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公爵家の養女  作者: 透明
第三章 おとぎ話のような
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ここにいて?



 引き続き、音楽祭を楽しむリーナたち。


 音楽祭を楽しむと言っても、先ほどから出店を見回っては食べ物を食べているので、ほとんど食事を楽しんでいるようなものだが。




 「おいし! これすごく美味しい!」




 シュタインは、目をまん丸にしては、手に持つタコを辛い味付けで炒めた物を見る。




 「みんなも食べてみて!」とみんなに分けるシュタイン。


 ノアにも「食べてみて!」と渡そうとするのを、ノアの向かい側に座るリーナが「あ……シセルバン伯爵は辛いの食べられないですよね?」と遮る。



 リーナの言葉に「え? そうなの?」とノアを見るシュタイン。


 ノアは「えぇ。得意ではないです」と頷くと、リーナを見て言う。




 「よく私が辛いのが好きではないということを知っていましたね」




 ノアの言葉に、リーナは「あ……」と呟くと、やってしまったわ……。と思う。


 


 ノアが辛い食べ物が苦手な事は、回帰前、婚約者だった時に聞いた事。


 よく、ノアと食事をしに行った時に、辛い食べ物が出たら私が食べていたからつい癖で……。




 リーナはそう考えながら、ノアを見ては絶対不審に思ってるよね……。と思う。


 なんとか誤魔化さなければと、リーナは「ま、前に聞いたことがあって……そうかなと……」と眉を下げて笑みを浮かべる。



 流石に無理があるかと思ったが、ノアは納得したのか「なるほど」と頷くと、それ以外は何も言ってこなかった。


 リーナは良かったと胸を撫で下ろすと、発言に気をつけないとと気を引き締める。



 回帰前、一番一緒にいたのがノアだったから、昔の癖が抜けてないみたい。


 しっかりしないと。




 そうリーナは思うも、昔の癖というものは中々抜けないようで、ノアが何かを探す素振りを見せると「飲み物なら向こうに売っていましたよ」とノアの考えている事が分かっているような発言をしてしまう。


 流石のノアもこれには驚いたように、目を丸くしては「よく、分かりましたね……」と言う。




 その事にしまったと思ったのも束の間、シュタインが「えぇ~なーんか二人怪しくない?」とニヤニヤし出す。




 「え?」


 「まるで夫婦じゃん! 何も言わなくても考えていることわかるなんてさ!」




 そう言うシュタインにリーナは「え!? そ、そんなのじゃないよ!」と否定するも、いきなりからかわれ、赤くなったリーナの顔を見たシュタインが「顔、赤いけど?」と更にからかう。




 「そんなのじゃないから! シセルバン伯爵にも失礼だからやめて!」


 「えぇ~別にいいじゃん! お似合いだし! ねぇ? シセルバン伯爵? うちのリーナは美人だしいい子だよ?」




 シュタインがそう言った時「シュタイン」と呼ぶ声がする。


 その声はエーデルによるもので、エーデルは「そこまでにしとけ。二人とも困っているだろ」と注意する。



 シュタインは「はーい……」と大人しくエーデルの言うことを聞くと、つまんないのと言いたげに、残りのタコを頬張る。


 そんなシュタインからエーデルは、一つため息をつきながら視線を逸らすと、向かい側に座るリヒトに視線を向ける。



 リヒトは何か思う事があるように、リーナとノアに視線を向けては何も言わずに逸らした。




 「グランベセル公子、見てください!」




 エンゲルはそう言って、隣にいるリヒトの方に顔を向ける。


 リヒトは「綺麗ですね」と笑みを浮かべる。



 そして楽しそうに話し出す二人を、後ろで見るリーナ。


 楽しそうに可愛らしい笑みを浮かべ、リヒトを見上げるエンゲルを見て、リーナはやっぱり……と考える。



 それは誰が見ても、エンゲルはリヒトに想いを抱いているのだと分かる。


 ただでさえ可愛らしいのに、リヒトの前ではいつもの何倍も可愛らしくなっている。


 恋をする女の子はこんなにも可愛いんだなと思う反面、リヒトへのエンゲルの想いに気づき、どこか複雑な思いがリーナには出てくるのだった。



 それと同時にある事を思い出す。




 そういえば、回帰前に一度リヒトが誰かとお見合いをしたという話が話題になっていたっけ。。


 それまで一度もお見合いなんてした事がないらしく、というか、それまで一度も女性と浮いた話がなかったリヒトがお見合いしたとなり、しばらくの間、その話で持ちきりだった。



 会う人会う人がその話をしており、嫌でも耳に入って来たその話に、リーナはへぇ……としか思っておらず、右から左へ話を流しており、詳しい事は覚えていない。


 けれども、お見合い相手の名前も繰り返し言われていたから、聞いてはいなくとも頭には残っていたようだ。




 『グランべセルのお見合い相手は、あのファルバーニ伯爵家の娘だそうだ』




 突如思い出されたその記憶に、リーナの胸はドクンッ――と音を立てては、体が少し重くなったような感覚になる。




 どうして今まで忘れていたんだろう。


 回帰前に、リヒトとエンゲルがお見合いをしたと噂になっていたのに。



 私が死んだあと、リヒトはどうしたのかは分からない。


 けれどもし、誰かと結婚したのなら、きっとそれは――




 その時、頭上から「ヴァンディリア嬢」と呼ぶ声がする。


 その声にハッとして顔を上げると、隣を歩くノアと目が合う。



 先ほどまで前の方を歩いていたはずのノアが何故、私の隣に……?


 そう驚いた表情を浮かべ、ノアを見上げるリーナに、ノアは「顔色が良くないようですが、体調が良くないのですか?」と問いかける。




 その言葉に、リーナは「え……」と呟くも、まさかそれを聞くために、自分の元へと来てくれたのかと思う。


 何も言わないリーナに、ノアは「体調が良くないのなら少し休んだほうがよろしいかと」と言う。



 そんなノアを見て、リーナは回帰前の記憶が頭をよぎる。




 お互い、人としては好きだったけど、愛し合っていたわけではない。


 友愛はあったのかもしれないけれど、皆が思い浮かぶような愛はなかった。



 それでもノアはいつも、私のことを気にかけてくれて、いつも私が泣きそうな時とかにこうやって隣にいてくれたっけ。


 リーナはそれが何だか懐かしくなり、そして嬉しくなり、笑みを浮かべると「気にかけてくれてありがとうございます。」と礼を言う。




 「元気なので心配しないでください!」


 「本当ですか?」


 「本当です。シセルバン伯爵は意外と心配性なんですね」




 そう話しながらリーナは、良く二人でお茶をしてはくだらない事を言い合っていた時のことを思い出していた。




 しばらく出店を見回り、リーナたちは休憩を取れる場所へとやって来ては、椅子に腰を下ろし、足の疲れを取っていた。


 だが、エーデルはシュタインに『向こうで人形劇やってるって! 兄貴観に行こう!』と半ば強引に連れて行かれ、その場にはいない。



 残ったリーナ、リヒト、エミリア、ノア、エンゲルの五人は飲み物を飲みながらゆっくりと過ごしていた時、周りの人の「向こうで有名な音楽団が来ているらしいよ!」と言う声を聞き、エミリアが「音楽団?」と興味を示す。




 「アンデルの音楽団のことだと思いますよ。アンデルは音楽が盛んですから」




 ノアの言葉にエミリアは「あの有名な! 私生で聞いてみたかったのよね!」と立ち上がる。


 エンゲルも「私も聞いてみたいです」とエミリアに続くように立つ。




 「兄様たちは?」とエミリアはリヒトたちに音楽団を聴きに行くか尋ねるも、リヒトは「俺はいいよ」と断る。


 意外な事に、ノアは「私も行きます」とエミリアたちについて行くらしい。



 リーナはどうしようかと悩んでいると、ノアが「ヴァンディリア嬢も行きませんか?」と誘ってくる。


 まさか、ノアに誘われるとは思っておらず、そして少し興味があるため頷きリーナは立ち上がると、少し先を行くノアたちの元へと行こうとした。



 だが、後ろからそっと触れるように左の小指を掴まれ、動きが止まる。


 リーナは驚き後ろを振り返る。



 リーナの後ろにはリヒトがおり、リーナの小指を掴んだのももちろんリヒトだ。


 リーナは驚きながらも「リヒト……? どうしたの……?」と問うと、リヒトはどこか不安そうな表情を浮かべながら言う。




 「俺とここにいて?」


 「え……」




 何が起こったのか瞬時に理解はできなかった。


 だが、リヒトの言葉を聞いたリーナは、自然と口から「う、うん」と零れ、首は勝手に頷いていた。



 リーナの返事にリヒトは少し安心したような表情を浮かべるも、まだどこか不安そうに見える。


 そんなリヒトにどうしたのかと聞こうとした時「リーナ!」と呼ぶ声がする。



 振り返ると、エミリアたちが立ち止まり、リーナのことを見ていた。




 「行かないのー?」離れているため、そう大きな声でリーナに問うエミリアに、リーナは「うん……! 皆で楽しんできて!」と返す。


 エミリアは「分かったー!」と返事をすると、歩いて行く。



 そんなエミリアたちの背を見送るリーナは、平然として見えるが、内心凄く戸惑っていた。


 まさかリヒトにああいう風に引き留められるとは思っていなかった。



 リヒトに触れられている小指が熱く感じる。


 そんなリーナに、リヒトは「……ごめんね」と謝る。




 突然の謝罪にリーナは「え?」と驚き、リヒトを振り返る。


 リヒトは座っているため、見上げる形でリーナを見上げているせいか、リヒトがどこか幼く見える。



 そんないつもと違うリヒトに、ドキッとしながらも、リーナはリヒトを見つめる。


 するとリヒトはリーナの小指を掴みながら、どこか拗ねたように言う。




 「でも、嫌だったから……」




 そうはっきりしない口ぶりで話すリヒトに、リーナは「嫌だった?」と首を傾げると、リヒトは「……シセルバン伯爵とリーナが仲良くなるの」と言う。


 真っ直ぐはっきりと口にしたリヒト。



 その事に、リーナは一気に耳まで赤くなるのと同時に戸惑う。


 リヒトがそう言うことをリーナに言ったことは今までなかった。



 そして、リヒトがそんな事を言う人だということも思っていなかった。


 リーナは戸惑いと恥ずかしさから、何と返せばいいか分からず「えっと……」と言葉を詰まらせる。



 そんなリーナにリヒトは「わがまま言ってごめんね。音楽団見に行きたかったよね」と謝る。




 「やっぱり今からでも――」




 そう言うリヒトに、リーナは「ここにいるよ」と遮る。


 驚くリヒト。リーナは恥ずかしさから汗が滲む手を握りながら「私もリヒトと一緒にいたいから……」と、最後の方は声が小さくなりながら言う。



 その言葉にリヒトは驚いた表情を浮かべるも、すぐに赤くなる顔を隠すように、手を口元にあてると「うん……。ありがとう」と視線を逸らす。

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