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公爵家の養女  作者: 透明
第三章 おとぎ話のような
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おでかけ



 「それでは、まとめて出して来ますね!」




 メイドのハンナは手に手紙を持ち、本を読むリーナに声をかける。


 リーナは「よろしくね」と頷くと、ハンナは部屋から出る。



 ハンナはよく、田舎にいる家族に手紙を出しており、今日も嬉しそうに手紙を出しに行く。


 ちょうど、階段を降りるときに角で誰かとぶつかってしまい、痛む鼻を押さえながら「すみません……!」と顔を見上げる。



 だが、予想していた位置に顔はなく、更にハンナは顔を上げる。


 ハンナが鼻から少し手を離すと「あ……」と呟くと同時に「申し訳ありません。お怪我はありませんか?」と低い声が降って来る。



 ハンナがぶつかったのはヴァンディリアの騎士、ジークフリートだった。


 何を考えているかわからないジークフリートの視線がハンナに降り注がれ、ハンナは数秒驚いたような表情を浮かべ止まる。



 だが直ぐにハッとし「だ、大丈夫です……!」と一歩下がる。


 ジークフリートは「申し訳ありません。私の注意不足です」と深々と頭を下げる。



 そんな彼にハンナは慌てて「い、いえ! 私の方こそよそ見をしていたから……! すみません!」と手を振る。




 「怪我もないので、気にしないでください!」




 ハンナの言葉にジークフリートは「そうですか」と頷くと、視線を下に向けると「おや……何か落ちていますよ」と拾う。


 ジークフリートの手には、ハンナが持っていた手紙が一枚あり、先ぶつかった時に落としてしまったようだった。



 ハンナは「あ、ありがとうございます」と手紙を受け取ろうとするも、ジークフリートは「手紙を出しに行かれるのですか?」と問いかけてくる。


 「は、はい」と頷くハンナに「それなら、私が出しておきますよ」とジークフリートは言う。




 「え……?」


 「私も手紙を出しに行こうと思っていたので、ぶつかってしまったお詫びに」




 ジークフリートの言葉に、ハンナは少し驚いた表情を浮かべるも「そんな、お任せするわけにはいきません!」と返す。




 「むしろ、私が一緒に出しに行きますよ? ついでに街で買い物もあるので!」




 ハンナの言葉に、ジークフリートは考えているのか、数秒黙ると「……お言葉に甘えさせて頂いてよろしいでしょうか?」と問う。


 そんなジークフリートに、ハンナは「もちろんです!」と笑う。




 「では、よろしくお願いいたします」


 「任せてください! では、行って来ますね!」




 そう言うハンナにジークフリートは「お気をつけて」と返事をすると、ハンナは嬉しそうに階段を降りて行く。


 そんなハンナをジークフリートは、黙って見ていた。







 「このお菓子はカレンというお店のお菓子で、前に一度、両陛下がアサーナトスに訪れた際に食事されたところで、皇后陛下がとても気に入ってくださった店なんです」




 アサーナトスの皇宮には、交流の一環でアンデル国の姫様がやって来ており、アサーナトスの姫であるフレイヤとアンデル語を話すことができるリーナが、皇宮内の中庭でお茶をしていた。


 フレイヤも少しだが、アンデル語を話せるので、アンデルの姫アリーにお茶菓子として用意されたお菓子の説明をする。



 アリーはフレイヤの話を聞くと、目をきらきらとさせ「カレン! お母様からすごく美味しいと聞いていて、食べて見たかったんです!」と顔の前で手を合わせる。




 「頂いてもよろしいですか?」




 フレイヤは「是非」と頷くと、アリーは嬉しそうにカレンの焼き菓子を口に頬張る。


 そして、口にあったのか頬を赤くし「美味しい……!」と笑顔を浮かべる。



 そんなアリーを見て、リーナとフレイヤは顔を見合わせ笑う。


 今回、リーナはお茶に参加する予定はなかったのだが、リーナがアンデル語を勉強しているとフレイヤは知っていたため、アンデル語に自信がないフレイヤはリーナを招待した。



 通訳はつく予定だったが、同年代の子たちだけの方が気兼ねなく話せると、フレイヤは通訳を断ったのだった。




 「アサーナトスはお茶菓子が有名と聞きました。カレン以外にも、有名なお茶菓子を売っている所があるのですか?」




 余程お茶菓子が気に入ったのか、他にも有名なお茶菓子はないかと尋ねてくるアリー。


 リーナは「他にも沢山ありますよ。今、流行っているのはルルと言うお店のフィナンシェです」と話す。




 「ルル? 可愛らしい名前ですね!」


 「私も食べたことがあるけど、確かにすごく美味しかったわ」




 フレイヤの話を聞き「そうなんですね! 食べて見たい……!」と呟くとアリー。


 するとフレイヤが「だったら!」とパチンッと胸の前で手を合わせると「明日、三人でお菓子屋巡りをしませんか?」と提案する。



 「お菓子屋巡り?」とリーナとアリーの声が重なり、同時に首を傾げる。




 「そう! アサーナトスで人気のお菓子屋さんを巡って、ついでに色々買い物とか見て回るの! どう?」




 フレイヤの提案に「楽しそう……!」と乗り気のアリーと「そんないきなり、大丈夫何ですか?」とアサーナトス語で話すリーナ。


 フレイヤもリーナに釣られ「大丈夫よ!」とアサーナトス語で返す。




 「アリーがアサーナトスに滞在する期間は短いんだし、次いつ来れるか分からないからね!」




 フレイヤはそう言うと、侍女を呼びつけると「明日、私とリーナ、それからアリーの三人で街に行くことになったから」と話す。


 あまりにも突然のことで「え?」と驚く侍女を無視し、フレイヤは言う。




 「馬車と騎士の手配よろしくね! あ! 後ドレスも必要ね。せっかくなら三人一緒がいいわね。お願いね!」


 「お父様には……まぁ、後で伝えるとするか」




 そうスラスラと話しては、侍女の「お、お待ちください! 姫様……!」と呼ぶ声も聞かず、フレイヤは「よろしくね」と笑みを浮かべる。


 そして、リーナとアリーの方を見ては「明日は朝早くからお出かけよ!」と言い、アリーは「わぁ……!」と喜んでいる。



 そんな二人を見て、リーナは大丈夫かなぁ……。と今頃、使用人たちはパニックを起こしていないかと心配になる。


 こうして半ば強引に三人でのお出かけが決まったのだった。




 「――わぁ……! とってもお似合いです!」




 翌日、約束通りリーナ、フレイヤ、アリーの三人で街に出かけるため、皇宮へとやって来た三人はお揃いのドレスに身を包んでいる。


 

 お揃いのドレスを着たいと言うフレイヤのわがまま……望みに、リーナは自分のデビュタントの時、ドレスを仕立ててくれたアンナに良いドレスはないかとダメ元で尋ねてみると、丁度三着、色違いのドレスがあると言ってくれ、朝一にアンナがドレスを持って皇宮にやって来てくれたのだった。




 アンナが仕立てたドレスは落ち着いたデザインの中にも品があり、リーナたちに似合っている。


 アリーはドレス姿を鏡で確認すると「アンデルにはあまりないデザインですごく新鮮で素敵です……!」と嬉しそうに一回転する。




 アンナの店はリーナのデビュタント以来、有名になりその他にないデザインからアサーナトスの流行の最先端を行く存在となっていた。


 綺麗に着飾られたリーナたちを見て満足気なアンナ。




 「急だったのに、こんなに私たちに合うドレスを用意できるなんて……流石はアンナね」




 フレイヤもドレスを気に入ったらしく、使用人たちはほっと胸を撫で下ろし、アンナに連絡を取ってくれたリーナと急遽ドレスを用意してくれたアンナに感謝する。




 「身支度も済んだことだし、早速行きましょう!」




 元気のいいフレイヤの言葉を合図に、リーナたちは馬車に乗り込み、フレイヤ付き騎士団の騎士数名同伴の元、街へと向かう。


 あまり、リーナは友人と出かけたりすることはないため、なんだかんだ心配しつつも、三人で出かけれることを楽しみにしていた。



 馬車の中でリーナたちが会話が盛り上がっている間にも、馬車は街へと着く。




 「もう既に甘い香りがしますね」




 馬車から降りて開口一番、アリーはそう言っては匂いを嗅ぐ素振りを見せる。


 そんなアリーの後に馬車から降りて来たフレイヤが「この近くに昨日話していたルルってお店があるの」と話す。




 「先、ルルに行く? それとも少し買い物をしてからにする?」




 フレイヤの問いにリーナは「姫様はどちらがよろしいですか?」とアリーに視線を向けると、アリーは「買い物をしてお腹を空かせましょう!」と笑顔で言う。


 そんなアリーにリーナとフレイヤは笑うと「そうですね」と先に買い物をする事にした。




 「アリーはどのお店に行きたい?」


 「そうですね……私、帽子を集めるのが趣味なので、帽子が売っているところに行きたいです!」




 フレイヤはならばと「私のおすすめのブティック店が近くにあるからそこに行きましょう?」と胸の前で手を叩く。


 そして直ぐに、騎士たちの護衛の元、ブティック店へと足を進める。




 「お久しぶりです。皇女様」




 フレイヤおすすめのブティック店へとやって来ると、ブティック店の女店主が丁寧にフレイヤに挨拶をする。


 フレイヤは「久しぶり。今日は友人を連れて来たの」と軽く挨拶をすると、リーナとアリーの事を紹介する。




 「アリーが帽子が欲しいみたいで、何かおすすめはあるかしら?」




 フレイヤの言葉に店主は「丁度、新作が入ったばかりです!」と意気揚々といくつもの帽子を持って来る。




 「アリー様は綺麗な空色の髪をされていますので、こちらの白のお帽子がお似合いになると思います」




 そう言っては、次から次へと色々な種類の帽子をアリーに試す店主。


 見てるだけで疲れてしまいそうだが、アリーは楽しそうに帽子を試着しており、帽子を集めるのが趣味なだけある。



 その間にリーナやフレイヤも店内を見て回り、それぞれ気に入った物を購入した。



 それから何軒か店を回り、丁度小腹が空く頃になり今日の目的のルルへとお茶をしに行く。




 「凄くいい匂いですね!」




 手に持つフィナンシェの匂いを嗅いでは、笑顔を浮かべるアリー。


 三人は店内でフィナンシェを頂くことにし、アリーは一口、フィナンシェを口にする。



 その瞬間、アリーは驚いたような表情を浮かべては、口元に手を当て「美味しい……!」と呟く。




 「今まで食べたフィナンシェの中で一番美味しいです!」




 どうやら口にあったようで、リーナは「良かったです」と嬉しそうに笑い、フレイヤも「そうでしょ〜? ここのフィナンシェは最高なの!」と一口食べる。




 「フィナンシェの他のお菓子を美味しいんですよ」




 リーナの言葉にアリーは「他のも食べて見たいです!」と言う。




 「他のも頼むのはいいけど、今日はお菓子巡りをするからね。食べ過ぎないようにね」


 「そうでした……!」




 それから三人は他のお菓子屋にも行っては、お菓子を食べ気がつくと、辺りは暗くなっていた。




 「結構疲れましたね」




 後半は、お菓子屋に入ってはお菓子を食べていただけだと言うのに、かなり体力が消耗されてしまった。


 リーナの言葉にフレイヤは「そうね。もうそろそろ帰りましょうか」と言った時、突如、ポツッと顔に冷たい何かが落ちて来たかと思えば、激しい音を立て空から大雨が降って来る。



 あまりに突然のことで、街の屋根の何もない所にいたリーナたちはずぶ濡れになってしまう。




 「皆様、馬車の中へ……!」




 騎士の言うまま、リーナたちは馬車に乗り込むが、ドレスも髪も濡れ「雨が降るなんて聞いてないんですけど……」とフレイヤは呟く。


 その隣でアリーはくしゃみを一つする。



 街から皇宮まではしばらくかかる。


 このままでは、フレイヤとアリが風邪を引いてしまう。



 それはまずいとリーナは「あの、もしよろしければヴァンディリアに寄って行きませんか? ここからは皇宮よりヴァンディリアの方が近いですし、このままではお二人が風邪をひかれてしまいますし」と提案する。


 リーナの話に「いいの?」と返すフレイヤに、アリーは「ヴァンディリア! 是非お邪魔したいです!」と乗り気のよう。



 リーナは「もちろんです」と頷くと、それではお言葉に甘えさせてもらおうと、ヴァンディリアへと向かうことになったのだった。

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