Prologue.
耳を劈くような悲鳴。部屋に蔓延する血の匂い。目の前には死体が一つ。
部屋に響く楽しそうな笑い声は誰のものだっただろう。
鮮やかな赤で彩られた部屋にただ立ち尽くす五つの人影。
「もう十分でしょう?さぁ、楽しい遊戯を続けましょう」
そう言って彼は小さく微笑んだ。
✧
招待状
拝啓 ────様。
木々も静かに色付き始める季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
この度、貴方様のくだらなく面白味の無い人生のために素晴らしい遊戯を用意いたしましたので下記の通りお知らせいたします。
きっと忘れられぬ思い出となることでしょう。
貴方様のご参加、心よりお待ちしております。
敬具
20××年 10月 25日 (土)
ゲームマスター
日時:20××年 10月 28日 (火)
場所:─────────────
尚、不参加となる場合は……
✧
こんな馬鹿げた招待状を受け取ったからと言ってホイホイ顔を出しに行くのはきっと間違いなんだろう。
だが、「くだらなく面白味の無い人生」などとキッパリ言われてしまってはさすがに頭に来るというものだ。
それに、不参加の場合の手続きなどが書いてあったであろう場所が、意図的に汚されていた。
つまり、招待状とは書いてあるが俺たちに選択肢は無いということだろう。
ふざけた話だ。などと毒づいている俺は、正直に言うと心が踊っていた。
これはきっとデスゲームへの招待状だ。それ以外考えられないだろう。絶対にそうだ。違う可能性などどうでもいい。
ゲームマスターはどんな人物なんだろうか。妄想が止まらない。
何故ならこの勢いで行くと俺が日頃からしている『あーあ、ある日突然デスゲームに招待されてそこのゲームマスターが俺の癖にどストライクでなんなら俺に好意を持ってくれないかな』という妄想が現実になるかもしれないのだ。
好意を持つと言っても付き合ったりなどがしたい訳ではない。俺が求めているのは友人のような距離感で、お互いが心の拠り所となれるようなそんな関係だ。
面倒くさいと思われるかもしれないがどうでもいい。そんな奴らは好きにさせておけばいいのだ。
地図アプリが目的地へ着いたことを知らせる。
こんな距離を歩いたのは中学生の修学旅行以来かもしれない。
大きな期待と僅かな不安を胸に、俺は扉に手をかけた。
✧
たどり着いた先には四人の男女がいた。
完全に見た目での判断だが、歳はそれほど離れていないようだ。
ボーイッシュで気の強そうな女性。明るい茶髪をハーフアップにした可愛らしい女性。肩あたりまで伸びた髪を耳にかけ、座り込み本を読んでいる男性。そして、いかにも運動部といった雰囲気の男性。
それぞれが不安を抱え同じ時間を過ごしている。
参加者はこれで全員なんだろうか。
改めて部屋を見渡す。部屋の中心に大きな机、人数分の椅子。そして大きなモニター……。
よし、どっからどう見てもデスゲームをするために存在する部屋だ。
どうしよう、めっちゃワクワクしてきた!!
現在の俺は完全に場違いである。
だがそんなことはどうでもいい。次の展開だって目に見えている。
次はきっと俺たちをここへ招待したゲームマスターの登場だ。
そしてようやくデスゲームがスタートする……!よっしゃああああああ!!はやくこいゲームマスター!!!
……………………なんだろう、泣きたくなる程冷たい視線を感じる。
モニターがあるのだから、やはりモニター越しの対面になるんだろう。
どんな顔をしているんだろうか。怪しげな仮面をつけているのか、それともつけていないのか。楽しみで仕方がない。
ザザッという砂嵐の音とともにモニターの電源が入る。
さぁ、いよいよゲームマスターさんとのご対面だ。
…………と、思ったんだが。
液晶 画面に映し出されていたのは「もう暫くお待ちください。」という文字だった。
なんだろう。思ってたのと違う。これはもしかしなくとも、いつになったら始まるのかとソワソワしている俺たちのために?いい人過ぎないか、ゲームマスター……?
十分ほど経っただろうか。
突然、目の前にある扉から鍵を開けるような音が聞こえた。
あの扉は俺が確かめた時には外から鍵がかかっていて開かなかった。
となると、入ってくるのは今度こそゲームマスターのはず……!!
よっしゃー!!さよなら俺の代わり映えのしない日常!ようこそデスゲームという非日常!!!
俺は小さくガッツポーズをした。
それとほとんど同時に扉が静かに開く。
コツコツと上等な靴が鳴らすような音を立てながら中へ入ってきたのは180センチに届くのではないかというほど背が高く、人形のような人だった。
その見た目はなんと俺の癖にどストライク。
俺の妄想がどんどん現実のものへと変化していく。面白くて仕方がない。
これは本当に現実か?夢なのかもしれない。そんな思いから頬をつねってみる。
…………痛い。強くつねりすぎた。
「皆様、ようこそお越しくださいました。これからの数日間が忘れられぬ素晴らしい思い出となることは、ゲームマスターである私が保証いたします。心ゆくまでお楽しみください」
痛みに涙している俺の前に立ったゲームマスターは考えの読めない怪しげな微笑みを浮かべてた。




