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公爵家の養女  作者: 透明
第三章 おとぎ話のような
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隠し事



 「いやぁ……にしても、本当にこのパーティーは盛り上がっていますね」




 どこかの部屋の中。ヨハス司祭の向かい側に座る、綺麗な身なりをした小太りの男は、そう言っては笑みを浮かべる。




 「取引の方も順調なようで?」


 「えぇ。おかげさまで。」




 そう言ってお酒を一口飲むヨハス。


 そんなヨハスに小太りの男の横に座る、若い男が「ですが、何人か中毒症状を起こし捕まっているとかで、大丈夫なんでしょうか?」と眉を顰め尋ねる。



 その言葉にヨハスは「問題ありません。仮にこのパーティー会場に目をつけられたとしても、この部屋にまでは誰もこれまい」と笑みを浮かべる。




 「君は心配性だなぁ! 最近の若者の特徴か? そんなに心配ばかりしていては、長生きしないぞ」




 豪快に笑いながら、若い男性の背中を叩く小太りの男に、若い男は「は、はぁ……」と戸惑いながらも返事をする。




 「それに、例えこの部屋が見つかったとしても、しらを切ればいい話。ここの主人は別の者の名前にしてありますからね」




 そう話すヨハス司祭の声は、扉の外まで聞こえており、扉の前にいたウサギの仮面を被った男は、口元に笑みを浮かべると鼻歌を歌い歩いて行く。







 「エミリアが夜中にどこかへ行っていた?」




 シュタインとエミリアが仮面パーティーへと行った日から数週間経ったある日。


 リヒトがリーナを訪ねてきたかと思えば、エミリアが先週の半ばの夜中に、どこかへ出かけていたことがわかったらしく、何か知らないかと聞いてきたのだ。



 リーナは、ライハッド夫人のパーティー以来、エミリアとは会っておらず何も知らないと首を横に振る。


 するとリヒトは、眉を下げ「俺はまたしばらく家に帰れていなくて、今朝、父上とエミリアが言い合いしているのを聞いて知ったんだ。俺が話を聞いても、兄様には関係ないって口を聞いてくれなくて」と話す。




 「どうやら、その日だけじゃなく何回か部屋に行っても返事がない日があったらしくて」




 リヒトの話を聞き、リーナは「エミリアは今、屋敷にいるの?」と問う。




 「屋敷にいるよ。今朝、父上と言い合いしたきり、部屋から出てこなくて。口を聞いてくれないから、リーナなら何か知ってるかなと思ったんだけど」


 「俺が屋敷に中々帰ってあげれなかったから、こんな事に……」

 



 そう頭を抱えるリヒトを見て、リーナは何か力になってあげられる事はないかと思う。


 その時、剣の稽古を終えたシュタインが談話室にやって来ては「あれ? リヒト兄じゃん! どうしたの?」と問う。



 そんなシュタインにリーナは、リヒトから聞いた話を話すのだが、シュタインは「え゛」と激しく動揺すると、そのまま動きを止める。


 シュタインの様子がおかしい事に気づいたリーナは「何か心当たりがあるの?」と問う。



 だがシュタインは「う、ううん……!」と首を激しく横に振っては「そ、それは心配ダナー」と言う。


 そんなシュタインを眉を顰め見るリーナ。



 シュタインは「で、でも……夜中になんてどこに行ってたんだろうな? 夜中はどこも開いてないだろうに」と話を逸らすように言う。


 その言葉にリヒトが「……仮面パーティー」と呟く。



 「それって最近流行ってるって言う?」と問うリーナに頷くリヒト。




 「丁度、週の半ばにパーティーは開かれるし……もしかしたら……」




 リヒトがそう疑うと、すかさずシュタインが「ないないない!」とそれを否定する。


 突然の大きな声に、リーナとリヒトは驚きシュタインを見る。



 そんな二人を見て、シュタインはハッとしたのか「ほ、ほら! エミリアってああ見えて、しっかりしてるし! そんな変なところ行ったりしないって!」と必死に言う。


 その言葉に、リヒトは「まぁ……」と言うも、リーナはシュタインの様子がおかしいと、シュタインをじっと見つめる。



 その事に気づいたシュタインは、リーナから不自然に視線を逸らすと「心配しすぎだって!」とリヒトに言う。




 「エミリアも、もう直ぐ十八で成人だよ? 家族に内緒で家を出ることくらい一度や二度あるって!」


 「家族だからって、何でも話せるわけじゃないしね! エミリアにはまた俺から話を聞いとくからさ! 今はそっとしてあげようよ!」




 口早にそう言っては「ね!」とリヒトの肩に手を置くシュタイン。


 そんなシュタインにずっと疑いの目を向けるリーナとは違い、リヒトは「そう、だな……」と納得した様子。



 いつものリヒトなら、冷静で客観的に物事が見れるだろうが、最近は寝る間もないくらい忙しいらしく、思考力が落ちていたのだろう。


 それに、家族には話せないことがあるのは誰にだってあるし、難しい年頃だ。



 リヒトは見守りながら、そっとしておくのがいいのかも知れないと思ったのだ。


 仕事の合間を縫って、リーナの元を訪れたリヒトは、行かなきゃと屋敷を後にした。



 リヒトを玄関で見送り終えると、シュタインが「さぁさぁ俺も勉強しなくちゃ〜……」とそそくさと、屋敷の中に入って行こうとするので、リーナは「シュタイン」とシュタインの肩を強く掴む。


 「な、何〜?」と恐る恐る後ろを振り返るシュタインに、リーナは「知っている事を全部話して」と怒る。




 「な、何のこと……?」


 「とぼけても無駄だよ、シュタイン。エミリアの事について、何か知ってるんでしょ?」




 リーナにそう言われ、シュタインは「し、知らないよ」と言うも、思い切り目が泳いでいる。


 そんなシュタインにリーナは「シュタイン!」と怒るも、シュタインは「お、俺が何とかするから!」と返す。

 



 「せめてリヒトだけにでも話して」


 「それは……できない」


 「どうして?」




 そう問うリーナに、シュタインは「できないものはできないんだよ!」と言うので、リーナは「わがまま言わないで!」と返し言い合いを始める。


 その時、屋敷に帰って来たエーデルが「何言い合いしてるんだ?」と焦ったようにやって来ては、リーナとシュタインは「エーデル!!」「あ、兄貴……」とエーデルを見る。



 「何があった?」と問うエーデルに、シュタインは「べ、別に何もないよ! 俺、まだ稽古があるから!」と言うと、逃げるようにその場を去る。


 そんなシュタインを見て「何なんだ?」と不思議そうにするエーデルは、リーナを見て「何があったの?」と尋ねる。




 「――なるほど。エミリアが」




 リーナはエミリアのことと、シュタインが何か知っているかもしれないと言うことをエーデルに話した。




 「あの慌て方。確かにシュタインは何かを隠しているな」


 「そうだよね。でも、教えてくれなくて」




 そう眉を下げるリーナを見たエーデルは「確か、エミリアが夜中にどこかへ行ってたって言うのは、先週の半ば頃だったよな?」と顎に手を当て聞く。


 「う、うん」と頷くリーナに、エーデルは「明日が丁度半ばだな」と呟く。



 その言葉に、リーナは「え……?」と首を傾げる。



 それから次の日の晩、玄関の方でコソコソと出て行こうとするシュタインをエーデルとリーナが見つけては、話を聞くべく、談話室に半ば強引にシュタインを連れて行っては、まるで尋問のようにエーデルはシュタインに睨みを効かし話を聞く。


 


 「シュタイン。さっさと知ってる事を全部話せ」




 睨むエーデルに怯えながらも、シュタインは「……話さなきゃだめ?」と笑みを浮かべる。


 だが、すぐさまエーデルの無言の圧に負けると、エーデルに何を聞いても怒らないでねと約束させ、渋々話し出す。




 「……エミリアと仮面パーティーに行っただと?」




 シュタインの話を聞いたエーデルは、そう言っては、思いきりシュタインのことを睨みつける。


 そんなエーデルに、シュタインは「お、怒らないって約束したじゃん!」と慌てたように言う。




 「先に約束を破ったのはお前だろ? あれだけ行くなって約束したよな?」




 エーデルにそう言われ、「だ、だって……」とゴニョゴニョと言っては何も言い返さないシュタイン。


 そんなシュタインにエーデルはため息をつくと「本当に一回だけなんだろうな?」と問う。


 シュタインは激しく頭を上下に揺らしては「も、もちろん」と言う。




 「ったく……何がもちろんだ」エーデルはそ言うと「それで、お前はエミリアが、その後も一人で仮面パーティーに行っているかも知れないと思うんだな?」と問う。




 「う、うん。一緒に行った時に、もう行くなよって約束はしたんだけど」


 「一人で参加している可能性はありそうだな」




 そう顎に手を当て言うと、ため息を一つついて「何でそんな変な所に……」と呆れたように言うエーデル。


 そんなエーデルに、シュタインは「……一回でいいから、自分のことを知らない人と話をしたいって言ってたんだ。だから……」と言う。



 シュタインの言葉を聞き、エーデルは何も言わない。


 エーデルも今までエミリアが、どんな思いをしてきたか、そして、シュタインが言った言葉の意味がわかっていたから。



 同じくシュタインの話を聞いたリーナは後悔する。


 ライハッド夫人のパーテイーで、もう少ししっかりと止めていれば、エミリアの話をもう少ししっかりと聞いてあげれていれば、エミリアは仮面パーティーになんか行かなかったかもしれないと。



 エーデルは「……それで、お前はこんな夜中にどこに行こうとしていたんだ?」と問うと、シュタインは「それは……」と目を逸らす。


 そんなシュタインに「どうせ、仮面パーティーに行こうとしていたんだろ?」とエーデルは呆れたように言う。




 「な、何でわかったの?」


 「お前の考えそうなことだからな」




 そう言うエーデルに、シュタインは「お願い、兄貴。これで絶対最後にするから、行ってもいいかな?」と問う。




 「何を言われても断ればよかったのに、ついて行った俺にも責任があるし。それに、エミリアを連れ戻せるのは多分、俺しかいないし……」




 ズボンをぎゅっと掴み、最後の方は小さく話すシュタインに、エーデルは「エミリアがパーティーにいるとは限らないだろ?」と言うも、シュタインは「だったら、それでいいから。お願い」と頼む。


 エーデルは数秒、シュタインを見つめてはため息をつき「……わかった。ただし、俺もついて行く」と答える。




 「は? 兄貴も?」


 「なんか文句あるか?」




 そう睨んでくるエーデルに、シュタインは「な、ないです!」と首を横に振る。



 「流石にお前一人で行かすわけには行かないからな。」




 シュタインは「あ、兄貴……! ありがとう……!」とお礼も言うも、エーデルに「勘違いするなよ。まだ、お前が仮面パーティーに行った事は許してないからな?」と睨まれ、「は、はい……すみません」と眉を下げ謝る。




 「と言うわけで、今からシュタインとパーティーに行ってくる。リーナは家にいるんだぞ」




 エーデルの隣に座るリーナにそう言うと、リーナは「私も……」と言うも、エーデルに「だめだ」と止められる。




 「シャッテンヴェヒターが捜査している場所だ。そんな危険な場所にお前を連れてはいけない。」


 「でも……」




 エーデルはリーナの頭に手を置くと、笑みを浮かべ「エミリアが会場にいるとは限らない。それにもしいたなら必ず連れて帰ってくるから」と優しく言う。


 自分もエミリアを迎えに行きたいと言う気持ちがある。


 だからと言って、行っても足手纏いになるのは分かっている。



 リーナは頷くと「気をつけてね」と言う。


 そんなリーナを見て、エーデルは柔らかい笑みを浮かべると「行こう、シュタイン」とシュタインを振り返る。



 こうしてエーデルとシュタインは、エミリアを探しに行くべく、仮面パーティーへと向かったのだった。

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