◇15◆
長らくお待たせしました! 第二章《Event》の開始です!
様々なイベントがありますので時間はかかると思いますが、皆さん温かい目で見守ってください! よろしくお願いします!
誤字脱字、その他意見や感想がありましたらご報告お願いします。
「――――直弥、元気にしてっかな……」
プレイを始めてちょうど二ヶ月。今日は待ちに待ったイベント受付の日だ。俺はこの日、友人の直弥と会う約束になっている。
俺たちは森の中をひたすら歩く。その感触は二ヶ月前に通った時と同じく、どこか湿って歩きづらい。アイツはもう会場に着いただろうか……
「おい、クラウン! 早く行かないと受付に間に合わないぞ!」
不意に大声を出され身体を震わせる。やべっ、全然気づかなかった。パーティの先頭が少し先のほうに行ってしまってる。
「モタモタしてると、置いていくわよ~?」
「あ、すいません。ソルさんにドミノさん」
パーティの二人、ソルさんとドミノさんに怒られ急いで後を追う。ボーっとしていたかもしれない。以後気をつけないとな。
歩くスピードを速め、後を追う。すると、
「にひひ……クラウン、怒られてやんの」
「うるせー、サギ。お前にだけは言われたくない」
後ろから付いてきたもう一人のパーティに馬鹿にされた。コイツは俺より年下のはずなんだが、何故かいつもタメ口を使われるのだ。ムカつくことこの上ない。
俺より後ろに居たくせに……くそっ。
「なぁっ、なぁっ」
サギがまたも声をかけてくる。なんだよ、ちゃんと付いていってるだろ?
「んだよサギ」
「お前が今日会う約束してる紅蓮って、どんなヤツなん?」
サギは直弥……紅蓮に興味を持っているようだ。俺が何度か話しているのを覚えていたのだろう。
なんだよ。そのことか……っていうか、
「なんでお前にそんなこと言わなきゃならねーんだよ」
アイツとサギはまったく接点が無いのに。なんでそんなことが気になるんだよ……
「そんなのよー……戦ったら強いかどうかに決まってんだろ? 何を寝ぼけたこと抜かしてんだよ。PKすんぞ」
「へぇ……やってみるか?」
俺は背負っていた大剣を抜き、サギに構える。サギも待ってましたとばかりに腰に差していた2本の小刀を取り出す。俺が一歩踏み出して大剣を振りかぶったときだった。
「お前ら! いい加減にしやがれ! 時間がねぇって言ってるだろうが!」
「「…………」」
ソルさんにどやされる。ちっ、サギの所為でまた怒られた……
「ちっ、いい所だったのに……」
「本当だ。俺もサギを殺れなくて残念だよ」
「んだと?」
「はぁっ……」
こんな調子で本当にイベントに間に合うのかなぁ?
☆★☆★☆
「――――なんで……こんなことに……!」
一つ一つしっかりと岩を掴みつつ崖を登る。頂上まではあと少し、かなり長い道のりだったな……
「――――はぁっ……! はぁっ……! やっと着いた……ぞぉっ!」
崖を登りきり安堵する。一度も落ちなかったし、なにより『紅の森』からやっと脱出できたからだ。
俺はボスを倒せばあの森から帰還できると考えていたが、考えが甘かった。
あのワープを通して辿り着いた場所は何と『ライトビレッジ』ではなく、俺が落ちて『紅の森』行きとなったあの崖の真下、つまり一番最初に虎や蛇と出会った所だったのだ。
最初は意味がわからなかったが、俺は今までの流れからして最悪なことに気がついてしまった。
(もしかして、ここを登りきらないと帰れないとか?)
あの崖を登らなければ、このステージの脱出をすることは叶わないということに。
「あーもうチクショウ! 何のために俺は二ヶ月もあそこに居たんだよ!」
最初からこの方法をとっていれば既に脱出できていたはずなのに……くそっ。
疲れの所為でイライラしていたから、大声で喚き散らした。ちっともスッキリしない。何だよ、ワープって何の意味があるんだよ。結局は肉体労働じゃねぇか……
なんにしても、ボスの戦闘の後にこんな切り立った崖を登るなんてキツ過ぎだ。登りきった瞬間、疲れが襲い掛かってきている。やべぇ……死ぬってマジで……
「今何時だ……?」
ふと気になり、ディスプレイを出して時刻を確認する。結構なハイペースで登ったから、今ゲーム時間で言う5時くらいかな? そのくらいだったら結構のんびり行けるだろう。俺はそう考えていた。
しかし、時は残酷にも過ぎていたのである。
「え? 5時42分……?」
時刻を確認するとそこには最悪なことが書かれていた。
「やべぇっ!? 受付まであと18分しかない!?」
受付が6時までなのに対して現在時刻は5時42分。いくら行動スキルに《俊足》が付いていたってここから入り口まではかなり距離があるのだ。ずっと全速力で走らなければ間に合わないだろう。
「登った後にこの仕打ちは酷過ぎだろ!」
こうなったら仕方がない。今日は最後の最後まで疲れてやろうじゃねぇか!
「どっせぇぇぇぇっっ!!」
俺はまだ少しふらふらする足に鞭を打ち、走り出したのだった。
★☆★☆★
「―――つ、着いたぁぁっっ!」
モンスターを蹴散らして森の中を走り抜けること約10分。なんとか『ライトビレッジ』の入り口に到着した。受付はもう少し先の役所みたいな場所で行われるそうだ。
辺りは6時になる寸前なのでもう薄暗い。しかしながらイベントが開催されるとあってか意外と人の通りは多い。流石だなぁと思う。
まぁ何はともあれ間に合ったし、さっさと受付を終わらせて休みた――――
『ちょっと! 何すんのよ!』
『いいじゃねぇかよ。少しくらい俺たちに付き合ってもらっても――――』
ワォ……なんてこったい。
……早く受付を終わらせて休みたいのに、なんで目の前で女の子が不良っぽい人たちに絡まれているんだ……
『いいじゃねぇかよ、少しくらいさぁ~』
俺は村に入って10秒も経たないうちに、一人の少女が4,5人の不良に絡まれているのを発見した。なんだよ、どこに行ってもこういうことってあるんだな……可哀想に。頑張ってね、俺は受付に行くからさ。
そう思いながら真横を通り過ぎる。俺には関係ないしね。時間もないし、さっさと行こう。
『だ、誰か助けて!』
『無理だって。俺たちのLvは全員35前後だ。このLvのヤツを相手にしようなんてヤツ、そうそう居ねぇよ!』
大声を張り上げながら不良の一人が叫ぶ。恐らくアピールのつもりなんだろう。……誰も助けようとしないのはそういう理由か。
ま、さっきも考えたけど俺には関係のない話だ。さっさと……
『いっいやぁぁぁっ!!』
『ったく……おい、誰かコイツ抑えろ』
…………さ、さっさと……
『ムグゥッ!? ムグゥゥ!!』
『ちょっ、暴れるんじゃねぇよ!』
『んっ!?』
……さっさと行きたい所なのに、遂に女の子に腕が振り上げられてしまった。……あーもう!
「――――はーい、そこのお兄さんたち。ちょっとストーップ!」
女の子に暴力が振るわれそうになった時、俺は思わずその不良集団に声をかけてしまった。やっぱ俺って……運悪いかもしれないな……
「あぁ? んだテメェ?」
不良の一人がメンチを切りながら俺に話しかける。うわぁー……いかついな……
「その子、嫌がってるじゃん。放してあげなよ」
俺はどっかで聞いたような台詞をそのまま使ってみた。うわ、これ意外と恥ずかしいな……向こうもかなりイラついているみたいだし、火に油だなこりゃ。
「テメェ……俺たちに喧嘩売ってんのか? あぁっ!?」
ムカつく顔をさらに近づけてきながら不良は言った。うぜぇな……こっちもそんなに時間が無いんだから早く放してあげろよカス。
でも、ここでそんな態度をとったらさらに厄介なことになるかもしれない。ここは丁寧な言葉遣いを心掛けてさっさと女の子を放してもらおう。うん、俺だってそこまで馬鹿じゃな―――
「女みたいな面しやがってよ……ナメてんのか!?」
ブチッ!!
「「「「ブチッ?」」」」
何かが切れる、音がした。
「…………おいおい……そこの不良さんよぉ……」
俺は鬼の形相で不良たちを見て、こう言った。
「それは俺に対して絶対に言っちゃぁいけない一言だぞ……?」
“女みたい”という言葉。これは俺の唯一のコンプレックスであり、大嫌いな一言だ。俺はユラユラと不良さんの一人に近づいていき、
「ふんっ!」
「がほっ!?」
掌底を思い切り強く顎に打ち込んだ。不良はそのまま気絶して動かなくなった。その瞬間空気が凍り、俺に対する視線が集まる。あーあ、やっちまったよ……
「コイツ!? お前ら! ぶっ殺すぞ!」
「「「おうっ!」」」
不良たちがそれぞれ武器を構える。あちゃー、やっぱり面倒なことになったな……5分で終わるかな?
俺は腰から太刀を引き抜き、両手に構えた。
「時間が無いんで、手っ取り早くいかせてもらうな!」
「やれるもんならやってみやがれぇぇ!!」
こうして俺は不良集団にしたくもない喧嘩を吹っかけたのだった。
不良に絡まれている女の子を助けるというテンプレな展開。その後の運命やいかに、みたいな感じですね。
女の子が出てきて皆さん少し期待してるんじゃないでしょうか? そうです、新キャラです。
ですが! ラブコメ的な展開にするのもいいんですけど、それはもう少し先の予定です。その日が来るまでお預けです。すみません。
最近お気に入り登録件数が200を超えていたのでびっくりしました。そんなに多くの人に読んでもらえていたなんてとても嬉しいです。
これからも頑張って行きたいと思いますので、皆さん応援よろしくお願いします!