士でやるわけじゃないのか……冷静さに欠けていたな。


というかそうならそうと最初に言えば良いのに……


『君たちには「ハジマリの森」で大規模なかくれんぼを行ってもらう。ルールは制限時間のあいだ、ずっと鬼から逃げていればいいという単純なものだ。ちなみに、鬼はこちらで用意した特別なモンスターで行う予定なのでその点についてはこれを見てくれ』


運営側がディスプレイのウィンドウを出す。そこにはなにやら一つの目玉が額に付いた不気味なモンスターの姿があった。


……なんだコイツ。気持ち悪。


『コイツが君たちを捕まえる鬼の“イビルアイ”だ。正直、作った私たちでも気持ち悪いと思っている』


お前らでも気持ち悪いんかいっ!?


じゃあもっと愛らしいキャラクターデザインにすれば良かったんじゃないか? 何故こんな不気味なフォルムになったんだろうか……不憫なヤツ。


俺がモンスターに対して哀れみの視線を送っていると、また説明が入った。


『コイツはスキル《キャッチアウト》を持ち、その瞳で五秒間捉えられたものは鬼に見つかったとみなされ退場となり、その場で順位が決まる』


淡々と話しているので思わず聞き逃しそうになった。


え? これ順位とかあるの? あ、そうか。“上位者”には武器の贈呈があるのか……順位をつけないと始まらないもんな。でも制限時間いっぱいまで残った人がたくさんいたらどうするんだろう?


説明はまだまだ続く。まぁ、その時考えればいいか。今は説明に集中しておこう。


すると男は大変なことを口にした。


『ちなみに制限時間は三時間。森の中ではHPゲージが0になってもゲームオーバーになることはないから安心したまえ。まぁ、その場合は失格となって順位を付けずに退場してもらうがな』


ザワッ!


噴水前全体が騒がしくなる。なるほど……そういうことな。


三万人もいれば上位への道は険しくなる。しかしゲームオーバーにならないならPKをしようと思う人も続出するだろう。これはただ鬼から逃げてれば良いって話でもなさそうだな……


『イベントは今日から一週間後だ。それまでは自分の力を磨いておくといい。それではまた会おう!』


ブツン!


あ、通信が切れた。というかイベントまでの期間が長いな……待ちくたびれそうだ。


既に帰る準備をしている人が何人か見られた。そうだなー……俺は防具とかを作りに行こうかな?


俺は村のマップを開き、鍛冶屋を探した。


★☆★☆★


「……鍛冶屋が……無い……」


マップを見て愕然とした。どこにも鍛冶屋のマークがない。も、もしかして次の町とか村じゃないと無いのか!? チクショウ、なんてこったぁぁー!!


明日決闘をするなどと大見栄張って挑んだはいいが、それはあくまでも今日中に装備を揃えられると思ってのことだ。


紅の森では腐るほどモンスターの素材が手に入っていたので、それで作ればそれなりの防具ができるのではないのかと踏んでいたのだが……とんだ大誤算だ。


「うぉぉぉおおお!? 防具なしでどうすんだぁぁあ!!」


辺り構わず叫び散らす。というか叫んで無いとなんか大変なことになりそう。これは推測だけど、例えば魔法で家屋を次々粉々にしちゃったりとか。


「…………」


はぁ、仕方が無い。クラウンにはやっぱり決闘の件は無しということを伝えようか……


ディスプレイを押してクラウンと言う文字を出現させる。コールボタンに手が伸びたそのときだった。


「――――そこの人! ちょっといいかい?」


不意に声のでかいお姉さんに声をかけられた。……なんだこの人?


お姉さんは背の高い俺と並ぶくらいの背格好で、長い黒髪を後ろで縛っていた。どことなく怪しいオーラを感じさせているのは気のせいだろうか。


「……はい? 何ですか?」


一応返事をする。とりあえずクラウンとの通信はまた後で良いだろう。でもこの人は一体俺に何の用なんだ? 結構怪しいし……


「防具がどうちゃらって叫んでたよね? 今」


ああ、なるほど。そういうことか。そういうことですか……


「同情するなら防具くれ!」


「うわっ!? なんだイキナリ!?」


この人は俺が初期装備でいることに同情してわざわざ声をかけてくれたんだろう。なんて人だ。でも優しく声をかけてくるくらいなら防具の作り方でも教えてほしいよ……


「いいんです……別に、ちょっと悲しくなっちゃっただけですから……」


「あ、そうなの? 防具が欲しいんじゃないのか……」


「いや、防具は欲しいんですけどねー……はは」


俺、もうダメかもしれない……


「あ、そうなの!? じゃあ、作ってあげよっか!」


「ああ、そうなんですか……………?」


……………え? 今この人なんて言った?


確認のためにもう一度聞いてみよう。俺の聞き違いだったかもしれないし……


「すみません。もう一度言ってもらえますか?」


「だから、防具とか武器とか作ってあげよっか?」


やっぱり聞き違いじゃない。この人は、この人こそは……!


「よく来てくれました! 私の救世主様!」


俺はお姉さんの手を掴んでブンブンと振り回した。


「へ? へ? どうしたのイキナリ?」


俺はこうして、自分の防具を作ってくれる人を発見したのだった。

主人公、武器以外は未だに初期装備なんですよね……ダサいことこの上ない。


クラウンと闘うのはもう少し先になる予定ですね。いやー自分でも楽しみです。


それでは今後とも応援よろしくお願いします!

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