◆12◇
正直、グダグダです。後に変更を考えているので深く考えず「あーこういう流れにこれからなるのかな?」とかそんな感じで読んでいただければ光栄です。
誤字脱字、意見や感想があればいつでもお願いしまう。
俺が崖から落ちて明日でもうすぐ二ヶ月となる。前を見据えて、Lvを上げて、力をつけて、そして外に出ること信じて戦う日々。もうそんなのには飽き飽きだ。
「……行くか」
キャンプの出口に向かいながらボソッと呟く。
日常化した敵と戦う毎日。その度に上がるLvは現在すでに45。今ではイノシシの群れはもちろん、角の生えた牛にだって負けやしない。
「どこにいる……?」
《探知》で敵の位置を把握しつつ、獲物を探す。
今日はこのステージで一番強いと思われる青い虎を倒すと決めた日である。コイツに勝てたら次こそはボスと戦うと、そう心に決めていたのだ。
二ヶ月経ってもアイツを倒せなければ、絶対にボスだって倒せるわけないだろう。そういうものだ。
「……いた」
俺は川べりで水を飲んでいる青い虎を見つけた。
いつもは襲われてばっかりだったが、今日は違う。正々堂々コイツを斬り伏せて、ボスも倒してやる。そして俺は外の世界に出るんだ……!
今では慣れてしまった双手太刀を強く握りなおし、虎の背後へと接近する。そして俺に気が付いていない虎の背後からいきなり突き攻撃を浴びせた。
「《閃》!!」
ザシュッ!!
太刀が皮を突き破って肉を裂き、小さな穴を開けた。そこから止め処無く溢れる血が俺に降りかかる。血独特の鉄が錆びたような香りが鼻の奥に突き刺さった。
グルゥォォォオオオ!?
虎は雄叫びを上げて振り返る。そこには虎の鮮血に塗れた俺の姿があった。
「よう……会いに来たぜ?」
言葉が通じるかどうかはわからないが、一応声をかけてみる。これから戦う相手に敬意とか、そんな感じの何かを払っておこうと思う。一応長い間待ち焦がれた戦闘だったわけだし、そのくらいはしておこう。
しかし、俺の敬意に対して返事は虎の大きな腕で返ってきた。
ブゥン!!
「危ねっ!?」
ズガァン!!
出された腕に対して咄嗟に《回転回避》を行う。腕は垂直に振り下ろされ、大きく地面を抉った。当たればかなり危険だっただろう。恐らく一撃で体力をごっそり持っていかれるくらいに。
「《クロスリッパー》!!」
即座に反撃の態勢に移り、剣術スキルを発動する。
虎に近づきその大きな腕を切りつける。切られた部分は赤く煌き、十字を描きながら血を噴出した。この時点でダメージは二割程度。まだ何か隠し球を持っていると思うが構わず次の攻撃に移る。
「《シャドウスラッシュ》!!」
スキル名を叫んだ瞬間に太刀が影を纏い、一つの刃が八つに割れる。
「だりゃぁぁぁっっ!!」
瞬間的に虎の腹に潜り込み、頭上にいる虎に向け連続で斬り込んだ。最初の《スラッシュ》とは比べ物にならないほどの力を誇るこのスキルは分裂した刃の力と合わさり、とてつもない破壊力を発揮する。
数十回斬りつけた時に、HPゲージは五割ほどになった。このまま畳み込めればいける!!
グルゥオオオオ!!
「はっ!」
虎の反撃を《ステップ》でかわし、距離をとる。ダメージは負っていないが思わぬ一撃があるかもしれない。普通なら慎重に虎の動きを観察して行動する必要がある。けど―――
「《デッドドライブ》!!」
俺には時間が無いんだ。そう、時間が。
いつもならここで落ち着いて魔法による牽制を行うんだが、生憎そんな思考はなかった。
俺は明日には確実にこの森を抜けなければならない理由があるのだ。それは一昨日ほど前に遡る。
…………
いつものようにモンスターとの戦闘を終えキャンプで休んでいる時、一つのメールが入った。
『ピン! メールが来ました。メールが来ました』
「ん?」
中を読んでみるとそれはイベントの告知だった。
『 第一回 ハジマリの森大会開催のお知らせ
このゲームが開始してからもうすぐ二ヶ月。早いものだろう。
早い者は既に大分先まで進んでいるようだな。遅くともしっかりとパーティを組み、連携している者もいる。当初の頃とは違って素晴らしい成長を遂げた者もいるだろうな……
まぁ何が言いたいかというと、諸君らはそろそろこのゲームに慣れてきたはずだ。
そんなわけでプレイヤー諸君に告ぐ。このゲーム一回目の記念すべきイベントが行われることになった。
開催場所は君たちが既に通過したであろう《ハジマリの森》。何が行われるかはそこで連絡する。
上位の順位に入ったものには特別な『悪魔の武器シリーズ』の一つをプレゼントする予定だ。
『悪魔の武器シリーズ』は全てにおいて普通の武器とは違った能力が付加されており、攻撃力においても他の追随を許さない。
是非、上位入賞に目指して励んでほしい。以上運営からだ。
なお、参加不参加はにおいては個人の自由である。 』
「……イベントの予告か……クラウンは出るのかな?」
一ヶ月と数週間は会っていない友の顔を必死に思い浮かべる。やばい。何故か顔にモザイクがかかったような感じだ。いい加減ここから出ないと本当に廃人になってしまう。
するとメールが送られてきてから数分もしないうちにまたもやメールが来た。
「く、クラウンからだ!!」
テンションが上がる。久しぶりの外界からの連絡だ。上がらないほうがおかしい。
「えーとなになに……」
メールを読んでみると、そこにはこう書かれていた。
『久しぶりだな紅蓮。旅は順調か? お前にも仲間ができていると嬉しいんだが……それは会ったときに確かめるから期待している。そうそう、今はそんなことを言いに来たわけじゃないんだ。このイベントを機にお互いの実力を見せ合わないか? まぁ単純な話……俺と勝負をしてくれないかということだ。イベントも近いし、《ハジマリの森》で一緒に会って話そう。待ってるぞ』
「おお……俺も会いたいなぁ」
なんとも喜ばしい文面だが俺には一つ問題がある。この森からの脱出だ。
「何とかして間に合わせたいな……」
俺の力じゃボスのLvまで恐らくまだ少し足りないだろう。虎なら倒せるかもしれないが、ボスはわからない。そんな中にクラウンに呼ばれるとは……最悪だ。
イベントにも出たいし、クラウンとも会いたい。しかしあと数日でこのステージを抜けられるかはどうか思っていたところだ。しかし、どうしても出たい……
確認のためにイベントのメールをもう一度見直す。どこかに延長措置のようなものが無いかと血眼になりながら。
「……ん?」
最初のイベントのメールを読み返してみると、端っこの方に受付の日時が書いてあった。
《※受付はゲーム開始から二ヵ月丁度に開始し、その後一日までに限ります》
「その後一日までって……期限は二日間ってことかよ!? 短っ!」
イベントの受付にもそんなに時間は無かった。参加不参加は自由と書いてあるが、初のイベントに自分だけ出られないというのは凄く嫌だ。
「受付までもそんなに時間が無いし……よし、この数日でスパートをかけるか」
俺はボスまでの綿密なスケジュールを立て、それまでにLvを50に上げることを目標としたのだった。時間はドンドン過ぎていく。一分一秒が惜しい。
「前日には虎も倒せるようになりたいな……」
こうして俺に、この数日中にこの森を抜けなければいけない理由ができたのだ。
…………
コイツを倒しても大幅なLvアップは望めない。少しは上がるだろうが、他にもたくさん倒さないと上がらないのが現状だ。何としてでも明後日までの締め切りに間に合わせるために、俺は確実にこのステージを切り抜けなくちゃいけない。だからこんな虎如きで―――
「――――てこずってる訳にはいかねぇぇんだよぉぉぉぉっ!!」
虎に負けじと俺も雄叫びを上げる。
ゴゥ! ブォン!
風斬り音が鳴る。
俺は強力な突進スキルの《デッドドライブ》を仕掛けたのだった。
前方を凄まじい勢いで斬りつけながら走り抜けるこのスキルは一撃が重く、直撃すれば死は免れない。虎であろうともこれに耐えることはできない。
グオォォオォオオ!!
俺の攻撃に対し、迎え撃つような姿勢で虎は身構える。甘いな。このスキルは絶対に負けない。心臓や脳天といった急所に当たることは無いだろうが、威力で押し切ってみせる。俺は太刀を握る手に力を込めた。そして、
虎との距離がゼロとなり、ぶつかり合う。
「ぜりゃっぁぁぁぁっっ!!」
ズバシュッ!! ザバァン!!
瞬間的に俺は虎の腕を斬り落とし、続く突進によって前方の川に吹き飛ばしていた。ダメージ量は今ので良かったのだろうかと不安に思ったが、十分だったようで虎のHPゲージは0になっていた。
強力な一撃によって川へと吹き飛ばされた虎は、どこか悔しそうな顔を浮かべながら砂となった。
「はぁっ……はぁっ……」
スタミナ切れによる疲労が身体を襲う。《デッドドライブ》はスキルの中でもスタミナの消費が特に激しく、連続して放つことはできない。しかしその威力はどこか惹かれるものだあるのも事実だ。これからもこのスキルには助けられることだろう。
ピン!
Lvが48に上がり、新たなスキルと魔術剣を手に入れる。確実に近づいていく脱出への道に俺は喜びを噛み締めながら、スタミナの回復を待たずに次の獲物を探しに森の中へと進んでいったのだった。
次回はやっとこさとのボスとの戦闘が待っています。
しっかりと話の構成からやるので少し時間がかかるかもしれません。
それでも読んでいただければ嬉しいです。
それでは。