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『Weapon・Infinity・Online』  作者: 三日月
《Forest of red 》
13/19

◇13◆

ボスバトル、前編です。

主人公の性格というか、なんというか……歪んだ部分が少し顔を出します。


あぁ……早くこの章を終わらして女の子キャラを出したい……って、何を言ってるんだ俺は……


誤字脱字、その他意見や感想がありましたらご報告よろしくお願いします。

「…………ここか」


俺はキャンプから歩いて数時間ほどの場所にある大きな洞窟に辿り着いた。ここには何度か来たことがあるのだが、いつ来ても身震いが起こる。きっと奥にはボスが居座っているのだろう。


「ふぅ……」


今日は運命の日。昨日の戦闘でLvは51になっている。崖から落ちた当時と比べると、かなりの成長が見て取れる。これならボスともいい勝負ができるだろう。


「さて、行くとしますか!」


俺は洞窟に足を踏み入れる。


外とは違って少しジメッとした空気が漂っている。洞窟特有のものなのか足元はコケに覆われていて、少し滑りやすくなっていた。こんなところでボスと戦うのか……?


そこからもボスの気配はせず、歩きにくい洞窟の中を進んでいくだけだった。しかし―――


「……ん? 向こう側が明るいな……」


洞窟に入ってから数十分。反対側が見えてきた。洞窟ではボスの気配がしなかったし、ここで戦うわけではないのかもしれない。俺は出口へと足を進めていった。すると―――


「うわっ……!」


眩い光が俺を包んだ。


あまりの眩しさに目を細める。長い間薄暗い森の中で生活した所為なのか、出た瞬間はしばらく目を開けることができなかった。


眩しさに耐え目を開くと、


「おお……」


そこには背丈の低い草たちが生い茂り、見晴らしのいい光景が広がっていた。


森の中とは違う光景に一瞬我を忘れる。


「こんなところがあったのか……」


思わずゲームであるということを忘れてしまうほどこの大草原はよくできていた。草の香り、吹き抜ける風、土の感触などがハッキリと感じ取れる。


けれどおかしい点が一つある。


「ボスはどこだ……?」


辺りを見回してもそんなボスの姿が無いのだ。あるのは広けて見晴らしのいい大草原だけ。もしかしてここはボスと戦う場所ではないのかもしれない。


「でもあそこの洞窟以外にそんな場所は無かったんだけどな……」


二ヶ月で森の中を全て探索したのだ。先ほどの洞窟とこの草原以外で他にボスが出てくる場所があるとはとても考えづらい。


ビュオォォッッ!!


「んおっ……」


突如として草原に突風が吹く。風が下から上に吹き上げ、その辺りの草の葉が舞う。それを目で追っていくとそこには――――


「……なるほどな」


先ほどまで青空を映し出していたはずの空には翼を大きく広げたハヤブサの姿があった。いや、ハヤブサかどうかはわからないが。


「コイツがボスか」


大きさは俺とそれほど変わらない。虎のほうがまだ強そうに見えたな。


ハヤブサと思しき鳥は俺と相対するように地面に降り立ち、その大きな翼を広げて声を上げた。


キェェエェェエェ!!


その声で空気が硬直し、ピリピリと肌が痺れるような感覚に陥った。俺も太刀を鞘から抜き目の前のハヤブサを見据える。どんなものか……!


「だぁっ!!」


戦闘が始まり、俺が太刀を構えて斬り込む。ハヤブサは後ろに飛び退いて俺の攻撃をかわした。ハヤブサは森のモンスターと違って動きが素早く、こちらもそれ相応の攻撃をしないと一撃も当たりそうに無い。


それなら――――


「《クイックエッジ》!!」


速さで勝るこのスキルならそれができるはずだ。瞬間的に上昇した脚力を活かしてハヤブサに接近し、両手に構えた太刀を交差させるように振り斬った。流石にこれには当たったようで、HPゲージを少しだけ削ることに成功した。


キェェエェェエェ!! ――――ヒィン


しかしダメージを負ったハヤブサは次の行動に打って出た。


「魔法か……!?」


魔法を使用したときに鳴る独特の音がした後、竜巻が発生した。


「やべぇ!」


竜巻は凄まじい速さでこちらに向かってくる。範囲が大きくて避けるのは無理だ! そう思った瞬間には俺の身体は宙を舞い、上空に吹き飛ばされていた。


「うぁああぁぁぁあっ!?」


キェェエェェエェ!! 


ハヤブサは舞い上げられた俺に狙いを定めて飛び上がる。そして空中で身動きが取れない俺をつかみ上げ、重力を利用して地面にそのままたたきつけた。


「カハッ―――!?」


背中からたたきつけられて一瞬呼吸を忘れる。うぐっ……!


確認するとHPゲージが半分ほど持っていかれているのがわかった。多分今のはそこまで強力な攻撃ではないのだろう。けれどダメージ量が普通のモンスターと違って桁違いなのがよくわかる。流石はボスだ。


「くそっ……! 《双牙》!!」


素早く起き上がってスキルを叫ぶ。ハヤブサの上に牙が連なり振り落とされる。しかし素早く動くハヤブサはその攻撃をいとも容易く避けきり、こちらに反撃の体当たりをお見舞いしてきた。


「ぐぁっ!」


さらにHPが減っていく。残ったHPは一センチにも満たないくらいの長さしか残っていなかった。い、急いで回復を……!


―――ヒィン ブォン ザッシュ!


しかし、回復は叶わなかった。


ハヤブサが体当たりに続いて撃ってきたのは魔法による風の刃。俺は肩周りをザックリと切り裂かれて血を噴き出し、その場に倒れこんだ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっっ!!!」


切られた部分から今まで感じたことの無い痛みを感じ顔を歪めて叫ぶ。HPゲージは見るまでもなく0、ゲームオーバーだ。その瞬間、思考したのは痛みよりもゲームオーバーになったときの恐怖だった。


現実世界でも死んでしまう……そう思っていた。


しかし俺は運が良いことに、あるアイテムを持っていた。


『《復活の種》を使用します』


あ、そっか。俺そんなに良い物持ってたんだっけ。


「……ちっくしょ……痛ぇ……」


体力が三分の一だけ回復し先ほどの戦闘に戻る。俺は先ほど切り裂かれた左肩を押さえつつ、立ち上がった。回復薬を使用しハヤブサのほうを見ると、まだ体力は一割も削れていなかった。


Lv差はそこまで無いはずなんだが、あの素早さの所為で効率よくダメージを与えることができない。これじゃあ何度生き返っても無駄だろう。


ここは魔法とスキルを組み合わせてチマチマ削っていくしかないな。


「《暗黒瘴/Black Mist》!!」


ハヤブサの周りを黒い瘴気が包み込む。ボスに状態異常は効くのかどうか不安だったが何も無いところに風魔法を撃っているところを見る限り、どうやら効いているということがわかる。


俺は攻撃に当たらないように接近しつつ、スキルを発動する。


「《十六夜華葬いざよいかそう!!》」


発動と同時に目にも留まらぬ速さで十六回、ハヤブサを斬りつけた。ダメージはそこそこ食らったようで、ハヤブサの体力を三割ほど削ることに成功。この調子でいけば勝てない相手ではないはずだ。


しかし上手くいったのもここまでだった。


キェェエェェエェ!! ブォン


ハヤブサは自らの翼で風を起こし瘴気を吹き飛ばしてしまった。勿論、盲目状態は解けてしまっている。このままだと追撃を食らう……! 俺は《ステップ》で素早く後ろに下がり、体勢を整えた。けど、


「あっ―――!? ぐはっ!?」


体勢を整えた所にハヤブサの蹴りが入る。あまりの速さに驚いている暇すらも無かった。その一撃は俺のHPゲージを容易く削っていき、残りは二割程度となってしまった。


「くそっ! くっ――――ぐぁぁぁっっ!!」


そしてまたも回復している暇もなく風の刃が俺の脇腹に突き刺さった。「ドスッ」と突き刺さった刃は俺の残った体力を根こそぎ削り、またもゲームオーバーにしてしまう。


『《復活の種》を使用します』


もう一度《復活の種》を使って0になった体力を回復し、再びハヤブサの前に相対する。残る《復活の種》は残り一個。使い切っても勝てるかどうかはわからない。


《復活の種》がなくなってしまえば待っているのは死だけ。負けることは許されない。


「…………」


俺は思考した。


敵の素早さに翻弄されて手も足も出ない、復活のできる回数は後一回だけ、死んでしまえばそこで終わりというこの極限状態。この状態で起死回生なんか普通は狙えない。けど――――


「―――……ははは」


思わず笑みがこぼれてしまうのは、何でだろうか。


★☆★☆★


「――――主任の息子さんって、どんなお子さんなんですか?」


「ん? 何でそんなことを聞くんだ?」


男は紅蓮こと朝井直弥の父でここの開発主任でもある朝井健一郎に問うた。


ここは『PVS』内の研究所。イベントの調整も終わり、開発チームで一段楽しているところだった。他の者は次の作業のために眠ったり、準備をしたりして時間を潰している。


「だって、『WIO』をプレイしているんでしょう? どうしてそんなことになってしまったのかとか、気になるじゃないですか」


「それは単純に俺が進めたからだ。直弥の特徴か……」


少し考えてからすぐに言葉を発する。


「短気な所かな」


「それじゃ普通じゃないですか。他にはありますか?」


「えー? うーん、そうだなぁ……」


また少し考えてから答える。


「少し変わった子、かな?」


「それじゃ主任とあんまり変わらないですね」


「おい、失礼だぞ」


「へへっ。どうもすみません」


男は軽く謝り、話を本題に戻す。


「それで、どんなところが変なんですか?」


「えっ? ……そうだなぁ」


そこまで考えてはいなかったようで今度は答えを出すのに時間がかかった。待ち焦がれた先に出た答えは、どうやらスポーツ男子には当たり前の回答ようだった。


「負けず嫌いな所……かもしれんな」


「あれ? 意外と普通……」


納得がいかないといった表情で男は唸った。しかしそこに付け足すようにして健一郎はこう言う。


「いやね? 負けず嫌いといってもアイツは普通のとは少し違うんだ」


「と、言うと?」


「アイツの場合、逆境からの起死回生をするのが好きみたいでね。バスケの試合も負けていたと思ったらすぐに逆転をしてしまうんだ」


「へぇ? そりゃ凄いですね」


男は普通に感心した。しかし健一郎は少し困ったような声を出す。


「それが良くないんだよ。アイツの場合」


「へ? なんでですか?」


「アイツは……自分をわざと逆境に追い込んで、そこからが挽回するのが好きなんだ」


「へ、へぇ……」


健一郎は息子の悪い所をいくつか挙げる。


「逆転をして勝ったバスケの試合だって、アイツが手を抜いていたから最初は負けていたんだ。だからいつでも力を出せる人間になって欲しいんだよ、父親こちらとしてはね」


「なるほど……確かに変なお子さんですね」


「本当……変な子だよ――――」


☆★☆★☆


「――――……ははは」


この状況にもかかわらず、笑みがこぼれる。


「あーはははっ!!」


死んでしまうという恐怖で壊れたわけではない。別に俺はいたって平常心だ。


なら何故笑っているのか……


「最高だよ……この状況。――――最っっっっっっっっ高に燃えるじゃねかぁぁぁぁぁぁ!!」


バスケでまるで残り1ピリオドしかないのに二十点くらい差をつけられた時みたいな、そんな感覚だ。逆転不可能な、そんな状況でこそ、俺は燃えるんだ。


「これだよ……これこそが俺の求めていた勝負だ!」


虎を倒したときとは違った喜びが全身を駆け巡る。森の中ではそこまで極限状態になるような命のやり取りはできなかったからか、ここまで溜まりに溜まったストレスと一緒に気持ちが溢れ出す。


バスケと違うのは“ゲームオーバーになってはいけない”ということ。


両手に持っている太刀をもう一度強く握り締める。回復薬を使って体力を全快にまでし、次の数十手までの行動パターンを考え出す。しかし考えても考えてもあと一手が足りない。状況打破のための強力な一手が。


「絶っ対に負けねぇぞ……」


そんな俺に、天は味方をした。


「……ん? た、太刀が……!」


突如として握っていた太刀が光り輝き、その瞬間から自分に力がみなぎってくるのがわかった。光が収まったあとに太刀を確認すると刀身は最初に見たときのくすんだ灰色ではなく、引き込まれるような青色になっていた。


何事かと思っているうちに目の前にディスプレイが表示された。



『《呪われた武器シリーズ》の二ヶ月間の装備を確認しました』


『武器《呪われた双手太刀》が変化しました。武器《暴食二太刀グラトニ・ベルゼ》を入手しました』


『《呪われた双手太刀》の呪いが解除されました。すばやさが元に戻りました』


『特殊スキル《暴食》を手に入れました』


『勲章《呪いの享受》《七つの大罪》を入手しました』



「これは……!?」


様々なスキルと勲章が手に入り、一瞬だけパニックに陥る。しかしわかったことも幾つかあった。


この武器……《呪われた双手太刀》だったこの武器は、二ヶ月装備し続けると別のものに変化するらしい。まるでご褒美のようなシステムだな。それで、今日がその二ヶ月目だったというわけか。


「力が……沸いてくる……」


太刀を伝ってパワーが溢れ出してくる。これが呪いに耐え切った者だけが手に入れる力……


「行くぞ……!」


太刀をキッと持ち直し、ハヤブサに向ける。反撃もしないでただダメージを食らっていたのが本当の俺だと思うなよ……? 


本気を――――見せてやる。

今回の話は呪われた武器を馬鹿にするなよ? みたいなことが言いたかっただけです。間の会話はフリみたいなものです。


ちなみに七つの大罪を選んだのには訳がありまして……


『鋼の錬金術師』の影響ですね。久しぶりに読み返していたらそんな感じの武器が出来上がっていました。でも別に敵を食べたりしません。そんな予定は無いので残念がらないでくださいね?


これからも色んな漫画や小説からヒントを得て燃える展開や武器を考えていきたいです。


次回でこの章は最後ですので、応援よろしくお願いします。

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